《闇墮ち聖語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第十七話『敗北』

何が起きた。後ろを振り返ると當方が振るったであろうレイピアが地面に付き刺さっていた。

「....何が.....どうして」

此方が押し勝っていた筈、なのに何故負けた。

「さ、勝負は俺の勝ちだ。お前達も実力さが分かっただろう。各自鍛錬に戻れ。」

目の前の傭兵は剣を鞘に戻し、マールス団長の元へと戻っていく。から力が抜け膝をつく。

「噓だ.....あり得ない....」

剣にのみ捧げた人生。相手と拮抗した戦いならば負けは認める。だが、先程のアレはなんだ。

(実力差があり過ぎる....)

マールス団長や前団長の強さを軽く凌駕しているではないか。

「傭兵、お前は當方を愚弄し遊んでいたのか!」

前半に置ける戦闘で様子見をされた。このヴェヌスが手を抜かれていたのだ。

「何故始めから本気を出さなかった!」

地面に突き刺さった剣を引き抜き、黒騎士へと襲いかかる。

ガキンッ!

「剣を納めろ、ヴェヌス。」

マールスが剣を抜きヴェヌスの一撃を黒騎士に屆く前に止める。

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「どけっ!マールス殿!!當方が用があるのはそこの男だ!」

ヴェヌスへと振り返り、告げる。

「俺に一撃を與えたんだったな。今日と明日の訓練は來なくていい。一度頭を冷やせ。」

新人を焚き付ける為に言った言葉をけ、ヴェヌスは歯を噛み締め、怒りの表を見せる。

「これ程の侮辱をけたのは初めてだ!剣を抜き、再び當方と戦え!」

「やめろと言うのが聞こえないのか、ヴェヌス!」

マールスはヴェヌスの剣を握る手を摑み、耳元で囁く。

「彼奴は俺や団長よりも強い。団長なき今、俺たちには新しい力が必要なんだ。」

「其れがあの傭兵だとでも」

「そうだ。それにな、彼奴の私生活をバレないように監視して見ろ。面白いものが見えるぞ。」

面白いもの?あの鎧の中か。確かにどのような容姿をしているのかは気にならないと言えば噓になるが。

「當方がその話に乗ると「奴の強さのが分かるかもしれんぞ。」.........っ、分かった。」

元副団長の思に乗るのは小癪だが、此処は引くとしよう。

「________當方は此れより休日にる。」

剣を納め、訓練所を後にする。其れを見送った黒騎士はマールスへと尋ねる。

「何を吹き込んだんだ、マールス?」

マールスはくすりと笑うとこう答えた。

「________''だ。」

「挨拶はしなくて良いのですか、シアリーズ。」

ディアーナは付き人であるシアリーズに聲を掛ける。

「構いません。アレはもう家紋を捨てた者ですので。」

ツンとした表のシアリーズはそう言いつつも目線だけは妹であるヴェヌスを追っていた。

(素直になれば良いものを......)

二階から先程の模擬戦を覗き込んでいたディアーナ一行は椅子から立ち上がりマールスらがいる場所へと移する。

「聖様、お気をつけ下さい。騎士団の方々は野獣だと先輩の修道の方々が申しておられましたわ。」

もう一人の付き人であるケレスは箱り娘である為、父親以外の男をに飢えた野獣だと考えている。其れに先輩や同僚の曲がったれ知恵のせいで更に男嫌いを増していた。

「偏見はよくありません。そういった考えが爭いを生むのです。ケレス、神に仕える者として適切な知識を貴方には教える必要がありそうですね。」

騎士大隊の本部に來る事は初めてだが、騎士団との流は帝醫隊の長として何度も行ってきた。故に彼等がその様な蠻族めいた行為をする集団ではないと知っている。

「なっ!?聖っ」

マールスはディアーナの存在に気づいたのか聲を上げる。

「おい.....何故、聖が此処にいる。俺の所に伝令が來ていないぞ。」ボソ

近くの騎士に耳打ちをする。

「あ~、模擬戦をしているようでしたので、邪魔をしては行けないかと。」ボソ

「ふざけるな、あの方はこの國の重鎮だ。優先事項くらい、頭を使えば分かるだろう。」ボソ

マールスは直ぐに聖の元へと駆け寄る。

「ようこそ我が騎士大隊へ、聖ディアーナ。」

ディアーナは一禮をすると、周りを見渡す。何かを探しているようだ。

「貴方が新しく団長としてご任命されたマールスさんですね。先程まで戦っていた方は何処へ?彼とお話をする為に訪れたのですが」

「ジョンならば.....いない?」

黒騎士がいない事に気づく。

(まさか.......)

訓練所から抜け出した可能がある。

「あのぉ....団長、実に言い難い事なのですがぁ、副団長は帰宅されました。」

新人騎士の一人がそう報告する。マールスは頭痛がした。

「あれ程勝手な事はしてくれるなと忠告をしたばかりだろう。」チッ

へと向き直り、ある提案を提示した。

「もし時間がよろしければ、副団長の家まで案出來るが。」

ディアーナは手を合わせて微笑を浮かべる。

「__________えぇ、是非。」

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