《【コミカライズ配信中】アラフォー冒険者、伝説となる ~SSランクの娘に強化されたらSSSランクになりました~》第13話 おっさんの弱點!?

新章『100人斬り篇』が開幕です!!

(決してエロい意味じゃないよ)

夜明け前の山林に、鋭い音が響き渡っていた。

枯れ草を踏みしめ、れの音とともに、空気を裂く。

獰猛な野獣の聲のようでいて、どこか涼やかな音は、梢を抜け、朝餉の準備を始めた村にまで屆いていた。

ヴォルフは剣を止める。

の力で振るっていたからだろうか。

空気だけで、刀は熱を帯び、微かに白い靄が立ちのぼっている。

息を整え、汗を拭う。

彼の肩からも、剣と同じく気化した汗がたなびいていた。

悪くない……。

おろし立ての鋼の剣のを確かめる。

が長くなった分、し重くじるが、むしろ振りやすい。

長いこと放置していたから、振ると空気にかかる(ヽヽヽ)ところがあるが、研ぎ直せば済む問題だった。

「業前ですね、ヴォルフさん」

パチパチと山林に拍手が鳴る。

振り返ると、リーマットが立っていた。

朝には強いらしい。

けろっとした顔で、手を叩いていた。

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ヴォルフは癖でつける。

「恥ずかしいところを見られてしまったな」

「いえいえ。素晴らしい振りの速度でした。隨分と鍛錬されたのでしょう」

「そんなことはないです。むしろ冒険者の時の方がさぼってましたから」

「ほう……。理由を聞いてもいいですか」

ヴォルフは簡単にこれまでの経緯を話す。

黙って聞いていたリーマットは深く頷き、自らこう締めた。

「なるほど。守る者が生まれたことによって、あなたの意識が変わったということですか」

「そんな大層なことでもないですよ」

ヴォルフは肩を竦める。

リーマットは顎に手を當て、し考えた。

この若い騎士が、ヴォルフは苦手だった。

時折だが、細い目の奧からじっと自分を観察する時がある。

まるで蟲かごの蟬のような気分になることがあった。

「どうでしょうか。朝の鍛錬の締めとして、私と仕合ってみませんか?」

「ご冗談を。あなたはBクラス相當の騎士だと聞いています。俺では相手になりませんよ」

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「そのBクラス相當の騎士が手も足も出なかったドラゴンを、あなたは倒したんですけどね」

