《勘違い底辺悪役令嬢のスローライフ英雄伝 ~最弱男爵家だし貴族にマウント取れないから代わりに領民相手にイキってたらなぜか尊敬されまくって領地かになってあと王子達にモテたのなんで???~》16:野蠻人

翌朝、激しくぶつかり合う金屬音に目が覚める。

ぼーっとした頭で何事かと考えると、ああそういえば……冒険者のお二人を食客に招きれたのだったと思い出した。

朝の訓練か……うるさいわね。

この調子じゃ、おちおち二度寢もできやしない。

仕方が無いので支度を軽く整えて、騒がしい外の様子でも見に行くことにした。

冒険者の戦い方……それも異國の民の戦闘

知っておいて損はないでしょう。

庭に出ると、汗を流す逞しい男の姿が、三人。

「はっは~! オージン殿、ヘバってきましたなぁ。ほらほら、隙だらけですよ~!」

「ぐぬぬう! まだまだァ! あでっ!」

「やれやれ、代するか? オージン。もうし腰を下ろしたかったが、年寄りをもっと労わってしいもんだのぉ」

お父様に立ち向かっていくのはオージンさま。

その剣の一振りに汗が飛ぶ。朝日に反して、彼はキラキラと輝いているように見えた。銀の髪も相まって朝のざしに良く映える。

最後はお父様に思いっきり突き飛ばされて、芝生の上をゴロゴロと転がって仰向けに倒れたままけなくなってしまった。

荒く余裕のない呼吸音が耳に殘った。

それにしてもお父様……めちゃくちゃいきいきしてらっしゃるわね。

「いやあしかしゲンブ殿、あの頃よりも一層腕を磨かれたのではないですかな」

「いえいえそんな。バトラー殿も年には勝てない。ということですよ。はっはっは!」

「なにおう!?」

二人の剣戟を橫目に、私は急いで水差しを用意した。

コップと共にトレイに乗せて、オージンさまの元へそれを持っていく。

「はあ……はっ……! はあ! く……くそ……強えぇ……!」

「あらあら、誰を相手にしてると思って悔しがってるのかしら。よろしければお水はいかがですか? 冷たくしてありますよ」

は昨日の水だけど、金屬の水差しは、し冷気の魔法を當てるだけで中を瞬時に冷やしてくれた。

やっぱり運して火照ったには冷水が一番よね。

オージンさまは素直に私の提案に賛を示した。

コップに注いでいると、待ちきれなかったのか私の手から暴に奪い取り、浴びるように天を仰いで一気に飲み干してしまった。

「ふふっ。おかわりはいかが?」

「……っぷは! もちろんだ。どんどんくれ!」

結局オージンさまは四杯もおかわりして、ようやく一息ついた様子だ。

風がそよいで気持ちいい。オージンさまも今はただ、そのに浴びる日差しと風のりに気を休めているようだった。

「バトラーの言うとおりだ。ゲンブ殿は素晴らしい武人だな。俺の剣がかすりもしなかった」

お父様を褒められてなお気分がいい。

そしてこんないい気分の時は――。

し意地悪をしてみたくもなるものだ。

「あら、そうですの? 私は手傷を負わすことが出來ましてよ?」

「…………なにぃ? 噓をつくな、あんたのようなお嬢様が、そもそもまともに剣を振れるのかよ?」

むっとした顔でそのような負け惜しみを言われても、事実を変えることはできませんわ。

だってすぐそこに當事者兼証人がいらっしゃるんですもの。

「お父様ー! ちょっといいかしら? 私と剣での立合いで、傷付けられたことありますよね?」

「はっはっは! いやぁ、そうだねえ! 流石は僕の娘だよ!」

「ほお! そりゃ凄い!」

バトラーおじさまもついでに褒めてくれた。

ああ、気分がいいわ。早起きしてよかった!

「ふふん、あなたももっと進しなさい」

上から目線でオージンさまにそう言うと、面白くなさそうに膨れてしまった。私よりも歳上だけど、まだまだ子供ね。

しかし、何やら面倒なことを思いついたらしく、急にガバッと立ち上がると私を見下ろし、意気揚々とこう言ってのけた。

「へえ、そこまで強いんなら、是非ともお手合わせ願いたいね。カリン嬢?」

「いえ、結構です」

予測できた相手の言い分を即座にキッパリと否定して、私は家の中にもどった。

ほんと、冒険者なんて野蠻人なんだから。

私はこれでも忙しいんです!

これから子供たちに、ある提案をしに行かなければならないのだから……。

お読みいただき謝でございます。

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