《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》53.病人食作り
私は、主に調理を任されることになった。
荷を部屋に置いてから廚房へ向かうと、數人のメイドが慌ただしくき回っている。
リーヴェ家に猛威を振るった食中毒は、料理人たちを全員コテンパンにしてしまった。故に現在は、メイドの彼たちが食事を作っているらしい。
食中毒の原因は、特定するには至っていないが、被害が使用人に限られていることからどうやらまかないの可能が高い。
彼らの食事は代制で、メニューも変わる。今こうして働いているのは、幸運な人たちなのだ。
「フレイさんは、病人用のスープを作ってくれる? 野菜は何でも使っていいから」
「分かりました!」
人參と玉ねぎがいっぱいあるから、これらを使おう。手早く皮を剝いて、ひたすらりおろしていく。
それを鍋でじっくりと炒めてから、コンソメスープを加えて煮込む。仕上げに牛を足して、塩胡椒で味を整えたら、人參のポタージュの完。
味見をすると、素樸な甘さがあって味しい。レストランで働いていた頃、まかない料理でよく食べてたなぁ。
懐かしさをじていると、廚房にはいつの間にかベアトリスの姿があった。
「味しそうな匂いねぇ。こちらは、フレイさんが作ったの?」
ベアトリスは、鍋を覗きながら私に尋ねた。
「はい。人參のポタージュです」
「よかったら……私もいただいてもいいかしら?」
「え? それは構いませんけど……」
私が答えると、「それじゃあ、よろしくね」と嬉しそうに廚房を後にした。人參が好きなのかな……
他にも長い時間茹でてらかくなったパスタや、ハムりのマッシュポテトを作って、使用人たちの寢室へと運んでいった。
「味しい、味しい」と言いながら、病人食をガツガツ食べてくれている。
この調子なら、早く元気になると思う。
休憩がてら部屋に戻って食事を摂り、ふと窓の外へ視線を向けると、ベアトリスが一人で庭園を歩き回っていた。如雨で水やりをしているらしい。
「……?」
ベアトリスはたんぽぽの花壇の前でしゃがみ込んだ。そしてメイドが呼びに來るまで、ずっとそこに留まり続けた。
私には、その後ろ姿が何だか小さく見えて、寂しそうだった。
數日後には食中毒になった人たちもすっかり元気になって、料理人も全員廚房に戻って來た。
私は「今まで頑張ってくれたから、ゆっくりしてて」と言われてしまい、部屋でのんびり読書をしていたが、どうにも語に集中できない。何か仕事がしたくて、がムズムズしている。
オラリア家に帰るのは明日なのだが、もう今日のうちに帰りたい……
本を閉じて溜め息をついていると、誰かがドアをコンコンと叩いた。
「フレイさん、今いいかしら?」
ベアトリスだ。ドアを開けると、「ちょっと手伝ってしいことがあるの」と言われ、私は「はい!」と力強く頷いた。仕事だ……!
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