《疑似転生記》不吉な鼠の氾濫 Ⅰ

『不吉な鼠』と言うのは昔から知られていた鼠の、それも『下水処理場』などで見られる鼠たちの主と見られる個の渾名である。鼠と一纏めに呼んでも種類が違えば別の生きである。そのため本來なら群れをなすことはあり得ないのだが、この『不吉な鼠』がいる場合に限り別々の鼠が群れをなし、更にその群れの數は通常の群れよりも莫大な規模となる。

「今回の群れには『毒牙鼠』『死瘴鼠』『疫病鼠』などから構されてます。繁が普段あまり人が立ち行かない迷宮で行われたこともあり、群れの総數はかなりの數に上ると推測されます」

長年の謎であった『不吉な鼠』の群れであったが、近年その謎も解明され出した。『不吉な鼠』の能力は主に2つ。1つは鼠を指揮する何らかのスキルを保持しているという事。そしてもう1つは全ての鼠と繁することが可能で、『不吉な鼠』の子は普通よりも妊娠から出産、そしてになるまでの速度が數倍であることが分かっている。

そのため『不吉な鼠』がいる場合、群れの規模は大きくなり、多種の鼠が共存しているのであった。ただそんな能力を持っている『不吉な鼠』だが、その戦闘能力は魔獣の中でも最下位に近いほど弱く群れを駆逐する上でまず『不吉な鼠』から殺すのが定石となっている。

「1匹1匹はさほど強く無いのですが、毒や呪い、病に気をつけて下さい。ご武運をお祈りしています」

「わかりました気を付けます」

メイリーの『自回復』によって即死級の毒や呪いで無ければおそらく平気だろうと推測できる。流石に今回の依頼でそれらを使ってくる敵がいるとは考えにくい。

(でも私が即死したとして、『自回復』が機能したらどうなるんだろう?確か即死毒をけても、そこから數分の間に解毒して回復魔法で回復させたら蘇生可能って何かの本で見た気がするし…わからないな。あっでも呪いが裝備に掛からないように気を付けないとな)

即死毒は考えすぎでも呪いによる裝備の弱化は起こり得る事態であるため、警戒しなければならない。呪いを解除するには教會のの神聖魔法を使用するか、特殊なアイテムを使う他ない。現在教會とブラックリストりされてる可能すらあるメイリーが、呪いを解除するため訪れても素直に解除してくれるかわからないので、呪いに掛けられないようく方が無難であった。

(この暴風狼と雷虎の裝備は思い出深いから捨てることにならないようにしないと)

戦で呪いに気を付けるとなると難易度は跳ね上がるが、まあメイリーならばなんとかなるであろう。

そう決意し組合を出ると『悠久の風』の魔法使い、フランが聲を掛けてきた。

「メイリーちゃん。メイリーちゃんも鼠の氾濫の依頼けるんだよね?」

「私も、ってことは『悠久の風』もですか?」

「うん!私たちだけじゃなくて回復魔法の教室に參加していたメンバー所屬のパーティーが結構いるはずだよ。今回の魔獣には回復魔法使いが必須らしいから」

「はぁ。D、Cランクのパーティーって彼らだったんだ」

見知った面子に安堵すれば良いのか、自分がしっかりしなければならないと不安になれば良いのかわからないが、呪いをけないようにするというメイリーの決意の難易度が高まったことだけは事実であった。

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