激に任せて斬りかかったカルトだが、その最中にはすぐに自の失敗を悟っていた。護衛という自の役割を越えた行為であるし、ここは多の無理が通る教會ではない。カルトの現狀で最悪なのはメイリーに致命傷を與えること。次點で今すぐ止まり謝罪することである。致命傷を與えることは言わずもがなであるが、中途半端に斬りかかった上で謝罪をしてしまえば、こちらの要求を斷る口実を與えてしまう。この現狀ではこの暴挙を脅しに使い渉を有利に進めるしかない。

(完全に魔法職。ならこの攻撃に反応できないか、できても距離を取る。ならばこのまま斬りかかりかなければ寸止め、距離を取ったら薄皮くらいは許容でおもいっきり)

カルトは覚悟を決める。しかしここで思いも寄らない事態となる。メイリーはしっかりと反応をした。それだけなら想定だが彼は距離を取るどころか距離を詰めてきたのだ。一番あり得ない行に思わず剣を握る手に力がる。

(まずい！)

もともと寸止めしようとしていた剣の軌道上にメイリーが來る。そこに余計な力がってしまったため寸止めなどできる筈もなく、メイリーの肩を深々と斬り込む。組合は騒然としだす。そのような事態に慣れていないリルーシュなどは顔面蒼白である。

それに焦ったカルトは直ぐに剣を抜こうとする。しかしその瞬間、メイリーが左手で剣を摑む。理解不能な出來事の連続で思考を停止しかけるカルト。するとメイリーが殘った右手をカルトに向け詠唱する。

「『炎槍よ、穿て』」

超至近距離で放たれた炎槍。しかも持っている剣を捕まれてけない狀態では避けれない。普段のカルトなら手を向けられ段階で魔法を警戒して剣を離して回避行を取っただろう。しかし混中のカルトにその判斷はできない。そのためメイリーが斬られたのと同じ右肩が焼き抉られたのだ。

「あ゛ぁあぁぁ」

カルトが堪らずび聲を上げる。辺りは悲鳴が飛びう。しかしメイリーは心、激痛に耐えながらも冷酷な眼でぶカルトを見つつ肩にある剣を抜き捨てる。

(あぁ痛い。でもこの傷じゃ『自回復』も直ぐには…いや、そうか)

メイリー何かに気づいた様子で魔法を唱え出す。普通の者ならば激痛に耐えながら魔法を発する何てことは中々できることではない。しかしメイリーは『自回復』を十全に活かすため痛みに慣れる訓練を積んでいる。そのためどんな狀態でも魔法を発することが可能となっている。

メイリーが発した魔法は単純なものであった。スキルの強化である。

「『治れ』」

この魔法によりメイリーの肩の斬り傷はみるみると治っていく。本來ならば重癥度が高い傷を治すにはいくら『自回復』であっても時間が掛かる。しかしそれを魔法で強化すれば話は別である。そんな様子にリルーシュや回りで見ていた冒険者は息を飲む

今までメイリーは回復という魔法を特別視しすぎていた。それは前世にはそういった魔法が殆ど存在しなかったからである。しかし何となく神聖魔法と呼ばれるの論理が理解できた。

(前世に回復魔法はあった。けどそれはかすり傷を治す程度でこの世界みたいに部位欠損を治すような魔法は存在しない。それはやっぱり魔力の有無が関係してるんだろ)

回復魔法の構造は発酵魔法に似ている。発酵魔法は菌の作用を強化することで発酵を早める魔法である。これと同様に回復魔法は細胞の働きを活発にさせ治癒力を上昇させる魔法と言える。しかしここで問題が発生する。菌や細胞の働きを活発にするためにはそれ相応のエネルギーが必要となる。働くだけ働かせといてエネルギーが無ければ死するだろう。

かすり傷を治す程度ならば多、生命力が低下するだけでも、腕一本生やそうとすれば腕が生えたが、生命力が枯渇して衰弱死しましたなんとも笑えないオチになりかねない。ではどうするのかと言えば患者の生命力をエネルギーとするのではなく他ので代替する必要がある。それが魔力なのだろう。

(あの神が言ってた聖なる息吹きは多分、魔力を生命力に替えるときに出る何かだと考えられる。まあ違っても別にいいか)

「『燃えよ燃えろ、爐に魔力を』」

メイリーは『魔力爐』を発し、作った魔力をどんどんと生命力に変えるイメージで消費していく。自の魔力がどんどん無くなっていく覚に焦りを覚えるが徐々にイメージが固まってくる。すると聖なる息吹きと呼ぶに相応しいじにメイリーの回りが輝き出す。

(これをエネルギーとして回復させるっと)

「『聖なるよ、この者の傷を癒せ』」

今も床を転げ回っているカルトに向かって魔法を発させるメイリー。実験臺として、失敗してもあまり気にしない存在はちょうどいいのだ。そんなかなりブラックな考えとは裏腹にメイリーが初めて発させた神聖魔法『聖』は焼き爛れたカルトの肩を癒すのであった。