《疑似転生記》領主の息子

街一番の商會と街の領主、どちらが権力を持っているかと言えば勿論領主である。しかし商會の規模が大きくなってくると度々この力関係が逆転することがある。特に公共資源が乏しい街などでは顕著である。その分領主の権限が及ぶ場所がないという事であるからである。他にも例はあるがこの場合、メイリーの両親の商會がどうかという事である。

力関係が上ならば、この依頼をけるもけないも自由である。メリットがあればけるし、無ければ斷れる。力関係が微妙ならばあまりけるべきでは無い。領主の息子が良スキルを手にれてしまえば均衡が破られる可能が出てくる。

そして殘念ながらこの商會と領主の関係は領主が圧倒的に上である。そのためメリットが有ろうが無かろうが、斷ることは許されないのであった。

(まあ、商會にとっては領主とコネクションを取るまたとないチャンスだしデメリットがないか。あるのは私だけか。)

メイリーにとって、夢のファンタジーライフを送るためには領主に目を付けられるのは好ましくない気がする。それは功しようが失敗しようが同じだ。しかし商會の総意として、領主からの依頼をける方向になっている。そこに者のメイリーの意向が反映される隙間は無い。

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「覚悟を決めるしか、ないか。」

メイリーはどうにかなる方に賭けるしか無かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

領主の屋敷へは、父親とメイリー、あとは數名の使用人のみで訪れた。領主の屋敷と言ってもメイリーの屋敷とそこまでの差は無い。ただ使用人たちは圧倒されている様子であった。

通された部屋で幾何か待機していると、一人の男が男の子を連れて部屋の中にってきた。どちらも端整な顔立ちをしていて、男の子には男の面影があった。

「これはこれはステンド様。この度はご子息様の『穣の儀』おめでとうございます。」

「久しいなラカン。堅苦しい挨拶はよい。それに我のことはティーチでよいと言っておろう。それよりも本題だが、その者が噂のか。お前の言うことで無ければ流石に信じられんな。すぎる。それにスキル授與に有用な魔法など聞いたことも無かったが?」

領主のティーチ・ステンドがメイリーを見定めるようにじっと見てくる。すると父が牽制を

してくれる。

「ティーチ様。魔法の詮索はご遠慮ください。それにメイリーが魔法を使った事実は幾つもの証言がございますよ?」

「…そうだな。では早速頼むかな?」

々不満げな顔をしたティーチであったが、すぐに切り替えてメイリーに要求する。しかしメイリーはひと呼吸おいて首を橫に振る。

「領主様、は、効果の高い魔法、をとのこと、なので、出來るだけ小部屋でご子息様、と二人っきりで魔法を、かけることは可能でしょうか?」

「ほう。…それに何の意味がある?」

「上昇する運気の質が、高まり、ます。」

「そうかわかった。おい、用意しろ。」

すぐに部屋の用意がされ、領主の息子と二人っきりとなる。すると今までずっと口をつぐんでいた彼が弱々しく呟く。

「ほ、本當に僕は良いスキルが授けられるのか?」

「さあ?それは神のみぞ知ることです。」

「そ、それでは困るのだ。」

「分かっております。全力は盡くします。えーと、ご子息様。」

「僕の名前はテイルだ。覚えてないのだろう?」

「いえいえ、テイル様。しっかりと覚えておりました。」

「ふふ、お前面白いやつだな。父上の前では貓を被っておったのか?」

「さて、何のことやら。それよりそろそろ魔法をかけさせていただきます。リラックスしているようなので、運気上昇のみ行わせていただきます。」

貴族と仲良くなるきは無いメイリーは、話を切り替える。唱えるのは現在使える最上位の魔法、占星に類するモノである。

「『占星に導かれ、かの者に、福音あれ』」

テイルは淡いに包まれ気持ち良さそうな顔をするのであった。仕事を終えたメイリーは直ぐに帰りたかったが、まだ報酬を貰っていない。しかしティーチはテイルの授かるスキル次第だと言い次の日も來るように命じてきた。

そして次の日、昨日のように領主の屋敷に訪れ、同じ部屋で待っていると今日は領主のみがってきた。領主は昨日とはうって変わり真面目な表でメイリーを見つめていた。

「ティーチ様。もしかしてテイル様のスキルに満足なさらなかったのですか?」

ラカンが恐る恐る聞くとティーチはひと呼吸置いてから喋り出す。

「逆だ。テイルの授かったスキルは二つ。『統率』と『毒無効』であった。これは次期領主として最高に近いスキルである。ラカン。そしてメイリー。お前たちには心から禮を言いたい。」

そう言ってティーチは頭を下げるのだった。

(げっ、めんどうな事になったな。)

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