《疑似転生記》優しい

メイリーは一応、ステンド家の屋敷を一通り自由に歩き回っていよい許可がティーチより下りている。しかし例えばティーチの執務室であったり、立ち止の部屋も存在する。そのためこの屋敷に住んでいる人たちでも會ったことの無い人も多々いる。今、メイリーの目の前にいるもその1人であった。

「初めまして。メイリーちゃんよね。主人やテイルから話はいつも聞いているわ。ステンド・マリアです。よろしく。」

「こちらこそ。マリア様。」

「いいのよそんなに畏まらなくて。本當ならテイルのスキル授與の時にお禮に行かなくてはって思っていたのにそれも出來なかったんだもの。」

「いえいえ、わたしにお禮なんて不要です。依頼としてやらせていただいたに過ぎませんから。」

「ふふ、ありがとう。主人たちから聞いていた通りなのね。」

そう言って笑顔になるマリア。その後ろで控えている侍がマリアに話し掛ける。

「マリア様。」

「あ、そうだったわね。メイリーちゃん。私の侍のアリスも貴にお禮を言いたいらしいわ。」

「はぁ。そうですか?」

「初めまして。マリア様の侍長を務めさせていただいております。アリスで座います。」

出來るの雰囲気を醸し出す。メイリーは全く面識が無いので何故このからお禮を言われるのか見當がつかない。

「お禮と言うのは私の夫の事で座います。」

「夫?アリスさんのですか?」

「はい。私の夫、ガンルーの事です。この度は、旋風狼よりガンルーを守って下さり、本當にありがとう座います。」

と言ってアリスは深々と頭を下げる。

しかしメイリーとしてはお禮など耳にってこない。驚いたことに、あのガンルーにこんな人妻がいたのだ。

(よく考えればあの人、この領地の筆頭騎士だったな。あんまり印象が良くなかったから忘れていた。)

ふと冷靜になってメイリーが大分失禮なことを考えていると、もう一度、アリスが頭を下げる。

「えっと。」

「それと夫がメイリー様の功績を奪ってしまったこと、深くお詫び申し上げます。」

謝罪。それはティーチやガンルーから何度もされた案件であった。旋風狼はここら辺の田舎では大規模な討伐隊を組むほどの大事である。そんな旋風狼を1人で倒したと言う名聲は、周辺地域からステンド領が一目置かれるに十分な功績であった。そのため討伐者はガンルーのみと報告したのだった。

「ああ、そのことですか。アレならもう散々謝られたのでいいですよ。報酬も貰ってますし。」

「し、しかし。」

「むしろ、私が討伐に參加したって言っても信じてもらえないでしょうし、ありがたいですよ。それに私は將來、冒険者になりますからあの程度の魔獣、これから何頭も倒しますから、1匹くらい減っても問題ありません。」

「そうですか。主人から聞いた通りの、ふふふ。」

「本當ね。メイリーちゃんはとっても優しいのね。」

アリスが笑い出す。するとマリアもつられるように笑みを浮かべる。メイリーとしては半分本気で言っているのだが、めていると捉えられたようで2人から優しい認定されるのだった。

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