《世界最強はニヒルに笑う。~うちのマスター、ヤバ過ぎます~》最強はボスを狩る②

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五十二階層へ向かうため記憶を頼りにつき進む。不意に視界に飛び込む四角い箱に足をとめ、確認すれば珍しく寶箱が出現していた。

どうしよう、開ける? この階層の寶箱は當たれば確かに大きいけど……外れを引いたら、確実に痛い思いをする。

時間的猶予が無い中で逡巡した私は、賭けにでる。

アイテムボックスから金の鍵を取り出し、寶箱へ差し込む。

パカっと軽快な音が鳴り、寶箱が白く発した。

【 レイスが出現しました。討伐猶予時間は、5:00です。 】

「……ハズレデスネ」

諦めの言葉と共に溜息を吐き出す。

そして、瞬時にホーリーフレイム(+25)を発させる。だが、既にレイス――骸骨の頭を持ち、黒いに白い布を巻きつけ、両腕が鎌の形をしている――の方が數コンマ早く攻撃魔法の詠唱を終えていたらしく、諸にダークフレイムをける。

攻撃をけたと同時に弾き飛ばされた私は、詠唱中のホーリーフレイムが中斷されてしまった。

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「チッ」

舌打ちと共に、錬で杖に付けた回復魔法を発する。

バッファーに限らず職問わず回復魔法が使えるのは武錬で、様々な魔法を付與することができるからだ。とは言え錬と言うものは、ある意味でギャンブルと変わらない。

付與される魔法やスキルはランダムで、自分がしいが出るまで繰り返すことになる。しい魔法が出ても使用後のディレイが三十分、一時間、二時間とこちらもランダム。

錬を一度するごとに高級圧魔石十個と100k――100,000ゼルが消える。気にらず取り外す際にも25k――25,000ゼル消える。勿論、使用した高級圧魔石は戻ってこない。

なんとか、距離を取りたい私の思考を読んだかのように、レイスは、鎌の形に変形した腕で何度も切りつけてくる。

「仕方ない……ここで使いたくなかったけど……」

別の杖に裝備を変更すると同時にアンデッドデヴォーション(+20)を発させる。

レイスの側から、白く輝くがそのを引き裂くようにあふれ出し、弾けると黃粒子へと変り消えていった。

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「どうよ? 聖屬MAXまで突っ込んだ、強化済みアンデッドデヴォーションの味は?」

勝ち誇り、ドヤ顔を決めるも誰もいない。ソロだし、わかってた。

急激に恥ずかしくなるが、ボスの存在を思い出しすぐにシステムログを確認した。

【 レイスを討伐しました。討伐時間は、03:43 です。 】

【 102558ゼルを獲得しました。 】

【 レイスのを獲得しました。 】

【 レイスの眼球を獲得しました。 】

中々に味しい。

レイスの明マントの材料になるし、レイスの眼球は杖の材料だ。

ホクホク笑顔で、足取り軽くその場を後にする。

レイスに比べれば、ハイ・スケルトンの群れは雑魚でしかない。出くわす度、ホーリーフレイムレイズ(+20)を仕掛け燃やしていく。

もうしで五十二階層の階段と言うところでマップに、二つの青プレイヤーを示す表示と二十前後のモブを示す赤い點が見えた。

「チッ」

このまま進めばMPK(モンスターキル)を食らってしまう。かといって、今から引き返し別の道を進めばボスの湧き時間に間に合わない……めんどくさい。

ものぐさな私は仕方ないと腹を括る。何を置いてもボス優先な思考しかないけど、これが私だ。

先ほど使った聖屬MAXの杖に持ち、二つ前の角でプレイヤーが來るのを待つ。

殘り、五……四……三……二……一

ゼロとカウントするタイミングでプレイヤーが、飛び込んでくる。と同時にホーリーフレイムレイズ(+20)を発。だが、ここでイレギュラーが起きた。

丸く形づくられた魔法陣の右端に、いつの沸くのか、どの階層に湧くのかわからないと言われている、バフォメット――山羊の頭に人間の、大きな黒い翼、三叉の槍を持つ悪魔だ――がいたのだ。

焦る私は、三人ならと助けた二人を振り仰ぐ。

だが、奴らは助けられたにも拘わらず、目の前で帰還の護符を使い消えた。

キャラが消える直前急いでスクリーンショットを數枚撮り、確実に後で殺そうと心に決める。

「マジ、殺す。MPKの借りは、PKで返す」

消えた二人に対する怒りの矛先を目の前のサークルで苦しむバフォメットへ。

出來る限りでいい。今のうちに與えられるだけのダメージを與えておきたい。後手に廻ると自分のHPが心もとない。

まー、バフォメットはこれ――私の刀、+29ムラクモ×オハバリでもダメ通るからまだマシか。

ホーリークロス(+15)の詠唱をはじめると同時に、特濃MPポーションを1本飲み干す。詠唱が完了すると同時に、杖をバフォメットへと突き出すと、その周りに白に輝く十字が現れる。

「ブゥオォォォ!」

雄たけびをあげる、バフォメット。武を+29ムラクモ×オハバリに持ち替えホーリーウェポン(+25)を再度詠唱し武に、聖屬の薄いが張ったのを確認して斬りつける。

ギンッ!

金屬同士がぶつかる音が鳴り、刀を持つ右手が鈍く痺れるのをじる。

橫からなぎ払うように、バフォメットの蹄が迫り、を捻り何とか避けると追撃とばかりに、今度は三叉の槍を振り下ろして來る。

勢を立て直す余裕もなく、左手に持った刀の棟でけ、お返しに右手の刀で脛から膝にかけ切りつける。

バランスを崩すバフォメットを見遣り、好機だと確信しファイアーウェポン(+20)をかけ直し、勢いを殺さず二刀スキル旋風切りをお見舞いする。

「ブッ、フォオオオオ!!」

バフォメットは、を切り裂かれながらも、激しい雄たけびをあげ、それでも攻撃を仕掛けてくる。

「さっさと死ねぇっっ!」

腹のそこからび、三叉の槍を左手の刀でいなすと、右手の刀を渾力を籠めバフォメットの心臓目掛け突き刺し、錬で刀に付けたサンダーライトニングを発し叩き込んだ。

「プビュオォ……」

その泣き聲と共に黃い粒子になり消えていく。バフォメットのが消えその場に、へたり込む形になってしまうも、酷い疲労に襲われ手の覚は無くすぐには立ち上がれそうにない。

「はぁはぁ……しんど……はぁはぁ」

【 善悪の塔を彷徨いしバフォメットを討伐しました。 】

【 2586576ゼルを獲得しました。 】

【 バフォメットのブーツを獲得しました。 】

【 善悪の塔91階の寶玉を獲得しました。 】

見える範囲の中央上部に置いた、HPとMPを確認できるバーを見れば……MPは全の五割、HPに至っては全の二割しか殘っていなかった。

「全財産使って、錬しといて良かったぁ」

心の底からの思いを知らず知らず言葉にしていた。

へたり込むこと五分、漸く覚が戻ってきたところで、HPとMPを回復すると疲労回復効果のある木苺のタルトを口へ放り込み立ち上がる。

裝備の耐久を確認し、五十二階層の階段を目指し歩きはじめた。

出くわすはずのモブを、既に狩り盡くしてしまったのかその後、モブに會うことも無く階段へと到著した。

六十階層のボスが湧くまで、殘り三十六分――。

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