《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》69.作戦會議

「何でさっさと帰ろうとしてんのよ! この子の嗅覚が信じられないわけ!?」

ロートリアス邸を出ると、ミルティーユは白馬を指差しながら詰問した。

その問いに、ユリウスは屋敷を一瞥しながら答える。

「男爵も夫人も、アニスはここにはいないと言っているんだ。大人しく引き下がるしかないさ」

「だけど、あいつら絶対に何か隠してるわよ!」

「……珍しくお前と意見が一致したな」

両腕を突き上げながら憤慨する従姉妹に、ユリウスは小さく呟いた。

大事な用事とやらも、恐らく自分たちを早く帰らせるための口実だろう。

だが証拠がなければ、こちらも大きくくことは出來ない。歯さをじながら、ユリウスが白馬に乗ろうとした時だった。

「……アニス様は、この屋敷に閉じ込められているはずです」

マリーは小さな聲でユリウスに告げた。

「どういうことだ、マリー」

「ロートリアス夫人が著けていたバレッタ……あれは私の母が、アニス様に差し上げたものです」

「……それは本當か?」

ユリウスは目を見張りながらマリーに尋ねた。

「はい。間違いありません。恐らくアニス様から奪ったのでしょう。それを著けたまま私たちの前に現れたことに気がついて、慌てて外したようですが……」

「よーし、決まりね! アニスを探しに戻りましょう」

「いや。一旦帰るぞ」

「何でよ。バレッタが見つかってるのに」

を尖らせるミルティーユに、ユリウスは溜め息をつく。

「証拠としては弱すぎる。同じものを買っただけだと言われたら、それまでだ」

「うっ……」

「ユリウス様の仰る通りです。それに今ここで事を荒立てれば、アニス様に危害が及ぶ可能もあります」

「分かったわよ……」

ミルティーユは渋々ながら納得した様子だが、諦めきれないのか屋敷をチラチラ見ている。

それはユリウスも同じ気持ちだ。

本當は、すぐにでもロートリアス男爵を問い詰めたいと思っている。だがアニスを無事に助け出すためにも、ここは冷靜にならなければ。

ユリウスは、自分にそう強く言い聞かせた。

その後、ごねるミルティーユをエシュット家へ強制送還し、ユリウスは自分の執務室でマリーと作戦會議を開いた。

しかしアニスを救出する方法は、一向に思いつけずにいた。

ロートリアス男爵にアニスの居場所を聞いたところで、はぐらかされるだけだ。だが家宅捜索するには、正當な理由が必要となる。

「やはり馬とバレッタだけでは、決定打に欠けますね」

「ああ。下手をすれば名譽毀損で、こちらが訴えられるかもしれない。そうなれば、ますますロートリアス家に手を出しづらくなる……」

「ミルティーユ様のことも気がかりです。義憤に駆られて、単で乗り込みかねません」

「……!」

マリーが大真面目な顔で言うと、ユリウスの顔に張が走った。

見た目は、頭脳はイノシシ。その名はエシュット公爵令嬢・ミルティーユ。

が暴走する前に、何とかしなくては……

そんな空気が二人の間に流れる中、ドアをノックする音がした。ユリウスが「れ」と言うと、ポワールが執務室にってきた。

「あれ~? ユリウス様もマリー様も難しい顔してどうしたんですか?」

「まあ、ちょっとな……」

「ふーん。あ、そんなことより大変です大変です!」

ポワールは何やら興しており、頬を上気させていた。

「落ち著け。何かあったのか?」

「以前、指名手配犯が捕まったじゃないですか! 実はその人には仲間がいて、どこかに潛んでいるらしいんですよ! マリー様が言ってた通りです!」

ユリウスとマリーは、互いに顔を見合わせた。

あれは、アニスの外出を止めるためについた噓なのだが、ポワールはそうとも知らずに「流石ですね、マリー様! いよっ、メイド長!」とマリーを雑に褒めている。

「ポワールさん、実はあれは──」

「その話は本當なんだな?」

マリーの言葉を遮るように、ユリウスがポワールに問う。

「はい! 街でもすっごく噂になってるみたいですよ~」

「そうか。……ならば、その話を利用しない手はないな」

「へ?」

「ポワール、君の兄にも協力してもらうぞ」

突然そんなことを言われたポワールは、「よく分からないけど、分かりました!」と元気よく返事するのだった。

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