《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》77.相談事

すっかり元気になった頃、私は執務室に呼ばれた。

イーサンから手紙が送られて來たのだ。

手紙によると、留置場での生活に耐えられなくなった父が走しようとして、看守に暴行を加えてしまったとのこと。

さらに母と一部の使用人は「自分は何も知らない」と、容疑を否認しているらしい。

そして父に雇われて私を攫った男は、なんと指名手配犯の仲間であることが発覚した。

犯罪者を保護している容疑で家宅捜索を行ったが、まさか本當に匿っていたとは……とイーサンは驚いたという。

手紙を読み終えた私は、深い溜め息をついた。

するとユリウスは、優しい聲で言う。

「アニス、君が思い悩むことはないさ」

「……そう、ですね」

両親にはしっかりと罪を償ってしいが、この調子だと取り調べはまだまだ続きそうだ。

言い逃れしようとしている母はともかく、父は罪狀が増えてしまったわけだし。

「ありがとうございました」

そう言いながら、手紙を畳んでユリウスに渡した。

「では、失禮します」

お辭儀をして退室しようとすると、ユリウスは「待て」と私を引き留めた。

「まだ話は終わっていない」

「何でしょうか?」

「実は君に相談したいことがあってだな。その、何だ……」

口元を手で隠しながら、何やら言い淀んでいる。ま、まさか。

「……もしかして、離婚のご相談ですか?」

「違う!」

即座に否定するユリウスに、私はホッとした。これで「そうだ」と言われたら、ものすごく落ち込んだと思う。

だけど、だったら何を話そうとしているのだろう……

「君は嫌がるかもしれないが……」

「…………」

「いや、嫌だったらいいんだ。遠慮なく斷ってくれ」

「…………」

「……今更ですまないが、私と結婚式を挙げてくれないだろうか?」

たっぷりと前置きをしてから、ユリウスは張をはらんだ聲で私に問いかけた。

結婚式。その単語に、私は目を瞬かせる。

「……どういうことでしょうか?」

「君は私の大事なパートナーなんだ。たとえ契約上の関係だとしても、式は執り行うべきだと思う」

「えっと……私に気を遣っていただかなくてもいいのですよ?」

ユリウスは毎日仕事で忙しいのだ。そんなことに時間を割いてもらうのは、申し訳ないと思う。

しかしユリウスは、私から視線を逸らしながら話を続けた。

「実は……だな。エシュット公爵に私たちの結婚式に參列すると強く詰め寄られてな。その……斷るのもなんだし……こんな話、君は迷だろうが……」

「い、いいえ、そんなことありません!」

私は大きな聲を上げて、ユリウスの言葉を遮った。

「私、とっても嬉しいです……!」

自分の気持ちを素直に伝えると、ユリウスは「ほ、ほんとか」と安堵したような表を見せた。

そして「よし」と呟いて、勢いよく椅子から立ち上がる。

「そうと決まれば、まずは式場を選ぼう!」

ユリウスが私に差し出して來たのは、人気の式場が掲載されているカタログだった。

既に彼が読んだ後なのか、いくつかのページに折り目がついている。

「私の第一候補は、ここなのだが……」

そう言って、折り目のついたページに載っている教會について語り始めるユリウス。

銀灰の瞳はキラキラと輝き、聲もいつもよりワントーン高い。

こんなに生き生きとしている彼を見るのは、初めてだった。

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