《疑似転生記》不吉な鼠の氾濫 Ⅳ

全員が作戦通りの配置に著いた。メイリーは群れを導する方向の反対側にポジショニングしていた。一番火力が出せるメイリーが反対側から初撃を放つことで、拠點の方向に導する狙いである。その後は転移をしながら群れの進路を微調整する予定である。

作戦決行のタイミングはメイリーが魔法を放ったらとなっている。本來なら3方向から同時に放つのが好ましいのだが、意志疎通を図る方法が乏しいのでこの合図となった。

(前世で電話ってのがあったし、それを魔法で再現できればいいんだけど、多分あれって私だけができるようになっても使えないだろうしな)

メイリーの前世は此方よりも技力が発達していたせいもあり、機械で賄えることの魔法化は進んでおらず、そのためメイリーもそのような魔法は覚えていないのだった。

(まあ無いねだりしても仕方ないし始めよう。いつもは魔法の見映えなんて気にしないけど今回は士気にも関わるし派手なのを選ぶか。となると…)

いつもは見た目には拘らず威力重視のメイリーであるが、パーティー戦となると話は別である。派手な攻撃は全の士気の向上に繋がる。

「ならあれがいいかな?イメージは『神の炎剣/レヴァテイン』が空から振り下ろされるイメージでっと」

ただの炎剣では弱々しかったので、今回のイメージは壯大にしたメイリーは魔力を制しつつイメージを固める。そして

「『天より降り注ぐ熱線よ、集約し、振り下ろせ、神の炎剣/レヴテイン』」

學魔法の太レーザーと炎魔法を組み合わせた極大魔法。それは確かに天から神剣が振り下ろさせているように見える景であった。凄まじい攻撃。これを見れば士気が上がることは間違いないだろう。しかし1つ誤算もあった。

「あっやばい。強すぎた」

イメージを壯大にしすぎたため、メイリーが保有する魔力の半分以上を費やして発したこの極大魔法の規模は、想定の遙か上をいってしまった。この神剣は群れの鼠のおよそ9割を飲み込み、余波だけで殘りの1割の半數を焼いた。

メイリーの魔法を合図に放たれる筈であった左右からの追撃も無く、ただ殘された鼠たちが一目散にメイリーとは逆側に逃げていくだけであった。

結局、殘りの鼠たちは拠點で待ち構えていた戦力が掃討してしまった。逃げ延びたといっても余波をけ瀕死の狀態の鼠たちで、その上指揮である『不吉な鼠』は全員神剣に呑まれて死んでいたので、前衛組がダメージを負うこともなかった。この作戦で唯一の負傷者は『神の炎剣/レヴテイン』の余波の熱風で吹き飛ばされた左右の魔法使い數名のみであった。

「想定の何倍も被害を減らした立役者に言う臺詞では無いのかもしれませんが、あえて言わせていただきますよ。もうし加減はできなかったのですか?」

「うーん、今ならできるかもしれないけど、あの時はし難しかった。初めてで勝手が分からないから」

「はぁ。あんな極大魔法を使えるなら作戦の段階で言っておいて下さい!」

「一番強い魔法で攻撃するとは言った筈…」

「それだけ聞いてあれを想像する人がいますか!」

殘念ながら弁明の余地はなく、メイリーはメンバーからの説教をけることとなる。そして彼たちから新魔法『神の炎剣/レヴテイン』の封印を約束させられるのであった。

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