《吸鬼作家、VRMMORPGをプレイする。~日浴と料理を満喫していたら、いつの間にか有名配信者になっていたけど、配信なんてした覚えがありません~》プロローグ1

唐突にVRMMOものが書きたくなってしまいました。

2022/10/02・04 誤字修正。容変更はありません。

2022/10/19 コクーンタイプのVRHMD→コクーンタイプのVR機に修正しました。ご指摘ありがとうございます。本ページ以降の全てのページで修正します。

「先生、今日はお願いがあってまいりました」

我が家に足を踏みれた途端、僕の擔當編集者の篠原さんはそう言った。

「うん、とりあえず、話を聞かない事にはなんとも。ここで立ち話もなんだから、応接間へどうぞ」

そう言って中にる様に促すと、本人もし先走り過ぎたと思ったのか、深呼吸をしてから靴をぐ。

その様子を橫目に、僕はお茶を用意しに臺所へと向かう。彼は何度もこの家に來ているので、案せずとも応接間で座って待っていてくれる。

最寄りの通機関からこの家までは相當な距離があるため、いつも通り冷たい緑茶と和菓子のセット。

毎度來てもらうのは申し訳ないと思うものの、僕が晝間は外を出歩けないので長年この形で続いている。お願いと言うのは、そのあたりのことだろうか。

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「お待たせ」

「いえ、いつもありがとうございます」

この流れも毎度のこと。當たり前のように篠原さんの前にだけ、お茶とお菓子を機に置き、席に著く。

最初のころこそ自分の分も用意していたが、どうせ手を付けずに流しに捨ててしまうだけなので、変に裁を取り終ったところで意味が無いことに気づき、いつからか辭めてしまった。

「それで、話とは」

がお茶を飲み干すのを待ちつつ、僕の方から切り出した。ついでにおかわりのお茶を注いでおく。

「先生がアナログ派なのは知っているのですが……弊社としても、手書き原稿をけ取って推敲し、デジタルデータへ変換する手間がかかりますので、その點を改善いたしたく」

「うん、本當、いつも申し訳ないとは思ってる……」

「私がここまで來てけ取って変換出來れば今のままでも良かったのですが。実はこの度妊娠しまして、さすがに電車、バス、徒歩と乗り継いで半日がかりのところに通い続けるのは厳しいので。かと言って、後任の人間に同じことをするように、とは言えず」

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「おお、それはめでたい。だけど、そうだよね。むしろ今まで無理を言い過ぎた。となると、お願いと言うのはデジタルデータでの稿かな?」

「いえ、それは昔お願いした時に、ひどい結果になったので、お願いするのは難しいだろう、と弊社でも判斷しました」

篠原さんの言う”ひどい結果”とは、僕があまりにも機械音癡過ぎて、ワープロソフトで原稿を執筆するのにも四苦八苦し、挙げ句の果てには完した原稿データを消失させてしまったことだ……。

篠原さんの方でなんとか復舊させてくれたのだが、機械を使うことに必死になった結果、容は目も當てられないほどひどかったらしく、結局同じプロットを手書き原稿で書き直した。

「かと言って、手書き原稿をこちらでワードへ変換する期間も見越して先生に対する締め切りを短くすると言うのも、連載を落とされる可能も高くなりますから弊社としても困りますし。それで、今回はこれをお願いしたく」

そう言って彼が鞄から取り出したのは、一枚の広告らしき紙。

――來る9月30日、いよいよ正式サービス開始。なんでも系VRMMORPG、God of World――

「VRゲーム?」

「ひと月ほど前にサービスを開始したばかりのゲームなんですが、過去最大規模のゲームだそうです。日本でも、法改正を待った甲斐があって、數多の企業がゲームオフィスへと本部を移転したとか」

「いまいちピンと來てないんだけど、これをやることでアナログ原稿の問題が解決すると?」

「ええ、実はゲームで紙に書いたりしたを、一発でデジタルデータへ変換することが可能なんです。変換度もAIによる筆跡解析だけでなく、VRの特を生かした脳波測定も行っているため、ほぼ百パーセントの度で変換可能だそうです。

要するに、ゲームであれば、先生には今まで通りアナログで原稿用紙に執筆していただいても、こちらはデジタルデータでけ取ることが可能と言う事です。やりとりも、トレード機能を用いれば遠距離で行えるので。

