《疑似転生記》ファンタジー世界

メイリーがハイハイやつかまり立ちが出來るようになってきたこの頃、日課である運や魔法行使を邪魔されることもなくなってきた。そんな自由化が進むメイリーの新たな日課には、父親の書斎においてのこの世界の報の収集が追加された。幸いなことにこの世界の言語は前世と同じ『日本語』であるため、読書による知識の習得に影響は出ていなかった。

(翻訳の魔法は読書中ずっと魔法を制してなきゃならんから難しいよな。よかった。)

「ばぶ」

そしてこの報収集によって、メイリーの予想通りこの世界は魔獣などの不思議生が闊歩する危険な世界であり、それに対抗するためか戦闘職の需要が高い傾向にあることがわかった。

(まさにファンタジーだ。悔やまれるのは私が戦闘経験が乏しいことか。)

「ばぶばぶ」

前世はこことは違い平和であったため、戦いというモノに疎く、経験があると言えば『模擬魔法戦闘』くらいであった。それも実戦とはほど遠いお遊びであったし、まず本的に前世で中規模以上の攻撃魔法の研究は一般人には公開されていなかったためか、メイリーの知っている魔法の殆どは日常生活で便利な魔法である。

(うーん。やっぱりこの世界の魔法をしっかり習うしかないかな。)

「あっ、メイリー様。また本読みですか。この商會の後継者でもう七歳になるお坊ちゃまでもそんなに続けて読んでられませんのに。」

「ぉあーぃぁ。」

(また來たな。この暇人め。)

メイリーの読書を邪魔しに來たのは、メイリーの転生後初魔法の被害者となった使用人レイモンドであった。第一印象から邪魔な人として悪かったレイモンドだったが、付き合いを重ねるにその印象はどんどん悪くなっていった。何故なら、レイモンドはメイリーのお世話をするという口実で、対して手間のかからないメイリーをぼーと見ているだけの実質、サボりをしているのだ。

「そんな目で見ないで下さいよ。お嬢様がもう直ぐ『穣の儀』をおけになられるもんですから、この屋敷も々と立て込んでいて休む暇も無いんですから。」

「ばぶ」

(だったら働けよ。まあちょうどいいか。)

侮蔑の目線を強めたメイリーは、覚えたての新魔法の実験臺を見つけたことにした。

(えーと『浮け』)

「ばぶ」

「さすがメイリー様。今度は浮遊魔法ですか。もう私はちょっとやそっとじゃ驚かなくなりましたよ。」

(『狙え』『矢よ』)

「ばーぶ!」

「えっ!魔法矢?てっそれはまず、」

魔法の矢は一直線にレイモンドに向かっていき、直撃するかに見えた。しかし直前で見事に停止した。

「ばぶ?」

「は、はい。參りました。仕事してきます。」

メイリーは次は當てるぞと目で脅す。それを素早く察知したレイモンドは即座に退散するのだった。

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ヘッドギアを外した芽は誇らしげな表を浮かべる。

「さすが私だな。もう浮遊魔法を習得したか。魔法矢も威力はほぼ無いけど、撃てるようになってきてるし、順調順調。とっ明日は飛行技能のテストだったな。そろそろ寢なくては。」

果に満足げな芽は、床につくのだった。

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