自國での評価は総じて慈悲深き聖である。しかし他國では聖の皮を被った悪魔などと比喩されているらしい。まぁ自の存在が戦爭の抑止力となる様にいていた為、好都合と言えば好都合ではあるのだが。

（しかし........此れは由々しき事態ですね、ふふ）

溫厚であった帝國の王、皇帝陛下は度々の戦爭の勝利に酔い始めていた。當初は民を守る為にと國境守備に強化をれるだけであった。だが今は騎士団を再編し、隣國を討ち滅ぼそうとしている。

「皇帝陛下が大陸を統一する為に近々公國と京國へと攻め込むって噂だぜ」

「この前、國境沿いでいざこざがあったばかりだろう、京國とは」

騎士団の一員らが雑談するのが耳にる。一年前に剣聖とその軍勢を殲滅してからと言うもの京國とは小競り合いが國境付近で度々と起きる。

(公國はおとなしいと言うのに、淺はかな事です。）

とは言え聖として最前線に立ち過ぎるのも問題だ。帝國騎士団にも戦爭に置ける需要を陛下に見せつけなければならない。故に現在、【法國】と【王國】の擔當は彼等が擔っている。

「聖様！此方に居られましたか！」

どうやらシアリーズに見つかってしまったようだ。教會にある裏庭で涼んでいたのだが、そろそろ公務に戻らなければならないらしい。

「シアリーズ、どうか致しましたか？まさか、妹さんと仲直りが出來たから報告に來たと言う訳ではありませんよね。」

「せ、聖様！！妹の件ではありません！！」

付き人であるシアリーズは公爵家の次である。そしてその妹は昔、公爵家から飛び出し騎士団へと団したらしい。家紋を捨てたとは言え戦場に駆り出される妹が大変心配なのだろう。

「素直になれば良いものを。いけませんよ、シアリーズ。家族は大切にしなければなりません。」

「うっ......分かってはいるのですが......ではなくてですね！騎士団長が応接間で待ってます！行きましょう、聖様！」

(騎士団長..........)

騎士団長ロムヌス。帝國の英雄。四方の國々からこの國を守り続けて來た豪傑。単純な戦闘に置いてこの者に敵うものは現狀いない。仮に彼が妖刀【村正】を武として使用していたら萬が一にも私は敵わないであろう。

(とは言え騎士団長も歳でしょうし、力面をつけば決して勝てないと言うわけではないんですよ？)

聖は意外にも負けず嫌いなのである。

「突然の訪問、申し訳無い_______『聖』殿」

応接間の扉を開くと騎士団長は此方へと一禮した。帝國では皇帝陛下、二大貴族、大司祭、聖、上位貴族、騎士団長、副団長、貴族、騎士団、平民と立場的に偉い順番はこう並べられる。故に私の立ち位置はそこそこと高いので騎士団長もまた禮儀をつくすのだ。

『騎士団長、どの様なご用件でしょうか。」

事前に連絡が來ていないと言うことは急の知らせなのだろう。此方もこちらでやる事がたくさんとあると言うのにうんざりする。言葉にはしないけれども。

「皇帝陛下について、だ。」

あぁそう言うことか。皇帝陛下の変貌について問いたいのだろう。

「陛下はお変わりになられた。數年ほど前までは貧困層が生まれぬ様、民中心の政策をとられ、尚且、戦に駆り出すではなく國防の為に勇姿を募り、騎士団の底上げに盡力をなされた。」

「はい........」

はい、私が現在進行で陛下を導しています。そもそも國防に力をれたとしても他國からの侵略行為は止まらない。平和な世を目指したいのなら手っ取り早く大陸中の國を統一すればよいのだ。故に私は陛下にに助言した。

『平和な世を作り出すには先ず、人が、大陸が一つになる必要があります。陛下、恒久的平和を長き時代続けるには誰かが悪役に徹しなければならないのです。』

などと火をつけてやれば簡単にいてくれましたし。後は著実と他國を支配していけば戦爭問題は解決されていく。

「聖殿に折りって頼みがあるのだ！私一人では陛下の心には屆かない。だが、天の使いである『聖』殿のお言葉ならば陛下も目を覚まして下さる筈だ！」

巫山戯た事を言う男だと心で溜息を吐く。

「騎士団長の言い分も理解できます。しかし、陛下には陛下のお考えがあると私は信じております。皇帝陛下は賢帝であり愚帝ではありません。先ずは真意を確かめてからでも遅くはありません。」

「......確かに急ぎ過ぎていたのかもしれんな。大きな戦爭は京國との戦から一度とない。小規模なぶつかりは幾度とありはしたが、國境騎士隊で対処は出來た。しかし陛下は再編された騎士団で4大國と戦爭をする戦準備をされている。決して無謀という訳ではないが、くっ、一どれほどの部下が死に徴兵された民が死ぬか。この戦に義がなければ私は反対する。例えこのが処刑されるになろうともな。」

処刑されてしまえ！と心の中で思ったのはここだけの話、である。

(とは言え、騎士団長の存在は必要不可欠。騎士団は何も清廉潔白な正義の使者ではありませんし。)

の気の多い者程、騎士団に所屬しがちだ。騎士団長はああは言っていたが騎士団の半分は戦爭をしたい派である。騎士団に団する者の大半が武勲を上げ最強の座である騎士団長の座を目指しているのだから。

「陛下は【法國】へと宣戦布告の手紙を、今朝方送られた。手始めに西を支配下に置きたいらしい。しかし、解せぬのは他の３大國と比べると『聖』殿の影響か我らに最も親しい隣國であると言うことだ。」

話し合いで何とか出來ぬだろうかと相談する。しかし聖の心は怒りと苛立ちに満ちていた。

(この脳筋は本當に頭がお花畑ですね。先ず法國が私達帝國に手を出して來ないのは私が裏で彼らの信仰心を上げているからです。)

その気になれば法國其のものを乗っ取り、法王自に私はれるだろう。けれどそれをしないのは彼らに致命的に足りていないものがあるからだ。

(圧倒的武力の不足。信仰系統の能力に偏り過ぎている。）

確かに祈りは強大で偉大だ。しかし、攻撃特化ではない。故に五大國の中では一番と武力では劣る。

「えぇ、和平を組み共同関係を築けることが最善ではあるのですが........私からも皇帝陛下には掛け合って見ましょう。」

「おぉそれは心強い.......っとそろそろ征かねばならぬか。聖殿、貴重なお時間を取らせてしまい申し訳無い。平和な世を目指す者同士、互いに頑張りましょうぞ！」

はい、と相槌を打ち応接間を去っていく騎士団長から視線を離す。

（皆がみな、私に期待を掛けすぎています。年端もいかぬ小娘なんですよ、私は。）

聖となってから毎日が大変だ。々と畫策し、何とか安寧の世を作り出すに為に悪戦苦闘している。しかし、著実と脳に思い浮かぶ計畫は進行してくれている。このまま何事もなく進めばいいのですが。