決勝戦は予選のレースのタイムで順位をつけ、それによって均等になるように4人ずつのグループに分けてのバトルロイヤルである。予選をぶっちぎりの1位で通過した芽は予選の8位、9位、そして16位と戦う事となる。

「芽、琴音先輩。どうする。同校対決だよ。」

そう、予選最下位は繰り上げでの決勝進出となった琴音だ。『魔法演舞』本戦へ出場するためには、琴音を倒さなくてはいけないのだ。

「どうするもこうするも無いよね。そんな事を気にしてる余裕はないよ。芽ちゃんの方が格上なんだから。でも手のを知ってるからそう簡単にはやられないつもり、まあそれは芽ちゃんも同じだけど。」

同じ高校だとかを気にしている様子はない。琴音の言う通り両者ともにある程度の人となりを知っているため、初見の相手よりはやりやすいだろう。しかし學校の選考會を割と簡単に突破した芽と違い、それなりに接戦で勝ち上がっていた琴音は、ある程度の傾向を芽に見せてしまっている。

「だって芽。」

「はぁんぇあって？」

「もうちゃんと聞いてよ。それと何食べてるの！さっき晝食食べてたでしょ。」

「んっ、これは間食、お菓子だよ。お腹すいちゃって。」

「もう。」

「ふふ、隨分余裕そうだね。芽ちゃん。」

「まあ全員知らない人より気が楽ですね。」

芽としては飛行技能と多の魔法程度しか知らない選手の中で、3人の、1人の得意魔法などを知っている事で予想していたよりも楽になったと考えていた。

「その余裕を後悔させてあげるから。」

「楽しみにしてます。」

しかしそう単純では無い事を芽は直ぐに思い知ることになる。

芽は予選に続き決勝でも第1グループに振り分けられた。あまり張などをしない芽にとって早く終わる第1試合は有難い。意気揚々と決勝のVRフィールドにる。フィールドの大きさは直徑30メートル程の円形であり、魔法戦闘をするにはし小さめな印象であった。予選のように『箒』に乗って飛び回るスペースは無さそうだ。

（1対1じゃないから、攻撃に集中しすぎる訳にはいかないか。予選のじだと序盤は様子見になりそうかな？いや、柏木先輩がいるのか。）

想定しづらいため、芽は相手の出方を伺うことにする。芽らしく無い行である。

「それでは決勝戦、第1グループの試合を行います。」

（なんか嫌な予がするんだよな。）

「3、2、1、レディーゴー！」

開始の合図がかかる。芽を除く3名は一斉に魔法を唱えだす。どうやら全員攻撃魔法のようなので、芽は無難に防魔法を発しようとして、止める。悪い予の正が判明したからだ。

「めんどい、『魔力を纏いて、我、戦え』」

芽が選択したの強化魔法。芽は魔法を防ぐので無く躱す算段なのだ。何故なら3人とも攻撃対象を芽にしていたからだ。芽は予想外の3方向からの攻撃をなんとか躱す

（全員敵の狀態で、柏木先輩は兎も角、殘り2人も私を狙うなんて。）

芽には分からなかったが観客や他の選手からすれば當然である。先の予選で他の選手が妨害電波として、多の攻撃魔法を使ったのに対して、芽が使用したのはこのフィールドで使い難い飛行魔法と空間魔法である。またそれだけで芽は2位以下に大差をつけている。そのため芽の実力が未知數すぎる。そのため1対1になったら勝てない可能が高い芽を序盤に狙うのは至極當然と言っていい。

しかし自分がそんなに目立っていた自覚の薄い芽には何故集中砲火されているのか分からない。

（だが狙われていると分かれば対策の立てようはある。）

芽はもう一度3方向から魔法が放たれるのを見計らい、魔法を唱える。

「『座標よ、換われ』」

空間魔法、座標換を発し右方の選手と位置をれ替える。可哀想な彼は自の魔法も含む3つの魔法に突然曬されて、防ぐことも出來ず直撃し失格となる。

「後、2人。『風刃よ、切り裂け』」

対面の選手に風刃を放つ芽。それを何とか防ぐがそう長くは保たないだろう。しかし反撃しようにも先ほどの魔法を警戒して、無闇に攻撃は出來ない。しかし1対1になれば勝ち目は無いと判斷した琴音が移魔法を使って接近してくる。

「いくよ芽ちゃん。『閃よ』」

それは芽が選考で桜宮に最初に行った戦法であった。しかしそれは前提條件が間違っていた。

「それは奇襲なら効果がありますけど、ねっ。」

魔法で知覚能力も強化されている芽ならば、閃が起きる瞬間に目を閉じて、そのまま回避することも可能なのだ。

「まだ！」

「『上へ』」

抵抗しようとする琴音の視界が急に変わる。空間魔法にて転移させられたのだ。

「『炎槍よ、敵を穿て』」

いきなりの狀況変化に適応できず、無防備な狀態で炎槍を食らった琴音も失格。殘った1人も殘念ながら1対1でどうにか出來る選手でなく、芽に量差でごり押しされ失格。

終わってみれば芽の圧勝により『魔法演舞』本戦出場が決定するのだった。