が直してしまったメイリーに刃が迫る。ただは自由にかせないが思考力は奪われていない。メイリーは咄嗟に魔法を発する。

「なに！」

(それはこっちの臺詞なんだけどね。それより転移を無詠唱で発できるとは。ほんといつの間に上達したんだ？)

がかせないという事は詠唱も儘ならない。それでも『転移』を発して回避するメイリー。そんな狀況に両者とも驚く。

とここで漸く謎の直が消え、の自由が戻る。

(見るからに剣士。となると今のはアイテムによるモノか、それともスキル？ どっちにしても手加減してアレか。勘弁してほしいな)

引退したとしてもSランク。直による隙をみすみす逃すほど甘くは無いだろう。しかし魔法が無ければしの強いの子でしかないメイリーに、本気で攻撃すれば軽く致命傷である。シドはメイリーを自の主の所まで連れていかなくてはならない。必然的に攻撃は鈍くなり、何とかメイリーの回避が間に合った。

「チッ！ 空間魔法を無詠唱だと？ そんな事できるとは聞いてねーぞ。報屋の野郎、雑な仕事しやがって」

「なら諦めて帰ったら？」

「そうはいかねーんだよ！」

と再度斬り掛かってくるシド。とはいえメイリーがギリギリ目で追える速度であるため、手加減は継続中らしい。それではメイリーを捉えることは出來ない。かといってメイリーも街中では派手な魔法は使えない。またテイルからのお願いにより深手を負わせることもできないとなると、倒す手が無い。

(元Sランクに下手な小細工が通用するとも思えないしな。面倒だし逃げるか)

戦っても千日手となることが見えているため、メイリーは転移による逃走を選択するのだった。

純粋な剣士であるシドはそれを止める手段が無かった。

「あれほどの魔法使いはSにもそういねーぞ。しょうがねー。一度主に報告だな」

転移で離したメイリーは、帰っていくシドを『空間把握』で確認しつつ、今後にいつて頭を悩ませる。

(あれだけ強い奴、折角なら本気で戦ってみたいけど流石にね。とはいえ倒して無力化もできないんじゃ打つ手なしだし)

格下相手なら『睡眠』などを使い無力化もできるが、流石にシドにそれは通用しない。転移で逃げ続けたり空間把握でシドの居場所を常に監視して近付かないのも手ではある。しかしそれは自由を好むメイリーとしては免である。

「とりあえずテイルに倒して良いか聞くかな？

ヴィルディゴ教団についても言っておきたいし」

奇しくもシドと同じく行するメイリーであった。