《【窟王】からはじめる楽園ライフ~萬能の採掘スキルで最強に!?~》二十五話 コボルトの領民が増えました!!

船に殘されたティベリス族の上陸が始まった。

だが、船には負傷者や病人、栄養失調の者も多く、なかなかボートに乗れない者もいた。

そこで俺は、船に乗ってとりあえずの治療を行うことにした。

アッシュが船に向かうボートの上で、隣の俺に頭を下げる。

「……お手を煩わせてしまい、申し訳ない。回復魔法を使える者もいませんでしたので、ありがたく思います。ですが、もう手遅れの者もおりまして……」

「……とにかく診てみるよ」

俺はボートから船に乗り込む。

「これは……」

甲板の上は、予想以上にひどかった。

手足がない者も多く、狹い船で雑魚寢狀態ゆえに、きもできない者もいる。

また、奧からは鼻を塞ぎたくなるほどの異臭が立ち込めていた。

後で聞けば、これはコボルトの王の死だったらしい。

なので埋立地の一部に墓地を設け、そこに埋葬の許可を出した。

こんな時、回復魔法でも上位の魔法であれば、広範囲を一気に治療できるのだが。

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だが、俺は魔力はあっても、上位魔法を覚えていない……

上位魔法なんてまず使うことはないだろうと、ほとんど中位魔法までしか式は覚えなかったのだ。

と言っても、この島に來るまでは中位魔法はおろか下位魔法ですら、ほとんど使えなかったが……

誰か魔法を教えてくれたり、魔導書でもないものかな。

まあ、今はできることで助けるしかない。

「一人ずつ、治療するしかないな……」

「ヒール様、私もお手伝いします!」

後ろから付いてきてくれたリエナが、そう言ってくれた。

「こんな時のために、ヒール様から魔法を教えていただいたのです。お任せください!」

「ありがとう、リエナ。 ……それに、皆も」

周りには、バリスと一部のゴブリン、タラン、シエル、マッパが付いてきてくれていた。

「お気になさらず。治療はヒール殿と姫にお任せするとして、我らもできることをやりましょうぞ」

バリスはそう言って、付いてきてくれた者たちに指示を出すのであった。

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ゴブリンたちは一人では歩けない者をおぶったりして、運んでいく。

