《吸鬼作家、VRMMORPGをプレイする。~日浴と料理を満喫していたら、いつの間にか有名配信者になっていたけど、配信なんてした覚えがありません~》プロローグ2
2022/10/04 誤字修正。容変更ありません。
2022/10/11 ゲーム略稱の誤字修正。容変更ありません。
「それで久々に集會に顔出したって? 嫌いの異端児君が?」
そう言ってにやにやと笑うのは、この集會所の主催者の……確か今の名前は水原 洋士(ようじ)だっけ? 本當変わってないよなぁ、こいつ。でもまあ、僕が異端児なのは事実なので黙って頷くしかない。
「うん。他の人はどうやって確保してるのかなって。出來たら僕にも教えてほしいな、って」
「それは別に構わないが。と言うか、ネタでもなんでもなく、本當に嫌いだからって理由で飲んでなかったのか? 俺はてっきり田舎に住んでるあたり、自力で熊なりなんなりから頂いてんのかと思ってたんだがな」
「いや、本當に必要な時しか飲んでないから.....かれこれ數百年ぶり?」
僕の答えに、呆れたように笑う洋士。まあ、誰だってそう思うだろう。僕以外の同族曰(いわ)く、「は極上の味」だと言うし。
「それでどうやってかしてるんだよ。飲まなきゃ人間並みの能力しか無いんじゃないのか」
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「人の世で暮らしてるんだから、人間と同じくらいあれば十分じゃない?」
今度は僕が呆れる番。なんで能力を上げる必要があるんだろう。
そんな話をしつつ、同族が運営してるショップを紹介してもらった。どうやら、お金を払って人間から定期的にを売ってもらっているらしい。
もちろん、Webサイトで告知をしている訳もなく、吸鬼からの紹介でしか売らないし、提供者もかなり厳選しているとのこと。みんな考えることがすごいなあ。
ついでに、鎮痛剤と鎮靜剤も數本。初めて接種をする吸鬼は、心臓がき始める痛みと、能力が突然飛躍的に向上することに耐えられなくて、いろいろやらかすんだとか。それを抑える為とのことだけど……吸鬼の中でもかなり最古參の部類なのに、萬が一を考えて拒否することが出來なかった自分がちょっとけない。
集會行ったりパウチを手したり、回線増強工事やコクーンの初期設定をしてもらったり。なんだかんだで、ようやくGod of World通稱GoWの世界へと旅立つ準備が整ったのは一週間後だった。
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ゲームを楽しむというよりは、仕事に支障が出ないように――斷じて日浴と料理が気になったからではない――、事前にある程度GoWについては調べておいた。
曰く、普通のMMOPRGにある、「スキル」と言う概念はこのゲームには無いらしい。
そう言えば、あの後も參考になればと思って読んだ架空のVRMMOPRGの日常小説も、主人公は戦闘や生産を行う前にスキルを取得していた。スキルを取得していない分野に関しては、何をしても失敗扱いだった。
GoWには、そう言った制限がなく、ブレイヤーは何でも自由に行えるとのこと。とった行により、それに関連する技の「練度」が上昇し、練度が高ければ高いほどゲームシステムのアシスト能や功率・品質が良くなるらしい。
つまり、スキルポイントなるものもないので、手持ちのポイントの中で、何のスキルをとるか、といった考も必要なく、ただ本能・の赴くままに行すれば良いらしい。
ただし、練度が低くても、現実世界で既にに著けている技に関しては、功率や品質は高いとのこと。
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どういうことかと言うと、現実世界で料理をしたことが無い人がGoWで料理をした場合、最初は熱練度が低いためアシストが働かず、味付けや焼き時間が適正でない場合は品質が低い。
だが、練度が高くなれば、味付けや焼き時間が適正でない場合にも「ここでひっくり返す!」のようなアシストがポップアップするらしく、それに従えば良いものが出來上がる。
一方で、現実世界で料理をしたことがある人は最初から味付けも焼き時間も適正を心得ている為、練度が低かろうが自分の覚に従って普段通りに作れば良いものが出來上がるらしい。
つまり、剣を習っている人は最初からある程度剣を扱えてる、と。
これはGoWに熱中するあまり、現実をおろそかにしないための一種の安全裝置のようなきを期待して導したシステムらしい。GoWでの練度上昇は早くはないので、「本格的ににつけたい技は現実世界でも頑張ってね!」と言うこと。確かによくできている。
さらにその練度自も、例えばゲームシステム的にスキルツリーのようなものがあるわけではないので、ぽちぽちと選んでいけばに著けられる、と言う訳ではないらしい。
本を読んで知識を得るだとか、魔導士や騎士に弟子りして稽古をつけてもらうだとか、現実に即した手間が必要とのこと。
サービス開始直後に話題になったのは、モンスターの解について。最初はうまく皮がはぎ取れなかったり、そもそも知識が無いがゆえに必要ないものをはぎ取ってしまったりして買い取り不可だとか、金策しようにも金策できない狀態で阿鼻喚の地獄絵図だったとか。
買い取りしてくれる店や猟師に聞くなり、本を読むなりして、必要な部位が何なのかを知らなければならない。この騒ぎで、GoWの世界観を皆実したとのことで、公式の掲示板は大賑わいだったようだ。
そういう訳で、一番最初に選べるのはスタート地點となる國と種族のみ。職業のようなものは無い。
