《疑似転生記》魔力庫と魔力爐

『箒』無しでの魔法行使。口で言うのは簡単でも実際にやるとなると難しい。芽依であっても十數年間の『箒』での魔法行使という土臺があるのだ。ただゲーム世界では『箒』を使わずにしているので覚さえ摑めれば何とかなるかもしれない。

(まあこの世界に魔力があるという前提の話だけど)

また魔力があることを前提にしても、おそらく芽依の魔力量は雀の涙よりもないだろう。これこそ『箒』を使っていた弊害なのだが、この問題を解決するには魔力を増やさなくてはならない。そのための方法が2つ存在する。

(ここから魔力を鍛えるトレーニングを始める方法。ただもしこっちの世界では魔力のびが悪かったり殆ど育たない可能もある。だから今回はもう1つを採用しよう)

それがゲーム世界からの魔法の逆輸であった。今までゲーム世界の自分を強化するために現実世界で魔法を勉強してきた芽依であったが、今回は魔力を増やすべくゲーム世界の魔法を現実世界で実現するつもりであった。

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その候補が『魔力庫』と『魔力爐』である。『魔力庫』は魔力を貯めておき必要な時に取り出す魔法であり、『魔力爐』は魔力を燃料として莫大な量の魔力を生産するという、ある種の永久機関的な魔法なのだが、扱いが難しく下手をすると魔力枯渇と魔力過多を繰り返す地獄のような魔法なため、ゲーム世界で実際に使用している猛者はない。ゲームのメイリーも魔力がない頃お世話になった魔法だが、何度か酷い目にあっていた。

(ただ今の『私』は魔力量が多いから『魔力爐』の発や制で魔力枯渇することは無さそうだし、『魔力庫』と併用すればかなり有効な手段になるかも)

やはりゲーム脳な芽依はゲーム戦力の増強の話題にかなり嬉しそうになるが、現実の芽依はおそらく魔力が乏しく、尚且つ様々な事が異なるゲーム世界の魔法を現実世界で実現するということの難易度を踏まえれば、いくら芽依が才能かなであっても先が長い話なのである。

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この頃、近接戦闘ばかり行っていたメイリーだが、高難易度の依頼をこなすにはまだまだ不足していることが多いので、今回は魔法メインで戦い、さっさと依頼を終え組合に戻ってきていた。

(やっぱり魔法を使うと早い。けど近接戦闘もこれからは必須だ。あとは高ランク冒険者として過ごすならもっと上位の回復魔法もできた方がいい。依頼をこなせたけどメンバーの何人かは死亡じゃカッコ悪い。…そういえばこの前思い付いた『魔力庫』と『魔力爐』の複合魔法も試したいな)

メイリーが今後の予定を決めつつ組合にっていく。すると何故かメイリーを注目している冒険者たちが多くいた。王都に來たばかりであればわからなくもないが、今ではメイリーは王都で活する冒険者たちに認知されている。その容姿や年齢に伴わない実力から日頃注目を浴びるメイリーでも、ここまで見られたのは王都に來た當初以來であった。

メイリーが訝しんでいると、一人の男が近づいてくる。メイリーに注目していた者たちは、同時にその男にも注目をしているようであった。

「おお、貴方が噂の。聖なる息吹をじます」

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