《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》17.來訪の理由

ユリウスの変化に気づかず、ハロルドはペラペラと喋り続ける。

「いやぁ、本當はアニス様にオラリア公との面會を打診するつもりでしたが、まさかこうしてあなたから會いに來てくださるなんて……」

「私に會いに來た理由はなんだ?」

ユリウスは靜かな聲で問いながら、ハロルドの手を振り払った。

うっすらと拒絶の意を示していると流石に気づいたのか、ハロルドが「あ、まずい」という顔をする。

しかしすぐに想笑いを浮かべて、質問に答えた。

「ええと、ここではし話しづらいかなと。よろしければ二人きりでお話させていただきたいのですが……」

「この場で聞かせてくれ」

「私の妻であるソフィアが、アニス様の妹であることはご存知でしょうか?」

「ああ。勿論だ」

いったい何を言うつもりだろう。

言いようのない不安をじる。

「ソフィアから教えてもらったのですが、オラリア家はロートリアス家に援助なさるのだとか」

「……それが何か?」

「そこで、我がマリカード家にも援助の手を是非差しべていただきたい!」

「え?」「は?」

私とユリウスの聲がほぼ同時に重なり、私たちは思わず顔を見合わせた。

まさか援助の催促に來たとは……

「オラリア公爵家とマリカード伯爵家は、何の繋がりもないはずだが」

ユリウスの聲音はワントーン下がっていた。こんなに不機嫌そうな彼の聲を聞くのは初めてだ。

「ですがアニス様とうちのソフィアは、の繋がった姉妹です。ということは、両家は親戚同士になるのではないでしょうか?」

「そうですよ! 私たちは近い関係ということになります!」

ソフィアが両手を合わせながら、うっとりとした表でユリウスを見る。

ああ、恥ずかしい……

私は、あまりの恥ずかしさで顔を真っ赤に染めていた。

私のがどうしようもない人たちだと、よりにもよってユリウスに知られてしまうとは。

そう思っていると、ユリウスがちらりと私を見た。

そして口を開く。

「不愉快だ。君たちには今すぐ帰ってもらいたい」

「そ、そんなことを仰らずに……」

「斷る」

尚も食い下がろうとするハロルド。

しかしユリウスの心を開くことは出來なかった。

「……分かりました。本日はこれで帰らせていただきます」

そう言うと、ハロルドはユリウスをきっと睨みつけた。

「ですが、私たちの要求は正當なものです。あなたがそれをれるまで何度も……」

「ふふっ」

誰かの笑い聲がハロルドの言葉を遮る。

それは私の隣から聞こえた。

「あ」

ポワールが慌てて自分の口を手で塞ぐ。

だが時既に遅し。

ソフィアとハロルドの顔が怒りで染まっていく。

「な、何よ、あの……! 今、私たちを見て笑ったわよ!」

「くっ……オラリア公、あなたの家の使用人が私と私の妻を侮辱した件は、後ほど厳重抗議させてもらいますからね!」

妹夫婦が屋敷から出て行く。

応対擔當のメイドが満面の笑みで、二人の後ろ姿に向かって手を振っていた。

「……ポワール」

「あはは、すみません……」

そしてユリウスに名前を呼ばれ、ポワールは気まずそうに笑った。

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