《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》42.お禮の品

たっぷり遊んで、たっぷりお晝寢した白馬は満足した様子で、牧場主を背に乗せてパカラッ、パカラッと元來た道を戻って行く。

その後庭園を見回って狀態を確認してみたが、殆ど荒らされた形跡はない。

はちゃめちゃに走り回っていたようだが、どういうわけか花壇を蹴散らすようなことはしなかった。

賢いのか、偶然避けたのは分からないが、被害がなくてよかったとで下ろす。

牧場主の奧さんがオラリア邸を訪れたのは、それから數時間後のことだった。

「こちら、お詫びの品でございます。どうかおけ取りください」

そう言って私たちにくれたのは、大きな木箱にった真っ赤な林檎だった。

林檎農園も営んでいるらしく、今の時期が旬だとか。

早速、廚房のメンバーで林檎を味見してみることにした。

爽やかな甘みと、ほどよい酸味。味しい味しいと言い合いながら、みんなで食べた。

だけど林檎は、木箱にまだたくさん殘っている。いくら味しくても、食べきる前に飽きてしまうかも。

「ジャムにしても味そうだなァ……」

林檎の味を確かめながら、料理長が呟く。

他の料理人たちも「それ、いいですね」と賛同していると、誰かが廚房にってきた。

……ん? ユリウス?

オラリア邸の主は、最後の一切れとなった林檎に視線を向けた。

そしてし饒舌気味に話す。

「例の牧場主から林檎を大量にもらったと、マリーから聞いたんだ。彼の作る林檎は、味しいと貴族の間でも評判でな」

「はい。とっても味しかったです。よろしければユリウス様も召し上がりますか?」

私が尋ねると、ユリウスはどこか嬉しそうに頷いた。

「ああ。だったら、そこに殘っているもので……」

ユリウスの言葉が、途中で止まる。

たった今まで皿の上にあった林檎が、忽然と姿を消していた。

私の橫には、リスのように頬っぺたが膨らんだポワール。

「やっちゃった」という顔で、何かを咀嚼している。

「すみません。ユリウス様たちのお話聞いてなかったです……」

そして食べ終わると、深く頭を下げた。

「たかが林檎くらいで、そんなに気にするな」

俯いたままのポワールに言葉をかける。

ユリウスの心は広かった。

「今、新しいのをお剝きしましょうか?」

「……いや、夕飯の後の楽しみに取っておこう」

私が尋ねると、ユリウスはそう言い殘して廚房を後にする。

すると料理長がおもむろに口を開いた。

「ユリウス様は、林檎が好きなんだよ」

「そういうことでしたか……」

だからポワールが林檎を食べちゃった時、ちょっと切なそうな顔をしていたのか。

ということは、林檎でお菓子を作ったら喜ぶかな?

夜會で々とお世話になったお禮もしたいし。

作るとしたら何だろう。

やっぱりここはパイ包みかな。甘くコンポートした林檎を、サクサクのパイに包んで……

そこまで考えて、私は首を振った。

これだけ味しい林檎なのだ。味だけじゃなくて、食も楽しんでもらいたい。

それなら、パイ包みよりもぴったりなお菓子がある。

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