《世界最強はニヒルに笑う。~うちのマスター、ヤバ過ぎます~》最強はクランを作る⑥

三回目の引きが終わり黒たちが走り去るとキヨシたちへの個別バフを更新。最後に宮ネェにバフをれかけたところで、見知らぬプレイヤーが聲をかけてきた。

「すいません」

「何か用ですか?」

即座に、知り合いか? と、他のメンバーにPTチャットで聞く。だが、誰も知らないと首を振った。

聲をかけたプレイヤーは、三次職になったばかりのようだ。彼の後ろにいるPTMであろう人たちの裝備が、二次から三次に著るものだったから。

プレイヤーに対応したのは元クランで唯一の良心とまで言われた先生だ。直ぐに黒たちへ連絡をれる宮ネェ。この2人は本當に出來た人だと思う。

「自分たち、朝からここで狩りしてたんですが……」

「そうですか? 僕たちが來た時にはどなたも見えませんでしたよ?」

下手に出てくる割には、押しが強い。

「休憩時間とる必要が出たので、全員ログアウトしてただけで帰還した訳じゃないので、狩場の優先権は自分たちにありますよね?」

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「は?」

相手の言い分に先生が、驚いて固まっている! 珍しい。

どのゲームにもある事だが、プレイヤー間の暗黙の了解について彼らはしらないのだろうか?

病ゲーでは狩場で全員ログアウトした時點で、狩場放棄だと考えられる。狩場を守りたいならせめて半分は殘って狩りしておかないと先に居ようがその狩場は、多く狩れるPTのものになってしまう。

但し窟フィールド以外では、と付く。

一般フィールドであるここは、區切りなどが無いため先にいたPTが何処まで使うのかを予測し、後から來たPTが被らないようにしたり、お互いに譲り合ったりする。

だが彼らの主張では、この狩場で先に狩りをしていたからここは彼らのもので、後から來た私たちが彼らの狩場を橫取りしたと言っている。

思考していると徐々にイラついてきた。

『初心者じゃなさそうよね~』

『よく湧くでござるな。殺(ヤ)っても問題ないと思うでごさるよ』

『十五』

『やろうぜー! 久しぶりにPVPしたいぜー!』

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『めんどう』

宮ネェが相手を舐めるように見ながら言う。すると宗之助がPTチャットでPKするかの相談をはじめた。まったく、これぐらいで……騒極まりないPTだ。キヨシのPVP宣言には誰も突っ込まないらしい。

ティタのカウントに先生以外が、戦闘準備を開始する。

まずは、同じ設置型の魔法を置き、宮ネェとキヨシにマジックオブアブソール(+25)を追加する。

いつも通り黒とティタが戻って來る。その後ろにはいつも通り大量のモブを引き連れていたのだが、今回はし様子が違う。走る二人のHPが三割を下回っていた。

狀況的にマズイ。見知らぬプレイヤーが側にいて、今にもめそうな雰囲気を相手が醸し出している。このタイミングで二人にデバフでもれられたら――るとは思っていないけど一応用心は必要――間違いなく、PTは瓦解する。

まずは打てる手を打たないと――。

『宮ネェ、バリアは?』

『ディレイ(再使用可能までの時間)@二分』

『プロテク使う』

『黒、ティタはそのつもりで、宮ネェは回復優先で!』

『おう』

『了解~』

『わかったわ!』

慌てて宮ネェのバリアが使えるか聞く。予想通りバリアはまだディレイ中で使えないと言われる。仕方なく私の固有魔法プロテクトスケイル――ドラゴンマスター特有の魔法。範囲にいるPT・盟・同盟のメンバーがけるダメージを二十秒間防いでくれる。ディレイは三百分――を使うことに。

相手のPTを避け遠回りに走って、窪みに納まる二人のHPが二割を切る。

ヘイトレンジのエフェクトがあがる。黒の元へモブが押し寄せるのとほぼ同時に、プロテクトスケイルを発した。

と同時に宮ネェの回復魔法が飛ぶ。だが、宮ネェ一人の回復では、ティタと黒のHPを全回に出來ていない。すると二人は回復ポーション(以降=POT)のがぶ飲みを始める。八割まで回復したところで黒が再びレンジヘイトを放ち、モブを寄せた。

ティタは槍に持ち替え攻撃を始め、そこに宗之助と白が加勢する。私も負けじとドラゴンオブブレスでモブにダメージを與えた。

數十秒後引いたモブが次々と倒れる中、黒とティタのHPがガツガツと減り続けている。必死に宮ネェが、回復を使いまわし回復しているが、一何が――。

訝しんみまだ攻撃している重なったモブを良く見てみれば、通常モブの中に一回り大きな固がいた。

必死にタップして一回り大きな個の名前を表示させれば、ハーピー・クイーンと言う中ボスが巻き込まれていた。

ハーピー・クィーンは、攻撃力が異常に高くサイレンスのデバフを使ってくるボスだ。

「チッ」

引いて來るなら言えばいいのに!! としイラつきながら舌打ちした私は、急いでマジックオブマインド(+25)を全員に回す。

『なんで、クイーン引いちゃったの!? 引くなら引くで言いなさいよね』

MPが三割を切っている狀態の宮ネェが愚癡を零す。

殘るはハーピー・クィーンだけ。だが、このボスはここからがめんどくさい。

出來る限り設置型のデバフを敷き詰め詠唱発させる間に、近接組みがメイン武に持ち替えタコ毆りを開始。

を持ち替えたPTMたちに、アースウェポン(+20)をかけ直した。

ここからで出來るだけ迅速にクイーンのデバフを防ぐ必要がある。私ができることはボスと同じサイレンス(+25)を詠唱発して、相手にサイレンスをれる事。だが、決まらない。

