《疑似転生記》煩わしい出來事

8月も下旬に突して、そろそろ夏休みも終わりに近づいてきた頃、芽依は凜の家で夏休みの宿題をやっていた。と言っても殘念ながら今やっているのは芽依の宿題ではなく、凜のモノであるが。何故こんな事になっているかと言えば全部、先の『魔法演舞』のせいであった。今年の『魔法演舞』はレベルがどうこうという話とはまた別であるが、マイナーな魔法や希な魔法の使い手が多く出場したこともあり、玄人な人々の間で大いに盛り上がった大會であった。

そしてその優勝者である芽依は、空間魔法や『マジックジャマー』などを披してしまったため注目を集めてしまった。しかも芽依の家が何故か特定されてしまったようで、連日記者の人たちが押し掛けてくる騒ぎとなった。

「芽依もさっさとインタビューされちゃえば良かったんじゃないの?変に逃げるから追われちゃうんだよ」

「最初に來たときに話すことは無いってちゃんと意思表明はした」

「それじゃあ駄目だよ。まったく」

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凜は呆れた様子で呟く。そんなことを言われて引き下がるような記者ならわざわざ芽依の家まで來ないだろう。そんなことだからこっそり荷を持って凜の家に數日間泊まるはめになっているのだ。

「そんな狀態でもゲーム機だけは持ってくることを忘れないのは芽依らしいけど。というかゲーム機以外でろくなもの持ってきてないじゃん。せめて著替えくらい持ってくるとかさ」

「…著替えなんて凜のを使えばいい」

「それは私が言う臺詞だからね!」

かなり楽観的に考えていた芽依であったが、この追っかけは殘念ながら夏休みが終わる直前くらいまで続き、殘りの夏休み、芽依は凜の家でゲーム三昧の日々を過ごすことになるのだった。

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メイリーも王都の冒険者組合に來てから1年以上が過ぎ、數ヶ月ほど前から始めた回復魔法教室によって、特にCランクよりも下の冒険者との流が増えて來ていた。それによりパーティーやクランの勧が増えて煩わしさが増したが、それなりに住みやすくなっていた。ただ守りをする依頼が増えたのが目下の悩みであった。

「今回の依頼はメイリーさんの他にD、Cランクパーティー5組でこなしていただきます」

「またですか」

「Aランク昇格にはこういう依頼で他の冒険者とも協調できることを示さないといけませんから。それに今回は迷宮の『氾濫』からの村の防衛ですので、流石にメイリーさん1人だと取りこぼしが出てしまいますから」

「はぁ。仕方がないか」

強大な敵が1匹ならば、メイリーだけでも依頼を完遂する事ができるだろう。しかし敵が大勢でしかも守らなければならない存在があるとなると、1人では手が足りないだろう。渋々ながら納得したメイリーは、依頼の詳細を聞く。

「氾濫した迷宮は『下水処理場』基本的に小型の魔獣や魔しか生息していない迷宮です。しかしそれらのほとんどが毒や瘴気などで攻撃をしてくるため、それらの対策が十分で無い者では踏破は愚か、踏みれて數分で衰弱してしまうと言われる迷宮です。そこに行ってもあまり旨味が無いので冒険者が寄り付かない迷宮でもあります」

「でしょうね。厄介な上に小型の魔獣しか出ないんじゃ」

「まあそこでしか生息していない薬草があったり、そこの魔獣の素材が薬の材料になったりと國としては良い迷宮ではあるんですけど。まあ冒険者は行かないので、王都とキーリエ領が合同で間引きの依頼を出していたのですが」

「それなのに氾濫が起きたんですか?」

「ええ、氾濫が起きた原因はおそらく『不吉な鼠』が出現したことです。既に氾濫の大群の中で數匹確認できているようです!」

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