《疑似転生記》初めてのおつかい 後
メイリーが馬車の荷臺に重力軽減の魔法を、馬には定期的に疲労回復の魔法を掛けながら進んでいるため、予定よりも早く進んでいた。
(そういえば転生してから初めて街を出たな。まあそれが領主さんの依頼ってのが気になるが、冒険者になればこういう依頼で他の街や國を旅することもあるだろうし我慢するか。)
この馬車は積んでいる荷の重要さに比べて護衛が圧倒的にない。と言うかメイリーとガンルーの2人だけしかいない。客観的に見ればメイリーは3歳児であるため、ガンルー1人で馬車と荷と子を守っているように見える。
「それにしてもどうなってるんですか?」
「何がだ?」
「いくら領主さんがケチでも大事な荷を運ぶのに最人數すぎますよ。普通に考えてあり得ないですね。」
「…流石にわかるか。まあここまで來たら隠しても意味ないか。簡単に言えば、ステンド領と今から行く隣のライム領の間に中型魔獣の旋風狼が出沒したらしいんだ。奴らは大人數で移する相手に敏に反応する習があるらしい。だから大人數でなく、尚かつ數鋭で迅速に移したかった。」
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「言ってくれれば良かったのに。まあこれでライセンスの謎は解けた。」
流石にただの運搬役で貴族紋は釣り合いがとれていないとじていた。
(危険度に黙っていた後ろめたさをプラスすれば、まあトントンだろう。)
「まあこのペースなら遭遇しないで通り抜けられるだろ。」
ガンルーがこういう場合の句を言ってしまう。
「ああ、ガンルーさん。駄目だよ。そう言うのはフラグが立つっていう言うんだよ。多分もうすぐ、ほら來た。」
「なにっ!」
「ガルルルルッルル」
案の定、森の奧から猛獣のび聲とともに近づいてくる大きな影。旋風狼である。
「ほ、本當に出やがった。ケムト、逃走は?」
「無理無理、どんなに荷を軽くしても、馬と旋風狼じゃ個の能差が段違いさ。」
「やるしか無いでしょ。『風刃よ、切り裂け』」
先手必勝。メイリーが風刃を放つ。しかし風刃は旋風狼に到達する前に何かに阻まれたかのように消失する。
「あれは風楯に近い。」
「旋風狼は攻防一の風魔法を使ってくる。メイリー。アイツの魔法から馬車を守れるか?」
「さあ?相手によるよ。」
「ならアイツを倒せるか?」
「うーん…彼処に5秒間留めておいてくれたら。」
「ふ、上等だ。」
ガンルーは駆け出す。旋風狼はガンルーに向かって攻撃してこようとするが、それをさせまいとガンルーが先手を取る。
「はぁー!『飛斬』『飛斬』『飛斬』」
ガンルーの授けられたスキルの1つ『飛斬』、これは飛ぶ斬撃。言ってしまえば先ほどメイリーが使用した、風刃と類似したスキルだ。しかしこのスキルは発速度と威力は風刃を遙かに上回り、完全に風刃の上位互換なのである。
ガンルーはただの1魔法の上位互換程度か、と嘆いていたが、魔法の使えない騎士にとってこれはかなりのアドバンテージとなり得る。
「グルル、ガルルルル」
「くっ、そ、限界かよ、これで最後だ『飛斬』」
旋風狼を防だけに釘付けにしたガンルーであったが、スキルの無理な発にが耐えきれず膝をつく。しかし約束の5秒間は稼いだ。
「『覆え、風障壁』『絡みつけ、土枷』」
ガンルーが釘付けにした5秒間でメイリーは、座標を定め、2つの魔法を行使する。風障壁で旋風狼の攻撃が外に出ないようにし、土枷で行を阻害する。しかし黙ってやられる旋風狼ではなく、風魔法を用いた攻撃により徐々に風障壁を軋ませていく。
「やっぱりこの程度じゃ駄目か。なら『切り開け、土道』『湧け、水道』」
それに対応したメイリーの魔法により土の道に水が流れ込んでいく。その道の先には旋風狼がいて、びしょびしょになってしまう。
「えっ?え?メイリーさん。何を?」
「見てればわかる。『雷鳴よ、轟け』」
「ガッ!ガッルーー!」
メイリーは水の道に向かって雷撃の魔法を放つ。すると水を通して雷を浴びた旋風狼は電による衝撃で倒れたのだった。
旋風狼を倒した一行は、ガンルーの回復を待って直ぐにライムに向かう事となった。ライムに著いた一行は盛大に出迎えられ、旋風狼を1人で討伐したガンルーの名前は近隣の街や村に響き渡ることとなった。
それと同時にガンルーが1人のに頭が上がらないという噂も広がる事となった。
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