《疑似転生記》VS.雷虎 中

雷虎と暴風狼がどちらが強いかと言われれば、雷虎で間違いないが、メイリーにとってどちらがやり難いかと言えばどちらとも言えない。暴風狼は風魔法によって攻撃も防もする。それに比べて雷虎は軀に雷を纏い強化をして接近戦をこなしつつ、雷魔法で遠距離戦も行えるのだが、防魔法は使ってこず攻撃は能力に任せて回避するだけと言う力業である。そのため攻撃が全く通用しないと言う訳では無いようだ。

ただ、やり難くないのと勝負に勝てるのはまた別であるが。

「ガァーヴ、ガァー」

「くっ!『風楯よ』」

(速くて防ぎ切れないし、ダメージ負うと電撃で一瞬、行停止にされるし。強いな。)

強化の魔法を何個か重ねているので何とか雷虎のスピードに置いてかれずに済んでいるが、それでも防するのがやっとで、反撃できない。更にもう何度か攻撃を食らっており、かなり劣勢である。

「『土石壁よ、』」

「ガァーウ?」

しかしメイリーも、ただ何も出來ずに防戦一方と言う訳ではない。雷虎が自由にき回れないように、防をしながら地形を有利に造り変えていく。しかしどうしても手が足りない。そのため高位の魔法が発できず、威力不足となってしまう。

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(雷魔法は何とか耐えられるくらいの痛みだが、直接攻撃の打撃、斬撃とそれに付隨し行停止にされるのが無ければ、反撃も出來るのに。)

相手は大技を使わずにこのままじわじわ追い詰めていけば勝てる狀況のため、決定的な隙でもなければ最高威力の攻撃などしてこないだろう。そのため暴風狼戦で使ったカウンターも使えない。メイリーの低威力の魔法では大したダメージは與えられないし、高威力の魔法は、発準備中にやられるか、回避されるのがオチだ。しかもここはが屆きにくい森の中。もう殆ど日が沈んで來たせいもありほぼ夜である。夜行である雷虎がどんどん有利なフィールドになっていってしまう。不利な狀況ばかりで思考が鈍くなってしまっていたようだ。そのため、

「ガァーウァーー!」

「まずっ!がぁぁ!」

どうすればいいかに気を取られすぎて、目の前の雷虎を疎かにしてしまったメイリーに、雷虎の『雷轟』が飛んでくる。部から焼けるような痛みをじ、一瞬完全に意識が飛ぶ。

なんとか持ち直して雷虎を見ると、完全に攻撃勢を整えていた。

(ヤバい。殺られる。)

命の危機をじたメイリーは回避行をとろうとする。しかしここで急事態が起こっていることに気づく。かないのだ。

(こんな時に、どうする、どうする、どうする?)

絶命のピンチ。そんなメイリーの心など雷虎はお構い無しに高速で突進してくる。雷を纏った前足で切り裂く積もりなのだろう。

「ガァーウァーー!」

(聲が出ないから詠唱も、頼む『閃よ』)

メイリーの願いに呼応したのか、無詠唱での魔法の発功し、閃が辺りを覆った。雷を纏って多明るいとはいえ、辺りは真っ暗だ。しかも夜行の魔獣。眩しさで一瞬、平衡覚すら狂う。そのためまともに攻撃など出來る筈もなくただの當たりとなる。それでも七歳のには堪えるが、何とか生存していた。

「ガァヴ、ガァーヴ!」

「怒ってるな。こっちも同じくらい怒ってるよ。だから決めてあげる。次の攻撃で。暴風狼と戦ったときは出來なかった奧の手で。」

悠長に勝負していたら危ないことは、に染みてわかったメイリーは、奧の手で勝負をかけることに決めた。

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