《疑似転生記》魔樹討伐 後

「これはトレントじゃない。…多分上位種『老魔樹/エルダートレント』か。これは無理かな?」

フランとイアの後ろでそんな呟きが聞こえた。エルダートレントとはトレントよりも強靭な幹を持ち、擬態のみならず幻覚などで敵を欺き、加えて狀態異常を付與して戦うなど厄介さが格段に上がった魔である。ランクにしてCランクからBランク。トレントが3いる狀況下では絶的と言える。

そのため救いを求めて2人がメイリーに注目すると、いつの間にか魔法の発準備を整えたメイリーが2人に指示を出す。

「前のトレント3は任せる。トレントは遠距離から攻めればそこまで強い相手じゃないから前衛トリオをしっかり活用して」

「メイリーちゃんはもしかして…」

「エルダートレントをやる」

「まって1人じゃ…」

イアが一緒に戦おうと提案する前にメイリーの姿が消え失せる。これが噂の空間魔法なのだろう。空間魔法を使えるだけで國や大貴族から取り立てられるほどに、その価値と使用難易度は高い。それを間近で拝見できたフランとイアはメイリーへの心配を他所に追いやり、自分たちの仕事に集中する。

「アレン、ググン。ドーグがトレントの攻撃を耐えてる間に攻撃して!ドーグも直に耐えきれなくなっちゃうわ!」

「私たちが援護撃するから早く!」

前衛トリオはエルダートレントに気が付いていない様子なので、それにはれずに指示を出す。不意打ちのダメージで何時もよりもきが悪いアレンとググンのきを更に悪くしないように配慮した結果である。

「本當はダメだけど急事態だし『火の三矢よ、穿て』」

トレントの弱點屬の火や炎は、本來ならトレントに向けて放つのはNGとされている。これはトレントの生息域の多くが森の中であり、下手をすれば火事となりうるため原則として定められている。とは言えこれはマナーとしての側面が強く、特に新人はこれを守らないケースが多いのだが。

「おいイア、もっと矢數を増やせ。押しきるぞ!それとドーグ。打たれ過ぎだ。タンク役を代われ!」

「いや、大丈夫だ。問題ない。もう癒えた」

「癒えたってお前…まさか!」

「ああ、あいつだよ。わかんないけど奧で何かと戦ってるみたいだが、それでも俺をサポートする余裕すらあるなんてな」

自分を支えていた自信。誰にも負けないという自負が崩れ去る気がする。通過點でしかなかったトレント討伐にすら苦戦して、もしもメイリーの支援が無かったらこのまま死ぬか、最悪でも重大な怪我を負っていた可能すらあった。

「くそが。さっさと片付けるぞ!」

「おお!」

「そうだな」

しかし見下していたメイリーは、1人で戦闘をこなしつつこちらを援護する余裕がある。意識してみればドーグだけでなく、アレンやググンも先ほどけた筈のダメージが抜けていた。これで彼の強さを認めないのであればそれは彼が愚者である証明となってしまうだろう。

気持ちをれ直した彼らがトレント3を倒すのはそれから10分も掛からなかった。

「これで最後だ!」

「やっとか」

「ふふ、なんとかなったわね。アレン、ドーグ、ググン。あんまり考えなしに突っ走らないでよ!」

「けっ。分かってるよ」

「まあ。無事で何より。それよりもメイリーちゃんが…」

「おお、終わってるんだ。思ったより早かったね」

それと同時にエルダートレントの亡骸を浮かせながらメイリーが戻ってきた。エルダートレントの亡骸からでも発せられる強者のオーラに、再度『悠久の風』は自分たちとメイリーの力の差を思いしるのだった。

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