「す、すいません」

「いいですよ。なーに、本気でやろうなんて思ってません。私も朝は軽く運するのが日課でして。ちょっとお付き合いいただけないかなーと」

リーマットは食い下がる。

どうしても、ヴォルフと仕合がしてみたいらしい。

腰に差した細剣の柄に手がかかっていた。

巧妙に隠しているが、今にも抜き放ちそうな気迫をじる。

外見のイメージとは違い、好戦的な格なのかもしれない。

「わかりました」

「では――」

2人は対峙する。

お互い鞘から剣を抜いた。

ヴォルフは大きく一歩を踏みだし、柄を両手で持つ。

対するリーマットは半歩足を踏み出し、片手で柄を握った。

風が吹き抜け、大きく梢がしなる。

空気が張りつめていった。

もはや、仕合の様相はそこにない。

ヴォルフは真剣勝負の沼へと引きずり込まれた。

仕掛けたのはヴォルフだった。

一息で距離を詰める。

切り下げ――。

速いことは間違いない。

リーマットは冷靜だ。

細剣を巻き取るように來た攻撃を捌く。

華麗な足運びで背後に回り込むと、相手の背中を軽く押した。

ヴォルフはつんのめる。

倒れそうになるのをなんとか堪えた。

先ほどまで前にいたリーマットが背後に立っている。

ゴーストに化かされた気分だった。

「どうしました?」

手で挑発する。

ヴォルフは勢を整え、再び距離を詰めた。

先ほどよりも短くコンパクトに振るよう意識を切り替える。

剣の引きを速くして、連撃を加えた。

しかし、リーマットは襲い來る鋼の剣を流麗に捌く。

細剣を用にかしながら、本人は一歩もくこともなく、守りに徹する。

コンパクトに振っているとはいえ、ヴォルフは決して力を抜いているわけではない。

なのに、リーマットの顔は涼しげだ。

のにやけヅラ(ヽヽヽヽヽ)で、やはり何か観察しているように見える。

【捌き(パリィ)】というのは簡単なようでいて、かなりの高度な技だ。

レベル4のスキルで、極めていけばあらゆる武や攻撃の質に対応することができる。

リーマットは特にこの【捌き】を重視していて、対人であればAクラスの冒険者すら圧倒できる力を持っていた。

ヴォルフは一旦距離を取る。

いつの間にか息が切れていた。

もだるい。手に持った剣がやたら重くじる。

無酸素運をし続けた代価だった。

おそらく全力で振ることが出來るのはあと一刀。

小細工は抜きだ。

全霊を賭けて、剣を振り抜くことに決める。

「おおおおおおおおおお!!」

気勢を吐く。

の捻りも加え、全力で薙ぎ払った。

のような速さの剣閃に、リーマットの顔が初めて歪む。

咄嗟に剣を両手に持ち替え、け止める。

まずい、と焦り、そして脅威をじた。

彼もまた全力で剣の軌道をそらそうとする。

失敗すれば、自分のが飛ぶ(ヽヽヽヽヽヽヽ)――――。

ギィンン!!

釣り鐘が落ちたかのようない音が鳴る。

ヴォルフの渾の橫薙ぎが炸裂した。

くるくると宙を回り、地面に突き刺さったのは、細い刃だ。

「あらあら……」

本付近からぽっきりと折れた剣を見る。

すっかり戦気を失ったリーマットは、弱ったなとこめかみを掻いた。

「これミスリル製なんですけどね」

「み、ミスリル!!」

超有名な魔鉱金屬だ。

や武を作るだけでも、レベル6以上のスキルが必要になる。

いうまでもなく高価で、ヴォルフが折った刀分だけでも、小さな家ぐらいなら容易に建つほどの価値があった。

「も、申し訳ない。弁償は必ず……」

とはいったが、ヴォルフが10、20年山で薬草を採り続けたところで払える額ではない。

リーマットは聲を出して笑った。

「大丈夫ですよ。消耗品なので申請すれば新しいのと取り替えることができますから。それにしても、ミスリルを折っちゃいますか。あなたの力は凄まじいですね」

「いえ。そんなことは」

自分の剣を見る。

さすがにミスリルを斬っただけあって、刃がこぼれていた。

あとで研ぎ直さなければならないだろう。

「ですが、力を使いこなしていないですね、あなたは」

リーマットの瞳がる。

「本人が持っている技と、が持つポテンシャルに差がありすぎです。例えるなら……そうですね。小さな人型魔導兵(ゴーレム)に、高能な魔導機関を搭載しているようなじです。自分の力に自分で振り回されているような……」

