《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》35.ご対面

會場が靜かになった代わりに、張に耐え切れなかった心臓の鼓が早くなっていた。

足の震えを悟られないよう、涼しい表を崩さないように意識する。

だが周囲の突き刺さるような視線に、私は神力をゴリゴリと削られていくのをじていた。

客の一部は、案の定私を親の仇のように睨みつけてくる。自分のパートナーと腕を組みながら、歯を剝き出しにして凝視してくるのもいた。野生の威嚇か?

ちらりと隣に視線を向ければ、涼しそうな表のユリウスがいた。

あ、違うな。何も考えない『無』の顔だ……!

にしても、この沈黙はいつまで続くんだろう。

私たちに構わず盛り上がってしいのだが、みんなそのタイミングを見失っているのかな。

何かきっかけがあれば……

「オラリア公、よくぞ來てくれたな」

一人の男がユリウスに話しかけて來た。

歳は三十代半ばだろうか。蜂の巻きが、照明のを浴びてキラキラと輝いている。

いや見た目だけじゃなくて、そういうオーラを纏っているというか。

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「ああ。こちらこそ招待してくれたことを謝する」

ユリウスが頬を緩めながらお禮を言う。それから私へ視線を向けた。

「この男がロシャワール侯だ」

「は、初めまして。アニスと申します」

慌てて挨拶すると、ロシャワール侯爵は「君の噂は聞いているよ」と穏やかな聲音で言った。

「何せ嫌いのオラリア公が、パートナーに選んだだ。今や社界で君のことを知らない者はいないだろう」

「はぁ……」

「今夜はどうか楽しく過ごしてしい。君たちもだ」

ロシャワール侯爵が周囲を見回しながら言うと、參加者たちは何事もなかったかのように會話や食事を再開し始める。

その様子を眺めてから、ロシャワール侯爵は「では後ほど」と私たちから離れて行った。

場の空気を一瞬で変えた手腕に心していると、れ替わる形で一人の令嬢が接近して來た。

「お會い出來て栄です、オラリア公。よろしければ、しお話しませんこと?」

は、歯……!

先程私を威嚇していた令嬢が、びるような視線をユリウスに送っている。

私のことなんてまるきり無視だ。

とにかくユリウスを守らなくては……

すっと前に出る。

「その話、わたくしもご一緒してよろしいでしょうか?」

「あら、あなたは確かロートリアス男爵のご令嬢でしたわね。わたくしたちとはお話が合わないのではないかしら?」

失禮な人だな……

仮にも公爵の妻なのだが。

私たちが火花を散らしていると、ユリウスが冷めた口調で言い放った。

「彼と話が合わないとは、君は言葉を知らないのではないか? では私との會話も無理ということだ」

これには令嬢の笑みも凍りつく。

、撃沈。すると先ほど彼と一緒にいた男が、相を変えてやって來た。

「大変失禮いたしました、オラリア公!」

「……私は気分が悪い。今すぐにこの會場から出て行ってもらえないか?」

「は、はいぃ……!」

は聲を震わせながら返事をすると、フリーズしたままかないパートナーを引き摺りながら大広間から出て行った。

だが戦いは、まだ終わらない。

「オラリア公」

「ユリウス様」

「公爵様~」

と、令嬢が次から次へと、ユリウスに聲をかけてくる。

まるで、特売品に群がる主婦の群れのように。

たちをあしらうユリウスの顔も、どんどん険しさを増していく。

私たちは參加者たちの視線から逃げるように、隅の方へ避難した。

ロシャワール家の使用人に注いでもらったワインで口を潤す。

橫を見ると、ユリウスはワインを水のように呷っていた。

その姿を見て、私は彼に話しかけた。

「そんなに一気に飲んだら、酔いが早く回りますよ」

「飲まないとやってられん。あいつら、こっちが嫌そうな顔をしているのに、気にせず次から次へと……」

何か據わった目でぶつぶつと呟いてる。

まあ気持ちは分かるのだが、健康に悪いので二杯目をおかわりしようとするのを止めた。

「ダメですよ。翌日に響きます」

「う……わ、分かった」

素直だな。

しかしこのようなことが毎回行われているとは……

これでは、ユリウスも夜會に出たがらないわけだ。

彼に同していると、グランドピアノが大広間に運び込まれるのが見えた。

來た。ダンスの時間だ。

參加は任意だとマリーが言っていたが……

「踴るぞ、アニス」

「えっ、正気ですか」

「君が踴りたくないというならやめておくが」

「そんなことはありません。でもまた目立っちゃいますよ」

そしたら、またわんさか話しかけてきそうな予がする。

しかしユリウスは周囲を見回しながら言う。

「いや。あえてそれを利用しよう。私たちの仲をアピールするんだ」

……し自棄になっているように見えるのは私の気のせいだろうか。

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