《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》43.林檎のタルト

まずは生地作り。

薄力とバターを混ぜ合わせたところに、卵黃と水を加えて、ねないようにサックリサックリと混ぜる。

軽く整えて冷ますために放置。その間に別の作業へ。

鍋に砂糖と水をれて、ゆっくりと熱していく。すると、とろりとした淡い茶のカラメルソースの出來上がり。

そこにバターを落として掻き混ぜると、まったりと甘い匂いがしてきた。

この鍋の中にくし形に切り分けた林檎、レモンの絞りを投。焦がさないようにソースを絡ませていく。

そこから弱火で三、四十分、蓋をして時々林檎を引っくり返しつつ煮詰めていく。

背後から視線をじたので振り向くと、ポワールがそわそわした様子で鍋を覗き込んでいた。

やはり來たか、食いしん坊……!

「……一つ味見してみますか?」

「いいの!?」

こうなることを想定して、し多めに作っていたのだ。

く染まった林檎を、數切れ小皿に盛りつけて渡すと、ポワールは「わほー!」と変な聲を出して喜んでいた。

味しい、味しいという聲を聞きながら作業再開。

くったりとらかくなった林檎たちを型に敷き詰めて、平らに整地する。そこに薄くばした生地を蓋をするように被せてからオーブンの中へ。

焼き上がって、くるっと引っくり返して皿に載せたら……タルトタタンの完

「すごく味しそう~! ……だけど、変わった見た目のタルトだねぇ」

ポワールがタルトを見て、不思議そうに首を傾げる。

「このタルトって、元々は失敗から生まれたレシピらしいんです」

とあるが、バターと砂糖で炒めた林檎だけ型にれて、タルト生地を敷かずにオーブンで焼き始めてしまったのが全ての始まり。

はそのことに途中で気づいた。そして慌てて生地を林檎の上に被せてから、もう一度焼いてみるとこれが大功。

林檎にカラメルがよく染み込んでいて、とっても味しかったらしい。

こうしてお菓子の歴史に、新たな1ページが刻まれた。

ちなみにタタンというのは、ピンチをチャンスに変えたの名前が由來なのだとか。

ポワールや料理人たちに味見してもらうと、「林檎がねっとりしてて味しい」、「酸味のおかげで、くどさがない」と褒めてくれた。

これなら、きっとユリウスも喜んでくれるはず。

タルトを皿に盛りつけて、執務室へ持って行く。勿論、紅茶も忘れずに。

「…………?」

その途中、ふと窓へ視線を向けると、見知らぬ馬車が玄関前にちょうど停車したところだった。

まず最初に馬車から降りたのは、初老の男。その後で、白いドレスをに纏ったが姿を現した。

遠目に見ても、その佇まいからしい人だと想像がつく。

緩くウェーブのかかった銀の髪が、太を浴びてキラキラと輝いている。

高位貴族のお嬢様かな……

そう思いながら眺めていると、

「まったく、こちらの都合も考えずに……」

私の隣に、いつの間にか立っていたマリーが呆れた口調で言う。

「マリーさん、あの方は一……?」

「彼の名は、ミルティーユ様。ユリウス様の従姉妹にあたられる方です」

従姉妹? ただのお客様じゃなかった……

私がぎょっとしていると、マリーに両肩を摑まれて回れ右をさせられた。

「今すぐお召し替えにならないと。このなりでミルティーユ様とお會いするのは、非常にまずいです」

「はい……!」

急いで部屋に戻り、メイド服からドレスに著替える。

化粧をして、髪型もセットし直して……

あっという間にフレイからアニスに戻っていく自分を、私は鏡で呆然と眺めていた。

「……マリーさん、手際がよすぎません?」

「メイド長たる者、この程度出來て當然です」

そしていつものように、マリーは落ち著いた調子でそう言った。

あまりにも頼もしすぎる……

    人が読んでいる<【書籍化決定】白い結婚、最高です。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください