《【書籍化決定】白い結婚、最高です。》80.あんな人

らかな合いの花で作ったブーケを片手に持ちながら、私はエシュット公爵とともに式場にって行った。

に響き渡るパイプオルガンの音

を浴びて、床に鮮やかな模様を作り出すステンドグラス。

とりどりの裝花で彩られた通路の先には、純白のタキシードにを包んだユリウスが待っていた。いつもとは違う雰囲気に心をときめかせつつ、私はヴァージンロードをゆっくりと歩き始める。

以前は、結婚式を挙げる自分なんて想像出來なかった。

長椅子には招待客が座っていて、その中にはオラリア家の使用人の姿もあった。ポワールが私にこっそり手を振ろうとして、マリーに止められている。

そうしてユリウスの下へ辿り著くと、公爵に促されて彼と並び立った。

私、こんなにかっこいい人と結婚したんだ。今さらそんなことを実していると、神父が聖書の朗読を始めた。

その間も、私は隣にいるユリウスをチラチラと見ていた。それはユリウスも同じだったらしく、視線が合うとお互い笑みを零した。

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神父の朗読もいつの間にか終わり、次は……と考えて、私はハッと息を呑む。

たった今、気づいてしまった。

私たちには誓いのキスという、(ユリウスにとっては)大きな試練が待っていることを。

「新郎ユリウス。あなたはここにいるアニスを妻とし、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、し敬い慈しむことを誓いますか?」

「誓います」

神父の問いかけに、ユリウスは凜とした聲でそう宣言した。この人、絶対気づいてない。

「新婦アニス。あなたはここにいるユリウスを夫とし、病める時も健やかなる時も、富める時も貧しき時も、し敬い慈しむことを誓いますか?」

「誓います……」

上の空で指換を済ます。的な場面のはずなのに、それどころじゃない。

神父が「では、誓いの口づけを」と言うと、ユリウスもようやく気づいたようでピシャーンッと衝撃をけた顔をした。

だが、この狀況でキスをしないわけにもいかない。ユリウスは手を僅かに震わせながら、私が著けているベールをそっと捲った。

息を荒くしながら、ゆっくりと顔を近づけてくる彼に、私は小聲で言う。

「ユリウス様……キスをする振りでいいんですからね」

招待客からは、恐らくベールで隠れてよく見えないだろう。しかしユリウスは小さく首を橫に振ると、ぐっとを寄せてきた。

熱い吐息が、私のれる。銀灰の瞳が、私をまっすぐ見據える。

そして──、

「すまん、やっぱり無理」

ユリウスはか細い聲で言うと、突然式場の出口に向かって走り出した。

ざわつく招待客たち。エシュット公爵が困した表んだ。

「ユリウス、お主何をしているのだ!?」

「急ぎの仕事があることを思い出したので、私は帰ります!」

「本日の主役が帰ってどうする! これ、待たぬか!」

公爵の制止も無視して、ユリウスは出口の扉を勢いよく開けた。

「ヒヒーンッ!」

「お、お前は……!?」

外には何故か、うちの白馬がいた。どうしてこんなところに……

「えへへ~。あの子にも、フレ……アニス様の花嫁姿を見せてあげようと思って、連れて來ちゃった!」

ポワール……ッ!

「お、お待ちください、オラリア公!」

式場に配置されていた私兵たちが、ユリウスへと駆け寄っていく。

「くっ……頼む、俺を乗せて逃げてくれ!」

「ブルブル」

白馬が「乗りな」と言うように首をブンッと振ると、ユリウスは素早く彼の背中に乗り上げた。

「では、これで失禮する!」

リンゴ―ン、と祝福の鐘が鳴り響く中、ユリウスを乗せて颯爽と走り出す白馬。

どんどんと遠ざかっていく後ろ姿を、私は呆然と眺めていた。

ふと招待客たちへ視線を向けると、マリーは遠い目をしていて、流石のポワールも「帰っちゃったね……」と呆気に取られていた。

ミルティーユはこちらにやって來たかと思うと、哀れみの眼差しを向けながら、

「ねぇ、アニス……あんた、あんな奴でいいの?」

「はい……あんな人だから大好きなんです」

小さく笑って、私はそう答えた。

真面目で優しくて、だけどちょっとけない人。そんな彼の全てがしい。

たとえ、この先どんなことがあっても、私はユリウスをし続ける。

私たちは、誰にも斷ち切れない絆で結ばれているのだから。

※次にポワール目線をれて、おしまいでございます。

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