《疑似転生記》プロローグ

何者かの手による浮上で彼は目が覚めた。目覚めてすぐに自よりも巨大な何かによって持ち上げられる覚に揺を隠せない彼。しかし聲を出そうにも思ったように聲が出てくれない。

「おぎゃああぁ! おぎゃあああ!」

自分の意思とは異なり、口から出た聲は赤ん坊の泣き聲のようなもの。かしにくいををどうにか使って周りを見渡しても赤ん坊らしき者は見えない。その時彼は自が赤ん坊となっていることを認識した。

(どういうこと?もしかしてこれが世に聞く転生なのかしら。でも私は転生前に神様にも會ってないし、前世の自分のことなんて名前すら覚えてないのに。ああ、なんだかとっても眠くなってきた…)

訳の分からないことが多過ぎて混した彼は、頭の使いすぎと泣き疲れによって眠りについてしまうのだった。

が転生を果たしてから一週間が経過した。その頃には彼もおおよその事を把握できていた。彼は前世を記憶喪失した狀態で転生してきてしまったようだ。前世の知識や経験は覚えているようであった。事実、赤ん坊である彼はこの世界の文字を読めていた。

(文字の読み書きが出來るのはありがたいけど、それなら記憶もそのまま引き継ぎたかったな。何でこんな中途半端なんだか。まあいいけど。)

この世界でメイリーと名付けられた彼は、そこそこ田舎の街で一番の商會の娘として産まれ、家族構は父、母、兄、姉が一人ずついることが分かった。この世界のことをまだ何も知らないメイリーが、生後一週間で思うことじゃないのかもしれないが

(商會の子供で上に兄と姉が要るって。將來真っ暗な予がするな。)

メイリーは軽く絶する。しかしすぐに気持ちを切り替える。

(まあなんとかなるでしょ)

「ばぶばぶ」

ここに前世の知識と経験を兼ね備えたメイリーの新たな人生が幕を開けるのだった。

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