スタート地點は、メインストーリーが異なったり、手にる食材や素材に差があるとのことだったけど、今回はお試しで執筆の為に始めただけなので、特にこだわりは無い。
人口が均一になるように、プレイヤーがない國には「おすすめ!」マークが隨時つくらしく、素直におすすめを選択。
種族に関しては、これも特にこだわりは無いけれど、吸鬼だけは絶対に選ばないと心に決めていた。現実で日を浴びれないのに、ゲームでも日を避けなければならないのはお斷りである。
今後の小説の參考になりそうだからと、魔法関連の練度が上がりやすいエルフも悩んだけれど、事前に調べた報では、魔法は現実世界では存在しないので、練度上げが非常に難しく、初級魔法すら発出來たプレイヤーはいないらしい。ギャンブル嫌いの僕としては、魔法は一旦諦めて、無難にどんな技能でも平等に上がるという人間を選択。
キャラクタークリエイト畫面では、デフォルトで自分の顔と、いくつかのプリセットが選べ、そこから更に編集を行えるらしい。
プリセットは同じ顔が居そうなので除外。自分で編集するのは、機械音癡な自分にはパラメータとやらが理解出來ずに斷念。
そもそも、今後篠原さんと會うことを考えると、がっつり別人顔と言うのもなんだか恥ずかしいよね、うん。現実とまったく同じ顔でいわゆるバレをするかと言うと、日が駄目なのでサイン會すらしたことがないし、そのままで大丈夫だろう。
結局、自分の顔を選択し、自分でも設定が出來そうな、髪型や瞳のを変える程度にとどめることにする。
髪型は、現実世界で容院に行けない影響でずっと憧れていたゆるふわパーマを選択。瞳のも、現実の質が本當に影響しないか不安なので、日焼けに一番強い黒眼を選択。
吸鬼はたいてい整った顔立ちだけど、ゲーム特有のザ・イケメンと言うほど煌やかでもないので、このキャラメイクであれば悪目立ちもしないだろう。
設定も終わったし、いざゲームスタート。視界が暗転し……。次の瞬間には、西洋ののどかな田舎町、と言った雰囲気の小規模な町らしき場所のり口に居た。
ん? 小説とかにあった、チュートリアル的なものはないんだろうか。何かしらの行をとる度に説明が始まるタイプかな? そう言えば、そんなじの小説もあったな。
うーん、町の中へって見たじ、NPCとやらに!とか?みたいな記號が浮かんだり、地面に矢印がついている訳でもない。ストーリーを進めるためのクエスト、とやらをけるのも、システムに頼らずに自分で行して頑張ってね、と言うスタンスなのかな。
とりあえずここがどこなのかを聞く為にも誰かしらに話しかけないといけないわけだけど。プレイヤーとそれ以外――いわゆるNPC《ノンプレイヤーキャラクター》とやらの違いは、一応頭上に緑のマークで判斷がつくじかな。多分、マークが浮かんでる方がプレイヤーっぽい。なんか僕と同じで挙不審だし。と言う訳で、何のマークも浮かんでいない人に試しに話しかけてみよう。
「すみません、ここはどこでしょうか」
本當に作家なのか疑わしい、とっかかりも何もない、ド直球の質問から始めてしまった。こう言うところで普段の対人練度?が呈するよね。だってほら、小説は會話の考時間無制限だから。
「うん? 見かけない顔だね。旅人さんかい? 最近は隨分多いね。ここはシヴェフ王國最南端にある町、オルカだよ」
僕の対人練度の低さは、幸い會話に影響しなかったようだ。「どこかも分からずにここまで歩いてきたのか」って不審な目で見られてもおかしくないかと思ったけど。
それにしてもシヴェフ王國か。どうやら、スタート地點として選んだ國で間違いないみたいだ。開始の町は全員一律同じって訳じゃなくて、確か東西南北それぞれの最端にある町からスタートって書いてあったな。僕は南スタートってことは、北上すれば王都とかに著くんだろうか。
「ありがとうございます。ちなみに、王都はどの辺りにあるんでしょうか?」
「ずーっと北上した、國の中央當たりって聞いたことがあるけど、詳しくは知らないねぇ」
「なるほど……。あ、えーと、この町には宿屋はあるんでしょうか?」
「ま、一応最南端とは言え町だからね。宿屋はあるにはあるけど……多分今は埋まっちまってるんじゃないかね。最近、やたらと旅人が多いのさ」
ふむ。新規プレイヤーは旅人の扱いなのかな? そのうち何人かが借りていて、部屋は満室。全プレイヤーが借りれる仕様では無い辺り、完全に早い者勝ち。現実的だけど僕みたいなゲーム初心者的には不便だなぁ。
とりあえず、ここで寢泊まりするのも難しそうだし、待ち合わせのことも考えて、先に進んでみるしかないか。
篠原さんが居るのは王都から西に向かって行った先の大きな街で、基本的に現実世界の企業専用のオフィス街らしい。待ち合わせ自は王都で、ひと月後。それまではゲーム世界に慣れることに専念して下さい、とのこと。
王都に辿り著くのが無理であれば、その時點で居る場所まで迎えに來ると言ってたけど、さすがにそこまで迷はかけたくないし、王都までは辿り著きたい。
篠原さん曰く、クエストをこなしていれば平均一週間程度で辿り著くと言ってたけど……。クエストがどこにあるのかもわからないなんて、先行きが不安過ぎる。
篠原さんの取り計らいもあって、今月はもう書かなければいけない小説はないし、睡眠も食事もする必要がない僕は、六時間おきの強制休憩以外はゲームに費やせる。とりあえずクエストとやらを発生させる為に、この街の住人全員に話しかければどうにかなるだろう。
評価やブックマーク、ありがとうございます。
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