《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》51.仲違い

その言葉に、私は目を大きく見開いた。

「な、何故ですか。私はオラリア家のために言って……」

「しばらくすれば、噂も下火になるだろう。それを待てばいいだけの話だ」

「ですが、いつか必ず同じようなことが起きます……!」

男爵家の娘が公爵家に嫁いだということで、私に対する偏見は元々あったと思う。

そして今回、それがソフィアの一件で表面化した……

この家にいる限り、私には悪評が一生ついて回る。やっぱり、ソフィアとハロルドが以前屋敷に押しかけた時に、ユリウスは私をオラリア家から追い出すべきだった。

しかし彼は、子供に言い聞かせるような口調で私に言う。

「アニス。私と離婚すれば、あの実家へ戻ることになるんだぞ。それに援助も打ち切ることになったら、君は両親に何と言われるか──」

「……あなたには関係のないことです!」

聲を荒げて言葉を遮ると、ユリウスは「何?」と眉を顰めた。

私は激を抑えることが出來ず、両手を握り締めて捲し立てた。

「先ほども言いましたが、あなたと私は形だけの夫婦です。してなんかいないくせに、優しくしないでください!」

「…………」

「私に同しないでください……!」

吐き捨てるように言って、執務室から出て行く。

そのまま自分の部屋に駆け込むと、私は床にへたり込んだ。

ユリウスは私を実家から、世間から守ろうとしている。この屋敷にいれば、平和に暮らせると分かっているのに、彼の優しさが忌々しく思えてしまう。

あの人にこれ以上迷をかけたくない。

それにユリウスに実家の話をされた時、何故かとても悲しくて、慘めな気持ちになった。

私は、あんな理由で引き留められたくなかった……

「アニス様、いらっしゃいますか?」

「はい……」

ドアの向こうからマリーの聲がした。

返事をすると、彼が「失禮します」と言って部屋にって來る。

「ユリウス様からのご伝言です。『君が何と言おうと、離婚には応じない』と。それから」

マリーは一瞬言い淀んだ後に、言葉を続けた。

「……『誹謗中傷は想定だし、今回の結婚は契約の上にり立っている。決して君に同しているわけではない』とのことでした」

「そう……ですか……」

マリーは他に何かを言おうとしているのか、その場に留まっていたが、私が「しばらく一人にしてください」と言うと、お辭儀をしてから靜かに部屋を後にした。

様々なが押し寄せて來て、涙がじわじわと溢れ出す。

私のことを誰も知らないところへ、今すぐ逃げ出してしまいたい。

あれからというもの、ユリウスは私を避けるようになった。用事がある時はマリーなどに言づけを頼んでいた。

厚意を無下にするようなことを、私はたくさん言ってしまったのだ。嫌われても當然だと思う。

心のわだかまりがすっかり解けたわけではないけれど、あのような態度を取ったことに罪悪はある。

しかし、ユリウスにどんな風に謝ればいいか分からずにいて、そのきっかけさえも失ってしまっていた。

そんなある日のこと。事件が起きた。

いつものように料理の下ごしらえを手伝っていると、ポワールが「大変、大変!」と慌ただしく廚房にって來た。

「リーヴェ家で食中毒が出て、使用人たちが倒れちゃったんだって!」

「そいつぁ、大変だな……」

料理長がそう言うと、他の料理人たちからも心配の聲が上がる。

オラリア家と親の深い貴族なのかな……?

すると、ポワールが首を傾げている私を見て「あれ? フレイ知らなかったっけ?」と話しかけて來た。

「マリー様は、リーヴェ伯爵家のお嬢さんなんだよ~」

「そうだったんですか……」

「それで人手が足りないから、誰か手伝いに來てほしいって言われてるんだけど……」

「……でしたら、私が行きましょうか?」

私が手を小さく挙げて言うと、ポワールに「いいの?」と聞かれたので、し迷ってから頷く。

この屋敷から離れる口実が出來た。そんな風に考えてしまう自分がけなかった。

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