《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》79.素直になれない

私は、ずっと控え室の鏡とにらめっこしていた。

そこに映っているのは、純白の花嫁裝を纏った自分の姿。スッキリとした上半と、裾から下がゆったりと広がっているのが特徴のドレスだ。

ユリウスは「君は、シンプルなデザインのドレスが似合う」と言っていたが、見れば見るほど「そうかな……?」と不安になってくる。シンプルなデザインほど、本人の良し悪しが際立っちゃう気がする。

鏡に映る私の顔は、ものすごく引き攣っていた。

「とてもお綺麗ですよ、アニス様」

私の両肩をポンと叩いて、マリーが言う。

「ほ、本當ですか?」

「はい。お世辭ではありません。ですから、もっと自信を持ってください」

私の不安も、メイド長にはお見通しだった。

の言葉に勵まされていると、ドアをコンコンとノックする音が聞こえた。マリーが「どうぞ、おりください」と言うと、エシュット公爵がってきた。

「よく似合っているぞ、アニス」

公爵は私の姿に目を細め、穏やかな笑みを浮かべながらそう褒めた。

「ありがとうございます、公爵様」

「うむ。本日は君の父親役をしっかりと果たそう」

「はい……このようなことを引きけていただきましたことを、謝いたします」

私は深くお辭儀をした。父の代わりに、エシュット公爵が私とヴァージンロードを歩いてくれることになったのだ。

「いやいや。私も、素直で可い娘が出來たようで嬉し……あいたっ」

誰かが、後ろからエシュット公爵の足を力強く踏みつける。

「私だって素直で可いわよ!」

ミルティーユがエシュット公爵の背後から、ひょっこり姿を現した。両手を腰に當てて、自分の父を睨んでいる。

公爵は、呆れたように溜め息をついた。

「まったく……お前は我儘なだけだ」

「なぁんですって~!」

「……お二人とも喧嘩をなさるなら、部屋の外でお願いいたします」

マリーが冷たく言い放つと、親子はコクコクと頷いた。流石のミルティーユも、うちのメイド長には強く出られないらしい。

「そ、それにしても、ユリウスが今さら結婚式を挙げるなんて意外だったわ……」

「はい。公爵様のおかげです」

「うん? 何のことかね?」

エシュット公爵が不思議そうに首を傾げる。

「えっと……私たちの結婚式に參列したいと、ユリウス様にお話されたのですよね?」

「いや、私はそんな話一度もしておらんよ」

「そうなんですか!?」

それじゃあ、あれはユリウスの作り話だったってこと……?

私が目をぱちくりさせていると、ミルティーユは顔を顰めながらぼそっと呟いた。

「あの馬鹿。ほんとにヘタレなんだから……」

「ミルティーユ様、何か仰いましたか?」

私がそう尋ねると、ミルティーユは「何でもないわ」とそっぽを向いてしまった。

「言っておくけど、私はまだあんたのことを認めたわけじゃないから!」

「はい……」

「……だけどまあ、何かあったら相談に乗ってあげるわ」

いつもよりしだけ優しい聲で告げると、最後に「ふんっ」と鼻を鳴らして控え室から出て行った。エシュット公爵も「うちの娘が申し訳ない……」と言いながら、その後を追いかける。

「なるほど。あれが所謂ツンデレというものですか」

マリーは小さく頷きながら、そう言った。

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