タランは糸を吐きだして、コボルトがボートへ飛び乗るのを手伝ってくれたり、シエルは擔架の代わりになってくれたりした。

マッパといえば船で、手足のない者のための杖を作ってくれている。

これを見ていた陸地のエレヴァンや他のゴブリンたちも、黙ってはいなかった。

フーレに腕を引かれたエレヴァンは、大聲で指示を出し始める。

「おい! ボートから荷を降ろすのを手伝ってやれ! あと、ここに食事と水も持ってこい!」

主人である俺がいているのに何もしないわけにもいかないと思ったか、それとも傷ついたコボルトたちを哀れに思ったのか、荷の積み下ろしや、食事を用意するのであった。

ゴーレムや窟にいたケイブスパイダー、スライムも駆けつける。

そんな島民総出の助けもあって、無事コボルトたちは皆上陸できた。

完治しなかった者もいるが、とりあえずは安靜にさせておけば大丈夫だろう。

俺は陸地に戻ると、まずエレヴァンに聲を掛けた。

「エレヴァン、助かった」

「お気になさらず! 俺はヒール様のためならなんでもしやす。だから……あの犬野郎どものためじゃねえ」

エレヴァンがそう言うと、隣のフーレが諫めるようにその手を引く。

だが、エレヴァンはその手を摑み、複雑そうな顔を俺に向ける。

「……それじゃあ、俺は仕事に戻ります。また何かあったら、呼んでくだせえ」

エレヴァンはフーレの手を引いて、一部のゴブリンと仕事に戻っていくのであった。

そんなこんなで、コボルトたちの荷下ろしも完了したようだ。

アッシュとハイネ、けるコボルトたちは俺たちに深く謝するように、皆で跪く。

総勢で100名以上のコボルトだ。

アッシュが代表して口を開く。

「ヒール殿、それに皆様方……ただただ謝申し上げます。ご恩に報いるため、どうか我ら全員、ヒール様の配下に加えていただきたく存じます」

俺は當初、コボルトをただ迎えれるだけのつもりだった。

もちろん、コボルトの赤ちゃんもいるし、元主君の子と一緒に住みたくなるのは理解できる。

しかし、ゴブリンたちと一緒にずっとやっていくとなると……

敵対していた彼らをまとめ上げるには、何か共通の決まりが必要かもしれない。

となると、まずは俺への忠誠を誓うことが手っ取り早いわけだ。

だが最も重要なことは、皆が俺にテイムされることで、ゴブリン、コボルト雙方に安心して暮らせるということだろう。

テイムスキルは、従魔がテイマーに危害を與えられないようにする。

また、従魔同士が互いを傷つけることを止した。

これは殺意や敵意を持った行為が止されるのであって、例えば剣の試合をすることは止されない。

ともかく大事なのは、従魔の間で口喧嘩が起きても、毆り合いなどには発展しないことだ。

忠誠などんではいないが、皆が安心して暮らせるようになるなら、テイムはするべきだろう。

そんな彼らを、俺は一ずつテイムするのだが……

今回もゴブリンたち同様、ちゃんと新しい名前を考えた。

……正直、100名分の名前を考えるのは骨が折れる。

ほとんどは元々の名前を弄っただけだけど。

でも、コボルトもゴブリンたちと同じように新たな名前を付けないと、平等じゃない。

これは必要なことだ。

俺は全員の名前を付け終わり、こう言った。

「それじゃあ、よろしくな。アシュ……トン、ハイネス。お前たちには、コボルトをまとめる役割を與える」

アッシュはアシュトン、ハイネはハイネス……うん、ほぼ変わらない。

「はっ! ヒール殿のため、我らティベリス族一同、誠心誠意お仕えいたします!!」

俺の聲に、アシュトンは頭を下げた。

他のテイムしたコボルトたちも、同様にする。

すると、俺の隣のバリスが口を開いた。

「ヒール殿。オークとの爭いなど、々とアシュトン殿には聞きたいこともありますが……まずは食事を摂っていただくのが良いかと。また、この島がどうなってるか、食糧をどう調達しているか、々と説明する必要が有るでしょう。最初に、姫に調理場の案をお願いしております」

「そうか。リエナ頼むよ」

リエナは「はい!」と元気よく応じてくれた。

そして付いてきてくださいと、アシュトンたちを案するのであった。

シエルとタラン、スライムとケイブスパイダーも、互いの働きを褒めたたえるようにの一部をタッチさせる。仕事に戻るのではなく、ちょっとご飯でも一緒に食べるみたいだ。

そうして、俺とバリス……あとマッパが殘ったのだが……

俺は思わず、大きなため息を吐いた。

「はあ……」

領主って、こんなに大変なのだろうか……

國境付近の領主やその代理人は、政務のストレスのせいか大酒飲みだとも聞く。

まあ、ここに酒はないし、俺はまだ飲めないが……

元から、コボルトの赤ちゃんが俺を心配そうに見つめる。

「ああ、ごめんごめん! ちょっと疲れてただけだから」

俺は赤ちゃんをよしよしとでてあげた。

すると、嬉しそうにをうねらせる。

うん、やっぱりかわいい。

マッパもよくやったと言いたいのか、笑顔で俺の背中をバンバン叩いてくれた。

うん、嬉しい……んだが、ちょっと痛い。

そんな俺を労うように、バリスが聲を掛けてくれる。

「お疲れ様でした、ヒール殿。心中お察しいたしますぞ……」

「ありがとう、バリス……だけど、お前は嫌じゃないのか?」

「コボルトを迎えれたことですかな? そうですな……もちろん、複雑な心境ではあります。ただ、ヒール殿の仰ることはもっともだと思いましたので」

バリスは食事をし始めるコボルトを見て、続ける。

「そもそも、我らと敵対していた種族は、コボルトだけではありません。 ……ヒール様にこう申し上げるのは心苦しいですが、それこそ人間とも爭っておりましたし、我らベルダン族の命を一番奪ったのは人間です」