「わかりますか……」

「何か心當たりでも?」

慌ててヴォルフは誤魔化した。

娘の力によって、強化されていると知れば、今度どんな人間が自分に興味を持つかわからない。

「何か込みった事がお有りのようですね」

「リーマットさん。お願いがあるのですが」

「なんでしょうか?」

「俺を鍛えてくれませんか?」

「お斷りします」

あっさりと否定されてしまった。

そのまま理由を話す。

「あなたが真に強くなることをむなら、別ですけど。あなたの日常において、技的な強さは必要ないと私はじるのですが、違いますか?」

リーマットの言うとおりだった。

すでに冒険者を引退し、小さな故郷で隠棲する

娘も自分で自分のを守れるほど強くなった。

ヴォルフに強くなる理由など、もうないのだ。

「確かに……。あなたの言うとおりだ」

結論を出す。

その時、リーマットは蛇のように目を細めた。

◇◇◇◇◇

鍛錬が終わり、朝飯を食おうと戻ると、ヴォルフの家の前でアンリがうろうろしていた。

ヴォルフを見つけると、軽く前髪をなおして、近づいてくる。

「おはようございます、ヴォルフ様」

元気の良い挨拶が村に響いた。

同時に、お腹の音が鳴る。

ヴォルフではない。

アンリの方だ。

打ち立ての剣のように顔が赤くなる。

ヴォルフはくすりと笑った。

「朝食……。一緒にいかがですか?」

「……はい! 喜んで!!」

アンリは目を輝かせた。

今日の朝食は、麥飯を使った山菜とたっぷりの茸の混ぜご飯だ。

白鮑茸、椎茸などの茸類、さらに牛蒡と人參、蕨を加える。

鍋で軽く炒めた後、魚の出を投

と塩、酒をれ、味を調えた。

「良い香りですね」

ふんわりと立ちこめた匂いに、アンリが反応した。

つんと鼻を刺激するも、爽やかな香りがを通っていく。

炊事場に立ったヴォルフは、木のお玉を持ったまま答えた。

「生姜(サージ)の匂いです。香り付けにもってこいなんですよ」

味見をし、材に馴染んだかを確認する。

をわけ、殘しておいた麥ご飯と混ぜ込む。

し加えながら、全的に味が染みこんだら完だ。

「お待たせしました。お口に合うといいのですが」

「いえ! とても味しそうです!」

椀に盛られた混ぜ麥ご飯を見つめる。

先ほどよりも濃い生姜の匂いが鼻を突く。

見た目も鮮やかで、たくさんの材がつやつやとして輝いていた。

「いただきます!!」

慣れた手つきで箸を使い、混ぜご飯を掻き込む。

むむっ、とアンリは思わず唸った。

「うぅぅぅん! おいしぃぃぃぃぃいいいい!!」

見た目こそ野で暴な田舎料理。

だけど、大公家で食べていたものとは、素材の味が違う。

ちょっと苦みがあるのだ。

だけど、それを調味料などでうまく味付けされて、ほろ甘く(ヽヽヽヽ)仕上がり、冷えた麥飯も熱々のと絡むことによって、丁度良いらかさと溫度になっていた。

材にある角が取れ、総じて優しい味だ。

「これがヴォルフ様の味なのですね」

おしそうに手を椀に添える。

一緒に食卓を共にするリーマットやダラスにも好評だった。

「こりゃうまい!」

「王都に店を出せますぞ、この味は」

「本當ならおや魚を提供できればいいのですが」

高価であることはもちろんだが、最近ヴォルフは意識的に控えていた。

あまりを食べ過ぎると、レミニアに怒られる。

目敏い娘のことだから、家にある些細な変化や自分の型を見ただけで気付いてしまうだろう。

「お構いなく。アンリ様の手料理よりはマシですよ」

「り、リーマット……!」

「アンリ様も料理をされるのですか?」

「最近始めたんですよね。花・嫁・修・業……。ね? アンリ様」

「う、うるさいぞ、リーマット。これからだ。これからうまくなるのだ」

「田舎料理で良ければ、お教えしますよ」

ヴォルフはレミニアと會うまでは1人暮らしだった。

1人で生きる分のスキルは、一通り揃えている。

これでも料理スキルはレベル2なのだ。

普通はおろか、大きな野生まで捌くことが出來る。

ヴォルフの申し出に、アンリは目を輝かせた。

「はい! 是非お願いします」

何故か、三つ指をついて姫騎士は頭を垂れるのだった。

日間総合2位までランクアップしました。

皆様の応援のおかげです。

1位まで後1歩!!

頑張ります!

明日は夕方に投稿します。

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