一ノ瀬博士は話を一旦止める。

「なんだかあっさり出來ましたね？」

「私たちの想もそれだったよ。開発は困難だった。だからこそ天才の閃きによって劇的に開発されることをみんな期待してたんじゃないかな？」

博士の話は佳境にる。

「それからは私たちは『箒』を発表しようとした。しかし父さんはそれに反対した。なぜ反対するのか理解できなかった私はそれを聞かずにこれを発表した」

「それが一ノ瀬さんの失敗ですか？特に失敗してるようにはじませんが。魔法溢れる世界になってますし」

「そう魔法が日常の世界になった。『魔臓』を必要としない魔法がね」

そこで芽依は一ノ瀬博士が言いたいことを理解する。彼のお父さんの理想は『箒』など必要としない魔法世界だったのだろう。しかしそれはもう実現不可能だろう。『箒』で魔法を使える人たちが今さら苦労して『魔臓』を鍛え弱い魔法を使いだすとは思えない。

「でもそれは一ノ瀬さんのお父さんの理想ですよね？別に一ノ瀬さんの失敗ってほどじゃ？」

「まあかなり省いて説明してるからね。でもなくとも『箒』発表による『魔臓』持ちの致命的な減は私のせいだ。父さんや鹿島は『箒』を『魔臓』の代替品ではなく補助として開発するつもりだったんだ」

『箒』は偶然にも『魔臓』の機能を完璧に近い形で備えたになった。そのため魔法を使うためには『魔臓』をかすための別の脳機能は必要だが、『魔臓』自は必要なくなった。そして『魔臓』持ちが『箒』を使い続けたらどうなるか。『魔臓』は使われなくなりそのため機能は衰えていく。

「『魔臓』持ちがいなくなればそれを研究することも出來なくなる。まあ天才が二人も揃ってたから奇跡的に完しただから何とも言えないが、私の失敗は魔法の可能を潰えさせてしまったことだよ」

『魔臓』と『箒』による魔法の行使。制は難しそうだが威力はでそうである。

「まあそこからは芽依ちゃんも聞いたことあると思う。『箒』を使うために必要な脳力をVRゲームで養えることがわかった。奇しくもVRで魔法を使うのに使われていた脳の部分と『魔臓』に命令してた部分とが一致したんだ」

「そうだったんですか。じゃあ父さんはあのゲームを『魔臓』を鍛えられるようにしたのか」

そう納得する芽依。

「やっぱり芽依ちゃんは『疑似転生』プレイしてたんだね」

「はい。一ノ瀬さんも？」

「いや、私はしてないよ。鹿島が見せにきてくれたんだ…」

どことなく申し訳なさそうな聲で言う。芽依は最初からじていたが一ノ瀬博士は芽依に負い目があるような振る舞いをしている。

(うーんわからん。母さんを研究に引っ張り回したのも父さんが悪いし、父さんの名前が『箒』の開発者にないのも父さんが面倒がりそうだからそれも違う。…鈴さんなら何か知ってるかもしれないが。面倒だ。よし帰ろう)

そもそも芽依は魔法の真実も父親母親の真実にも興味がない。そもそもここに來た理由もVR機のためなのだから。その目的が達されてもうここでする予定も無い。ちゃんと考えれば帰宅という選択肢が出るのは當然のことなのだ。

「なんとなく話はわかりました。魔法とは何かもしっかりと答えていただきました。本日はありがとうございました」

「え、まだ話は…」

「充分です。それでは」

突然話を打ちきり、颯爽と帰ってしまう芽依を一ノ瀬は呆然と見送るのだった。

置いてかれた一ノ瀬は先ほどまでのいたに2人の面影を浮かべていた。

「容姿は咲月さんで格は完全に鹿島か。結局謝罪の言葉は親子二代ともけ取ってもくれんか」

一ノ瀬には咲月には『箒』開発で負擔を強いた負い目がある。そして更には魔法開発、魔力を魔法に変換する技を開発するのにも盡力させた。もともとが丈夫でない彼に無理を強いればどうなるかわからないかと鈴に何度も言われた。それでも止められなかった。

「せめて芽依ちゃんにはと思ったが、話の流れを無視して帰るとはさすが鹿島の娘か。まあしょうがないか。まだ機會はある。無理に謝罪しても私の自己満足か」

一ノ瀬は鹿島親子を理解しているようで理解できておらず気を遣われていると勘違いしたままであった。

初期の設定なのでガバガバかもです。特に人間関係や時期。