《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》45.ライバル

それからというもの、ミルティーユは頻繁に屋敷を訪れるようになった。

自分が再婚してあげると言った時、ユリウスに「ふざけるな」と地を這うような聲で返されたのに、まったく堪えていない様子。

その無神け……いや、心の強さは正直尊敬に値する。

「ユリウス~~! 可い従姉妹が會いに來たわよ~~~!」

本日もミルティーユは何の前れもなく、襲來してきた。

「來るな!」

「いやだわ。別に照れなくてもいいのに」

ユリウスが怒っても、この調子である。私を押し退けて、ユリウスの隣を陣取ってしまった。なので私は、客人用のソファーへと移することに。

するとミルティーユは、私を見てニヤリと笑った。

「あら、まだいたの? あなたと話すことなんて、何もないわよ」

「そ……そのようなことを仰らずに、ご一緒させてください」

「仕方ないわねぇ。ま、特別に許してあげる」

本當は、私だって今すぐ応接間から飛び出したいのだが、ユリウスが「行かないでくれ」と目で訴えてくるのだ。

ミルティーユはただ遊びに來ているわけではない。私を一方的にライバル視して、威圧的な態度をとるようになった。

ユリウスがエシュット公爵に抗議の手紙を送ったところ、「娘をきつく叱っておく」と返信がきたものの、いまだ改善の兆しは見られない。

「それで、ユリウス。アニスと離婚する日は決まった?」

「……またその話か」

ユリウスはげんなりした様子で溜め息をついた。

そしてミルティーユを睨み付けながら立ち上がると、私の隣に移した。

「いいか、ミルティーユ。私はアニスと別れるつもりはない。何度來ても同じだ」

「そんなこと許さないわ!」

「どうしてだ」

「だって、そのよりわたくしの方がしいし若いじゃない!」

そりゃ、そうでしょうね。ミルティーユは私より四つ年下の二十一歳だ。

「歳など関係ない」

しかしユリウスは、表を変えずに言い返した。

「それにアニスの笑顔は見ているだけで癒される。だが、お前が笑った時の顔は何か企んでいるようなじがして怖い」

「はぁー!? 何よ、それぇ! わたくしが醜いと言いたいわけ!?」

ミルティーユが顔を真っ赤にして立ち上がった。今までの余裕ぶった態度はどこへやら。どうやら逆鱗にれてしまったらしい。

「私は、別に容姿を貶したわけじゃない。ただお前の笑顔が怖いと言っただけだ」

「同じようなものでしょ! ふざけないで!」

ミルティーユがパァン! とテーブルを叩いた。

怒り狂うその様を眺めながら紅茶を飲んでいると、アクアマリンの瞳が私を捉えた。

「わたくしとあなた、どちらがしいと思う?」

「えっ」

む答えを言わなければ殺される。私を睨む走った目が、そう語っていた。

私はユリウスの方をちらっと見てから、おどおどと答えた。

「え、えっと、ミルティーユ様です……」

「ふん。何當たり前のこと言ってるのよ」

素っ気ない言いをしつつ、嬉しそうな顔で扇を仰いでいる。

「ほら、アニスもこう言ってるわ! の価値はしさで決まるのよ! だからあなたもそれを認めて、そのとさっさと別れなさい!」

ミルティーユは再びハイテンションで、ユリウスに言い放った。

笑顔が怖いとまで言われたのに、引き下がるつもりはないらしい。

そんな従姉妹に、ユリウスは疲れたような口調で言う。

「先ほどの失言は悪かった。謝るから、もう帰ってくれないか」

「……いいわ。今日のところは、とりあえず帰ってあげる。だけど一つだけ忠告しておくけど、そのと一緒にいても、あなたは幸せになんかなれないわよ」

そう言い殘して、応接間から出て行く。

……今のは、どういう意味だろう。私と一緒じゃ幸せになれないって……

ユリウスは、ミルティーユが出て行った後も暫くドアの方を見詰めていた。

「……私も仕事に戻る」

「あの……ユリウス様。今、ミルティーユ様が仰っていたのは……」

「さあな、私も何を言っているのか分からない。君は気にする必要なんてないよ」

ユリウスは私の顔を見ずに答えると、足早に応接間を後にした。

……この時、私は何だか嫌な予を覚えていた。

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