《疑似転生記》2度の戦い

選考會當日、16人の生徒たちがVR特別授業室に集められた。芽がやる気満々の生徒たちに混じって居心地悪そうにしていると、教師陣がってくる。

「こんにちは。今日は我が校の『魔法演舞』出場の代表選手になるべく、存分に競い合ってもらいたい。今年はここの桜宮くんが本戦出場したことにより、我が校の代表選手の枠は2名となっているので、この16名全員にチャンスがあるだろうから頑張ってくれ。」

「それでは一応、ルール説明をしておく。今回は2名まで選出することになっているので、AとBに8名ずつに別れてトーナメント形式で模擬戦闘を行い、各トーナメントの優勝者を我が校の代表にする。何か疑問は無いか?」

教師がそう言うと、3年のある生徒が桜宮を見ながら恐る恐る手を挙げる。

「トーナメント形式だと組み合わせ次第で不公平になるんじゃ無いですか?」

「そ、そうです。言っちゃ何ですが我が校で桜宮の実力は突出してます。桜宮のグループにったら…」

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「それはこちらとしても把握している。しかしこちらにも都合がある。組み合わせでもある程度、考慮したつもりだ。そこは我慢してくれとしか言えない。」

「そうですか。」

そう言うと教師は、全員にトーナメント表を配った。それを見た芽は、教師の考慮に気がつく。

(Aグループのメンバー8名中、7名が3年生。しかも確か凜が言ってた績上位者ばっか。それで、Bグループで知ってるのは先ほど言われてた桜宮先輩か。あからさまだな。こんなんやるなら端から選考會なんてやらなければいいのに。)

教師陣も桜宮が強いことは分かった上で、2枠目を績上位者で競わせる目論みなのだろう。面倒なことにより、芽の最初の相手がその桜宮であった。

(まあ面白そうだからいいが。)

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「Bグループ1回戦第1試合、桜宮雪対鹿島芽の試合を行います。」

両者が向かい合うと桜宮が芽を可哀想な者を見る目で見つめてくる。

「何ですか?桜宮先輩?」

「いえね。こんな仕組んで選考會なんてやるなら最初っからやらなければ貴方たちも葉わない幻想なんて見なくてすんだのにとね。まあ貴方は1年生だから來年再來年頑張りなさい。」

「まあそうですね。これで負けでもしたら桜宮先輩赤っ恥ですもんね。」

「なっ!…ふふ、まあそうね。あり得ないけどね。」

(意外に煽りに弱いな。まあ自信家な人らしいしな。)

「それではスタートです。」

模擬戦闘が開始した。模擬戦闘の基本ルールとして魔法以外でのダメージは加算されないと言うのがある。そのため移しながらの魔法行使に慣れていない學生は特に、遠距離からの魔法の撃ち合いになる傾向が高い。

「『風よ、我が願いに従い』」

定石通り桜宮は魔法発る。発速度に自信のある桜宮にとって模擬戦闘は有利すぎる競技なのだ。しかし、

『前へ、加速せよ。』

は定石を無視して突進してくる。そんな芽に桜宮は心嘲う。

(魔法戦闘において距離など無意味である。そんなこともわからない何てね。)

「『閃よ』」

「なっ、しまっ!」

しかし芽は突進しつつ魔法を行使出來る。予想外の事態に思わず詠唱を止めてしまう桜宮。しかも突然の閃で視覚まで奪われ、隙だらけになってしまう。

「『魔弾の手よ、複數連』」

「ちょっと待ちなさい。」

その隙に後ろに回り込んだ芽は魔弾の手で止めを刺そうとする。すると

「模擬戦闘、中斷。」

いきなり模擬戦闘が中斷する。流石の芽もこれには疑問をじる。

「どういうことです?」

「今の模擬戦闘は選考會の趣旨に反している。もう一度、やり直して下さい。」

趣旨など説明されていなかった筈だが、強制的にやり直させられる事となった。教師としても前年度本線出場者をいきなり落とすわけにはいかないための、苦の策であった。生徒からの批判も覚悟していたが、幸い芽は不満を言うことは無かった。

としても々と言いたいことはあったが、面倒そうなので止めることにして開始線に戻る。すると憎々しげに芽を見ながら桜宮が煽ってくる。

「ざ、殘念だったわね。まああんな奇襲で勝っても後で恥をかくだけよ。謝する事ね。」

「桜宮先輩って凄いんですね。」

(何という神力だ。尊敬に値するな。)

「それでは再試合、始め。」

としては別に奇襲のつもりも無かった。ただ一方的になるのは面白くないため、接近したに過ぎない。この時、観戦していた教師や生徒たち、桜宮自も気がついていなかったが、いくら威力が高い攻撃魔法を発しようとしていたと言えど、1つの魔法を発するまでに芽は2つ魔法を発しているのだ。単純な速度勝負で勝てるわけが無いのだ。

「『炎槍よ、穿て』」

「くっ、『防げ、風楯』」

桜宮は1度目の炎槍を風楯で何とか防ぐ。

「『炎槍よ、穿て』」

「ふ、『防げ』」

2度目は風楯を発する余裕も無く、完全には防ぎ切れなかった。

「『炎槍よ、穿て』」

「ふ、ふせっ!!」

3度目は防魔法を発すら出來ず直撃。桜宮の完全敗北が決定した。流石の教師陣もこの結果には何も言えない。

桜宮を降した芽は、桜宮以外に強敵がいないトーナメントで負けるわけも無く、順調に勝ち進み、學校の代表の座を勝ち取るのだった。

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