魔法防力高すぎ! と、愚癡を零しつつ、しつこくかけ続け十回目で漸くサイレンスがった。漸く仕事が終わったとばかりに杖から二刀に持ち替る。自分自にアースウェポン(+20)をかけ、たまった鬱憤を晴らすためクィーンの羽を斬り付けた。

タゲが黒に固定されているから、範囲理攻撃以外のダメージはほぼ食らわない。

裝備のアクセサリーである程度の魔法攻撃も痛みはない。

ハーピー・クィーンのHPが三割を切り、突然飛び立つと大きく旋回をはじめた。

『範囲來るぞ、離れろ。宮ネェ』

『いけるわよ~!』

黒の言葉にティタ以外が距離取り離れる。ハーピー・クィーンの旋回が加速し、そのの回りを尖った羽が高速回転する。

名前を呼ばれた宮ネェが、タイミングを見計らいバリアを発させる。

「クウェエエエエ」

高音ボイスでひと鳴いたハーピー・クイーンは、大量の矢が降り注ぐような轟音を立て、鋭く尖った羽を降らせた。鋼のようなさの羽が降り注ぐ度、周囲の巖や木、地面に突き刺さる。

『こわっ!』

攻撃をはじめてみたらしいキヨシが、簡潔に想をらす。

範囲が収まり、全員でまたもタコ毆り。

五分後ハーピー・クィーンは「キュルルルルル」と高い鳴き聲を出し、黃粒子になって消えた。

無事ハーピー・クィーンを討伐したところで、眉を寄せた顔の宮ネェが黒とティタにキレた。。

『おぃ! ボス引くなら先に言えよ!』

『わりぃ。ボス居るの見え無くって雑魚にFAれたら著いて來たわ』

素の言葉遣いに戻った宮ネェに黒が謝り、いい訳する。ティタは、視線を逸らし無言を通した。

次の引きの準備のためバフをかけようとしていた私へ先生から待ったがかかる。

『バフ』

『ren。ストップ! この人らどうにかしないと面倒だ』

先生の言葉にそう言えばと思い出す。

さっきのプレイヤーのPTメンバーたちが、予想を超えて顔を真っ赤に染め聲を荒げ詰め寄ってくる。

「ちょっと! 何勝手に狩ろうとしてんの?」

釣り目の白貓獣人が尾をピンと立て金切り聲をあげたかと思えば、煩そうに耳を塞いだ宮ネェがめんどくさそうに「煩いわね~。まったく」と、返す。

「ここは、俺たちの狩場なんだからさっさと帰れよ!」

大剣を持ったドワーフの爺なのに、違和あり過ぎでしょ! せめてなりきって?

ドワーフを凝視する私の橫で、眉間に深い縦皺を刻んだ黒が、フンと鼻を鳴らし「はぁ? 何言っての? お前?」と頭の心配をしてあげる。

「マジありえねぇ。ハーピークィーン狩るとか……。朝からずっと俺らが待機してたのに橫取りするとかありえないだろ!」

盾職だろう大盾を持ったヒューマンが、大げさに聲高にんだ。すると「ばっっかじゃないの?」と、凄く黒い笑顔でキヨシが相手を貶す。

「ていうか、こういう場合ってドロップは私たちのになるんじゃないでしょうか?」

大人しそうな眼鏡をかけた巨エルフが、おっとりした口調で頭のネジが緩んだ発言を繰り出し、宗乃助が殘念なものを見る目を向け「えっ……? お主、おつむは無事でござるか?」と、優しく聞いてあげた。

「狩場は俺らが優先ですよね? 俺たちハーピークィーン狩るためにここでやってたんで……。暗黙の了解で俺たちにアイテム所有権ありますよね?」

はじめに話しかけた、男が明らかにドロップを渡せと言っている。初めから男に対応していた先生が「何、暗黙の了解って? 知らないんだけど、どこのゲームの話?」と、聞き返す。

彼らの言い分を纏めれば、後から來た私たちは狩場を彼らに明け渡し、彼らが居ない間使用した迷料としてハーピ・クィーンのドロップを渡すべきだと言っているようだ。

ばかばかしい。こうしてめてる間に狩りをしていれば済んだ話だし、態々アイテムを渡すいわれはない。

クエストアイテムさえ揃ってしまえばこんな狩場直ぐにでも空けてあげるのに本當にめんどくさい。

「めんどい」

「はぁ? あんたたちがあたし達の狩場取ったからこんなことになってるんでしょう!」

私の言葉を聞いたらしい白貓が、耳に付く五月蠅い金切り聲でキャンキャンと吼える。

「はぁ、こう言うのが居るから困るんだよね。まずこのゲームでは、狩場の優先権なんかは存在してないよ。もし狩場を確保したいのであれば、PTの半分は殘って一匹でもいいからモブを狩ってる必要がある。それから、どういう理屈でドロップを要求しているのか知らないけど、狩った者以外にアイテムの所有権はないよ。まぁ、それでも奪うって言うなら、こっちもそれ相応の対応をするけど」

先生が、常識を解いたにも拘らず彼らは、口々に狩場とアイテムは自分たちのだと主張した。

律儀に何度も教える先生を、大盾のヒューマンが突き飛ばす。

そして、私たちに一番言ってはまずい言葉を吐き出した。

「もういい。うぜぇ、譲らないなら死ねよ。お前らなんか殺してやる」

盾の言葉に向こうのPTはノリノリで、戦闘準備をはじめている。

『はぁ~、雑魚の癖に……。仕方ねーなー、やるぞ』

黒の言葉に、杖を取り出しバフをかけた。

バフが終わり陣形をとると同時にメンバー全員が武を構えた――。

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