《勘違い底辺悪役令嬢のスローライフ英雄伝 ~最弱男爵家だし貴族にマウント取れないから代わりに領民相手にイキってたらなぜか尊敬されまくって領地かになってあと王子達にモテたのなんで???~》19:魔法の才と見栄
――それは、一人の年が引き起こしたえげつない音だった。
誰もがその方向を見る。
子供たちにどんな魔法の適正があるかを調べるために『水見の儀』を三組に分けて執り行っていたところ……それは私も予想だにしない出來事だった。
年のグラスからは魔法の水がいまだに止めどなく湧き上がり、彼自はおろか周りの子供たちすらも全ずぶ濡れにさせてしまっていたのだ。
キョトンとする、當事者の年。
私も思わず、あまりの出來事に戸い押し黙ってしまった。
「すげぇ…………」
ぽつりと呟く誰かの聲に、それから辺りは、打って変わっての大歓聲。
「うおおおお!? なんだよそれ! めちゃくちゃすげぇじゃねえか!!」
「これ、本當にアルクがやったの!? 信じられない! すっごーい!」
「マジかよ! これ間違いなく俺たちの中で一番の魔法のセンスだろ!?」
よってたかってアルク年をみんなが賞賛した。
なんて……!
なんて逸材かしら!?
魔法の水が増えるのは水屬が得意な証なのだけれど、まさか『水見の儀』でここまで大量に水を湧きあがらせることができるなんて……聞いた事がない!
まさに天賦の才!
これは僥倖ね! まさかこんな子がいるなんて……思った以上にずっと早くバスターズを始できるわね!
みんなとは若干異なる理由で歓喜する私を傍らに、まだまだみんなはアルク年を持ち上げ続ける。
「いやほんとすげぇよ! 最高!」
「ほんと尊敬するわ! だってみんなと大違いなんだもん!」
「いやこれもしかしたら……カリン様よりも凄いんじゃね!?」
……は?
「あっ」
失言を悟っても時すでに遅いわよ?
変なことを言ったバカを睨むと、冷や汗を垂らしながら目を泳がせた。
…………ほんと、面白いことを言うわね。笑えないのが殘念だわ。
どこの、誰が、私より…………なぁに?
私は咄嗟に、グラスの一つを暴に取り上げると──全魔力を注ぎ込んだッ!!
「はァ!!!」
――空には大きな虹がかかり、みんなはどこもかしこもずぶ濡れの泥んこまみれで、ぽかんと口を開けていた。
私は魔力がすっからかんになって一歩もけなくなったけど……。
これで威厳は保たれたわね!
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