実は、弊社もすでに業務の一部をゲームに移して、ほかの遠距離作家さんとのやりとりに使用しています。特段問題も起こっていないため、この度先生にもお願い出來れば、と。

VRなら、機械が苦手な先生でもどうにかなるかと思った次第です」

「うーん……僕ゲームは一切やったことが無いからよくわからないんだけど、これは始めてすぐに執筆できる環境が整うのかい? 前にいくつかVRMMO日常系小説を読んてみたけど、確か住居一つとっても維持費がかかるから、冒険してお金を稼いだりしないといけないんだよね」

「そうですね、そこは弊社側で簡易的な執筆場所と原稿用紙や筆記用がご用意できます。法改正に伴って、現金をゲーム通貨へ変換し、仕事にかかわる何かを購した場合も経費清算出來るようになりましたので。

ただ、先生が住居に対してもこだわりが出てくるようでしたら、ご自で頑張っていただくことになるかと思います。

取り急ぎ、弊社の方でコクーンタイプのVR機をこちらに送付いたしましたので、は試しにプレイしていただけませんでしょうか。

あとはそうですね、執筆中の原稿データなども、こちら(現実世界)で參照することも出來るので、若干書き心地は落ちるかもしれませんが、晶タブレットなんかをご使用になれば、こちらでも続きを執筆可能かと。

それと、ゲームであれば日もお料理の方も、楽しめるのではないかと」

「確かに、日浴とか料理とか……ここで出來ないことがゲームで出來るのは良いかもしれない。その結果、小説のネタが広がるかもしれないし。執筆環境も心配する必要が無いなら、試しにやってみるよ」

僕の気分が変わらないうちにと、篠原さんはゲームのプレイに必要なもろもろの手配――ネット回線の増強と、コクーンの設置場所の選定――を即座に終え、今回の分の完原稿を手に職場へと戻っていった。

機械音癡と言えども、調べも出來ないようでは話にならないので、例の事件のあと、僕はなんとかブラウジングの方法だけはかろうじて覚えたのだ。そうして、僕は篠原さんが置いていった紙を片手に、早速God of Worldとやらについて調べてみた。

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必要な

・VRHMD

・最低10Gのネット回線

あると便利な

・コクーンタイプのVR機であれば、栄養補給パウチ

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安全裝置として、VRHMD側で、脳波・心音・手首の靜脈を観察しているとのこと。

そのどれかに異常が出るか、最長六時間経過した段階で、コクーンからの強制排出が行われる。

うん、この時點で既に前提條件が満たせていない。何故なら、僕の心臓は止まっているから。

「うーん、の味ってどうにも嫌いなんだけど……心臓かすためにはどうしても摂取しないといけないんだよなぁ」

やると言ってしまった以上、摂取は大前提な訳だけど、吸なんて久々すぎて、どれくらいの量でどれだけの時間心臓がいているのか、全く覚えていない。人と話すときだって、適當に呼吸しているふりをすれば心臓がいてないことに気づく人間なんていないから、本當に何百年ぶりの吸になる筈だ。

どこでどうやって手するかも問題だ。まさか太古の昔の吸鬼のように、歩いてる人を夜道で襲っていただきまーすと言う訳にもいかないだろう。

今の時代、防犯カメラがそこらじゅうにあるし、二十四時間営業の店も珍しくないのだから、間違いなく目撃者が居ると思って良い。

「となると……輸パックとか、食用抜きしたものを譲渡してもらうとか。とにかくコネが必要だよね」

久々に吸鬼の集會に顔を出してみるかな。今も、きっとやってるんだろうし……やってるよね? まぁそこで今の分証も作ってもらったんだし、數十年で消失なんてこと無いとは思うんだけど。

「コクーンタイプは食事回數を減らせるように栄養補給パウチをセット出來るようになってるらしいけど、専用のパウチだよね。パウチなんてセットしたら絶対壊れるよね。となると僕には不必要か」

何せ食事をする必要も睡眠をとる必要も排泄する必要もない。と言うかできない。

料理の味は分かるし、生前は食べることが好きだったから人前で食事せざるを得ないときはとりあえず食べるけど、排泄も出來ないのだから、食べたものがの中でどうなっているのか不明な以上、積極的に食べようとは思えなかった。

だから僕は、出版社側には日アレルギーと味覚障害を持っている、と伝えていた。まあ、日アレルギーに関しては噓ではない。他のお仲間は――昔の僕もだけど――ガムテープで無理やりを抜かれているような痛みをじるだけで、日を浴びることは出來た。

長いこと日のを浴びてなかったが故に日アレルギーになってしまい、浴びると焼けただれるようになってしまったまぬけは、僕くらいだろう。

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