《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》50.真実

屋敷に戻ると、何やら使用人たちがざわついていた。

そのうちの一人が、私に気づいて慌ただしく駆け寄ってくる。

「フレイさん、どこに行ってたの!?」

「……用事があって、牧場に行ってました」

「あなたがいないって、ユリウス様とマリー様が捜してたわよ! 使用人たちに聞いても、誰も知らないって言うし……」

そういえば、牧場主の応対をしていたメイドには、私が牧場に行くことを緒にしてしいとお願いしていたんだっけ。

執務室へ向かっている途中に、顔を悪くしている彼と鉢合わせした。ここまで大きな騒ぎになり、ユリウスたちに叱られるのが怖くて言い出せずにいたらしい。彼を巻き込んでしまって、申し訳ないことをした。

「フレイです。ただいま戻りました」

執務室のドアをノックしてから、そう告げて中にると、ユリウスとマリーが驚いた顔でこちらを見た。

「外出するのは、控えるようにと言ったはずだ」

ユリウスは一瞬安堵の表を浮かべたが、すぐに目を細めて、咎めるような言いをした。

心配してくれていたのは分かっている。二人の言いつけを破った私が悪いことも。

私は深く頭を下げた。

「申し訳ありませんでした」

「アニス、君に何かあったら私は──」

「こんな形だけの妻でも、隨分と大事にしてくださるのですね」

顔を伏せたまま言うと、ユリウスに「アニス……?」と不思議そうに名前を呼ばれた。

私は顔を上げて、ユリウスをまっすぐ見據えた。

「私が世間で悪く言われていることを、どうして隠そうとしたのですか?」

「何のことだ」

「はぐらかさないでくださいっ」

私が語気を強めると、ユリウスは気まずそうに視線を逸らした。

「マリー、し外してくれ。アニスと二人きりで話がしたい」

「かしこまりました」

マリーはそう返事をすると、落ち著いた様子で執務室から出て行った。去り際に私を一瞥して。

「……君の醜聞が流れ始めたのは、例の夜會の後からだった」

ユリウスは私と目を合わせると、靜かに語り始めた。

ロシャワール侯爵は私を気遣って、ソフィアが事件を起こしたことを公にしなかったらしい。

しかし、人の口に戸は立てられない。

一部の貴族の耳にり、そこからどんどん広がっていくと、やがて私の良からぬ噂も流れるようになったという。

「君に隠していたことは謝る。……だが君が噂を知ったら、深く傷付くと思ったんだ」

「そのようなお気遣いは結構です」

「…………」

私と一緒にいたら幸せになれない。以前ミルティーユは、ユリウスにそう言っていた。

あの忠告の意味を、今なら理解出來る。

このまま私がオラリア家にいたら、きっとユリウスにも迷がかかってしまう。

「ユリウス様……私と離婚してください」

私は聲を震わせながら、けれどユリウスの顔をまっすぐ見據えて告げた。

「君なら、そう言うと思っていたよ……」

ユリウスは溜め息をついてから、有無を言わせぬ口調で宣言した。

「だが、君を手放すつもりはない」

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