《疑似転生記》魔樹討伐 中

メイリーから見た『悠久の風』の評価は、今のところ悪くは無いと言ったところであった。乗合馬車を降りてトレントの生えている地點までの道で2度ほど小型魔獣數匹と戦闘になったが、しっかりと連攜が取れており個々の実力もそれなりに高いことが窺えた。トレントならば1本2本、危なげなく対処できるだろう。

(今回はトレントの素材の採取ではなく討伐。しかも5以上って指定がある。トレントが本で見た通りなら面倒なことになりそうだけど)

メイリーの今回の役割は補佐であるため、彼らから助けを求められれば助けたり、助言をしたりするが基本的には何かあったときの命綱的な役回りであるため、トレント討伐という依頼のレベルを逸しない限りは何もしないでくれと言うのが、組合からの依頼であった。

そのため小型魔獣との戦闘にも參加していなかったのだが、それに明らかに腹を立てている様子の前衛組の3人がいた。彼らも依頼の構造は理解してるのだが、底にメイリーがなぜBランクなんだという思いがあるためメイリーの行全てが批判材料となってしまうのだろう。

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「このパーティーには回復役はいないの?」

「はい。なのでいつも組合で売られている回復薬とかは常備してるんです」

「私が回復魔法使えればそれが良いんですけど、回復魔法を覚えてる人ってなくて、覚えてても教會所屬が殆どだから教えてくれなくて。メイリーちゃんは回復はどうしてるの?」

「私はスキルの関係で別に回復は必要なかったりするけど、回復魔法は何個か知ってるから覚えたいなら教えることはできる。私の暇な時なら」

「ほんと!ありがとう」

それとは対照的に魔法使いのフランと弓使いのイアはメイリーに果敢に話し掛けてくる。そんな自分の仲間が仲良くしているのが腹がたったのか重戦士のドーグが噛みついてくる。

「魔獣が出るこんな場所でお喋りなんてしてんじゃねーよ。聲に反応して魔獣が寄ってきたらどうすんだ!Bランクのくせにそんな初歩的なこともわかんないのかよ!」

妬みからくる発言であるのでフランとイアは反論したいが、ドーグの言っていることは正しいのでなにも言い返せない。するとメイリーがドーグの言葉を変な解釈をしてしまう。

「現在、私たちの聲の屆く範囲に魔獣はいないよ。魔獣の生息域にって張するのは分かるけど、あまりし過ぎると本番の前に疲れてしまうと思う」

「だ、誰が…」

妙に先輩風を吹かしたメイリーの言葉をけて々と言いたいことがあるドーグだが上手く言葉がでない。魔獣がいないことなんか分かる筈が無いと言いたいところだが、それは自知能力が拙いと言っているに等しい。そのため録な反論文句も出てこず黙るのだった。その後、幾度かの衝突はあったものの殆どが、嫉妬心だと理解していないメイリーにけ流されるのであった。

そんなじで々と有りつつも漸くトレントの生息域に到達した一行は、トレントを探し始める。トレントは森の中で他の樹木に擬態しているため見つけるのが難しい魔とされているため、捜索は難航するだろうと考えられていた。しかし、

「おい!トレントがいた」

そんな予想とは裏腹に修行士/モンクのググンが比較的早くトレントを見つける。

「あのトレント、擬態してないな」

「おお、チャンスだ」

「行くぞ!」

前衛3人組が擬態していないトレントが擬態して他と紛れる前にと強襲する。それを後衛2人は援護する構えだ。それはメイリーからしたら考えられない行であった。

「あいつらは何で突っ込んだ!」

「え?だってトレントは周囲の木々に擬態する魔だから擬態前のトレントはチャンスだって先輩から聞いて」

「その知識は一部間違っている。その先輩は後衛職ですよね?」

トレントには2つの行パターンが存在する。1つは擬態を駆使しての奇襲。これは主にトレントが1であるときに行う。そしてもう1つは1が擬態を解いている場合。これは群でいる場合に多い行である。

案の定、擬態を解いていたトレントに向かっていたアレンとググンが、突然枝に橫薙ぎに払われ吹き飛ばされる。

「アレン!ググン!…くっ」

し遅れていたドーグも、3方向からの枝によりじわじわとダメージを負い始める。おそらく先輩冒険者からの報でいうチャンスであると言うのは、後衛職が遠距離から強襲するのに適していると言う意味なのだろう。前衛が突っ込めば今のようにタコ毆りにあうのがオチだ。

ただ出鼻を挫かれたとは言え『悠久の風』ならば、ここからでも立て直せるだろうと考え手を出さない積もりであった。しかしメイリーの空間把握が3のトレントの後ろにいる存在を捉える。

「これはトレントじゃない。…多分上位種『老魔樹/エルダートレント』か。これは無理かな?」

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