「それは……そうだろうな」

サンファレス王國では、ゴブリンを見たら殺せと教えられる。

現に、人里の近くに現れたゴブリンは、軍隊や自警団によって”駆除”されていた。

しかも、これは人間國家なら珍しい景ではないと聞く。

逆にゴブリンもまた、そんなことをする人間を憎んでいたはずだ。

つまり、俺に従うということ自が、まずゴブリンたちにとってれがたい話だったはずなのだ。

ベルダン族の故郷を焼き払ったのはオークだったが、迫害したのは人間とも言っていた。

「ですが、同じゴブリンの部族でさえ、我らベルダン族を拒絶する者もいました。そんな中で、ヒール殿……あなたは人間であるにもかかわらず、我らを救ってくださった。そんな方に助けられた以上、我らも種族によって救わないということは、してはいけません」

「バリス……」

そんな立派な考えを持っていたわけじゃない。

でも、バリスが俺の考えに同調してくれたのは嬉しかった。

「……だが、エレヴァンはティベリス族に息子を……」

「將軍も戦士。息子が戦って死んだことは悲しくても、自らも戦いで他種族の子供の命を奪ってきたことは重々承知のはずです。そもそも、こちらからティベリス族を襲うこともありましたし……ただ、まだ一年前のことで、整理も付かないのでしょう」

「一年前か……他にも、エレヴァンみたいに家族を奪われた奴もいるだろうな」

「そうですな……それにティベリス族とは近くに暮らしておりましたので、やはりは深い。ですが、それは今まで付き合いがなかったことも原因です。流をしていくうちに、互いのことも分かっていくでしょう」

うんうんと頷く俺に、バリスは続ける。

「一緒に仕事をさせるなど、ワシにもし考えが有りますので、こちらはお任せください。しかし、どうにもおさまりが付かない時もあるでしょう……その時は、ヒール殿がまとめてくだされ」

「やっぱり、そうなるか……」

「はい。申し訳ないですが、それしかないかと」

王様が出てきて、無理やり言うことを聞かせる……

まさに、俺の父であるサンファレス國王のやり方だ。

できれば、それは避けたいが……

だけど、領主としての務めと考えれば、最後の手段としては覚悟するべきか。

そもそもバリスがここまで協力してくれると言うのに、俺は知りませんとは言えまい。

「分かった。約束するよ……」

「ありがとうございます、ヒール殿。先程アシュトン殿と話しましたが、彼はな思考の持ち主ですのできっと協力してくれるでしょう。また、姫や他の者たちとも協力していきますので、極力お手を煩わせないようにいたします」

「……助かる。しかし、本當にバリスは頼りになるな」

「いえいえ、前も申し上げましたが、ワシは役立たずの紋章持ち。非力です」

「いやいや、バリスは非力なんかじゃないよ」

魔法は使えないかもしれないが、知恵では遙かに俺を凌ぐ。

長生きだけあって、やはり知識も経験も富なのだろう。

それにバリスは々と猛勉強した上で、祈禱師になったと言っていたし、元々頭の回転が速いはずだ。

それに引き換え俺は……やっぱ未だなと思わされる。

使うと頭が良くなる石とか、掘れないもんかね……

あ、そうだ。掘ると言えば……

「そういえばさ、晝前にこんなを掘ったんだけど、バリスは何か知っているか?」

俺はインベントリから、世界樹の種子を取り出した。

ジャガイモほどの大きさのそれを、バリスは興味深そうに見る。

「ふむ? 何かの種でしょうか。しかし、隨分と大きい……」

「世界樹、の種子というんだそうだが、聞いたこともなくてな」

「世界樹ですか……ううむ、聞いたことは……いや、一度だけありますな」

「本當か?」

「はい、先々代の祈禱師が、昔話をする時にし語っておりました。あくまで昔話ですし、詳しくはワシも分かりませぬが……とてつもなく大きな木で、その葉はあらゆる生に恩恵をもたらしていたそうです」

「へえ。とにかく、有用な木だってことだな」

「それは間違いないでしょう。この木が焼き払われたことで、滅亡した國家や種族があるとも言い伝えられておりますゆえ」

「そんなすごい木なのか……なら、埋めてみるとするかな」

なんだかすごそう……

この時俺は、そんな軽い気持ちで”世界樹”を植えようとしていた。

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