《闇墮ち聖語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第ニ十二話『出発』

パーティーは総勢で50組と組まれた。もちろん、殘りの者たちは帝國の防衛に當たる。

(帝國の戦力をこれ以上減らさない為の政策か)

一萬規模の兵を失った為に王宮の連中は兵の出し惜しみをしている。

「副団長、お気をつけて。」

「ヴェヌス殿もどうかご無事で。」

そして先遣隊として10組が一日目に出発する事になり、

「俺達が記念すべき第一組目だな。」

もっとも実力が有るであろう自分とヴェヌスが第一陣として送り出される事となった。ちなみに一刻ごとに一つのパーティーを帝國から出発させる事で仲間との合流を避けている。數が多ければ魔も其れに対応すべく倍以上の敵で押し寄せる。故に鋭、分隊で瘴気を攻略していかなければならない。

「ふ、當然だな。當方達が最初に出陣すれば後の者達の負擔はより減るだろうからな。」

ヴェヌスは相手を見下しがちだが、騎士大隊に所屬する仲間達のを常に案じている。

「ジョン、準備が出來たようだな。」

すると見送りの騎士達の中からマールスが姿を現す。

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「あぁ、もちろんだ。」

「俺は立場上、本來は帝國に殘らなければならないが.....陛下に無理を言い、最後のパーティーとして出立出來る事が決まった。」

「其れで、アンタは誰と組むんだ?」

マールスは苦笑を見せると、こう答える。

「お前が気にしていた聖だ。それと其の付き人一人、確か【シアリーズ】と言う修道もついて來る筈だ。後は王宮お抱えの直屬騎士がついてくる事になっている。」

黒騎士は驚いた表を一度見せるが、直ぐに其れが當然であると理解する。

(姉上.........)

そしてヴェヌスは何故か気にくわないと言った表を見せていた。

(此れも運命力なのかもしれんな....)

マールスとディアーナが共に道を歩むなら問題ない。あの結末へと必ず導かれるのだから。

「そうか。くれぐれも彼を守ってやってくれ。」

その言葉をけ、マールスは苦笑を見せた。

「ふ、聖を守れ、か。お前は彼の戦う姿を見た事がないから、そう言えるのだろうな。」

するとヴェヌスが橫から口を挾む。

「副団長殿は聖様の強さが分かっていないようだな。」

「なんだ、そんなに凄いのか。」

「凄いなんてものではない。あの方は正しくを齎す聖だ。過剰回復による広範囲の殲滅能力。奇跡を使った味方の強化。また、知力も備えた才兼備の天才だ。」

ヴェヌスの口からこうも褒め言葉が出るとは、それ程までにディアーナは過去の戦役で功績を殘して來たのだろう。

「作戦の參謀も確か務めた事もあったな。」

「それに聖様がまだ15である事には驚きだ。あの若さで既に完されておられる。」

なんだ、この二人のべた褒めは。

「ただまぁ、國民の前では慈悲深い笑みを見せるが、それ以外ではあまり笑う姿は見た事がないな。」

黒騎士は思う。彼は皆の前では完璧な聖としてあろうとしているのだ。それ故に弱みを見せず、常に己を偽る。瘴気にを侵されながらも最後の時まで聖として戦い、死んでいった。其れがディアーナ本來の人格だ。

「聖だからこそ誰にも心配させないように頑張っているんだ。才能や天才と言ってやるのは簡単だが、其れは彼が常に努力で勝ち取ってきたものだ。知っているか?彼の両親は裁店を営んでいる普通の家の生まれだ。そんな娘が自分を押し殺してまで聖の使命を全うしようとしている。其れがどれ程苦しく重い重圧であるか人である俺達なら分かるだろう。」

二人は真剣な表で話に耳を傾けていた。

「あぁ、俺が聖であったなら笑っている時間はないと自を律しているだろうな。」

「まぁ、俺が言いたいのはそう言う事だ。聖ディアーナの事をしでもいい、旅の中で気に掛けてやってくれ。」

例え彼が一騎當千の聖であろうと、心はそれほどの強さを持ち合わせてはいない。可能であれば自分が彼の元で常に支えて上げたい。だが、其れは葉わない。

「お前が聖に対し何故優しいか、分かった気がするよ。」

正史にしでも近づける為には主要人たちから距離をとる必要がある。だが、仮にディアーナがピンチに陥ったなら________

(_________俺は命に変えてでも守る。)

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