《疑似転生記》初心者迷宮 前

今日のメイリーは組合の依頼とは関係なく、趣味として迷宮探索に來ていた。普通の場所に出現する魔獣と迷宮に出現する魔獣に差はないが、迷宮の魔獣は、よほど放置され『氾濫』が起きない限り迷宮から出てくる事はないため、討伐依頼が出されない。ただ、迷宮にしか出ないような珍しい魔獣の素材や、魔獣を倒すと時々現れるドロップアイテム目當てに、様々な冒険者が迷宮に潛るのだった。

(って言ってもDランク以下用達の初心者迷宮だから大したは出てこないだろうけどね。まあ折角だし、楽しませてもらおう。)

本來、迷宮探索はパーティーで役割分擔をする必要がある。特に罠を発見し解除する役は必要不可欠である。しかしメイリーは今のところソロで活しており、1人で複數の役割をこなさなくてはならない。ただ、メイリーには『鑑定眼』と空間把握などの知魔法を持っているため、本職よりも見つけるのが上手い可能すらあった。

(まあこの空間把握なら近付いてくる魔獣とかも知できるから楽だな。)

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「『風刃よ、切り裂け』」

今回は素材目當て出はないのでそこまで気にすることなく、魔獣を倒していく。本當ならばもっと高位の迷宮に行きたかったのだが、メイリーが初探索であることを知っていたレレナが、

「普通の魔獣討伐と迷宮探索は全くの別です。メイリーさんの実力なら予想外の事態が起こっても対処できるかもしれません。しかし萬全を期すため、一度初心者迷宮に行って見てください。」

と説得されてしまったのだ。レレナの助言を無下にも出來ず、こうして初心者迷宮に來ていると言う訳であった。レレナとしては初心者迷宮と言ってもそれなりに階層はあるし、しっかりと迷宮主もいる。迷宮攻略にはそれなりに時間がかかるだろうという思であった。しかしメイリーは空間把握と『地図化』を併用してサクサクと探索を進めていった。全15階層あるうちの10階層まで一時間もかからずに到達したメイリーは、特に疲れた様子も見せずにどんどん進んでいく。

出てくる魔獣は小型ばかり、今のところドロップアイテムは無いがそっちにも期待はできない。このペースなら後一時間足らずで踏破出來るだろうと考えられるので、さっさと進もうと考えた矢先、メイリーの歩が止まる。把握した空間に違和があったのだ。

(空間把握で得た報にはこの先、道があるはずなのに、『地図化』の地図では行き止まりになってる。調べてみるか。)

違和を覚えた地點に行ってみると、確かに行き止まりであった。しかしメイリーの空間把握がこの先の道を知していた。

(レレナさんは初心者迷宮に隠しルートがあるなんて言って無かったのに。面白くなってきたな。)

隠しルートなのでおそらく、これを開けるギミックがあると思われるが、流石にメイリーでもそれを探すのは至難の技だ。なおかつめんどくさい。そのため用いる手段はただ1つ、

「『焔の槍よ、敵を穿て』」

壁はそこまで厚くない。メイリーは回りに誰もいないことを確認しつつ、焔槍を壁に撃ち込む。すると壁に綺麗にが開き、道が通れるようになった。

「『土壁よ、塞げ』」

途中で邪魔がらないようにメイリーが通った後、土壁で塞いでおく。念のため最初よりも厚くしておいた。

「よし、それじゃあ出発よ」

そうしてメイリーは未知なるルートを進んでいくのだった。

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