《闇墮ち聖語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第二十九話『西塔の渦』

「よう_____お前が渦の一つか?」

西塔の最上階、巨大な瘴気を包する魔が存在した。人間を軽く超える軀。そして、息を吐くだけで周囲に広がる魔素。どれもが自分が包する瘴気を軽く凌駕している。

【人間か。良くぞここ迄辿り著く事が出來たと褒めてやろう。】

真紅の目、そして深淵の瘴気がから纏うように常に吐き出されている。そしてその特徴を一言で表すならばドラゴン。

【だが、貴様の運命は盡きる。星に寄生する害蟲よ。】

瘴気によるブレスを吐かれる。しかし黒騎士は剣を前へと突き出しただけでかなかった。瘴気のブレスは瞬く間に黒騎士を呑み込み塔の一部を完全に破壊した。

【滅びるがよい。】

瘴気の波を正面からけた黒騎士に対し、ドラゴンは無慈悲にそう告げる。そして奧へと戻る様に巨軀をかすが。

「______________何処に行こうとしている。戦いは始まったばかりだぞ。」

人間がけて生き延びる事は不可能な程の瘴気。にも関わらず黒騎士は生きていた。ドラゴンは牙を覗かせ、黒騎士へと向き直る。

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【貴様、人間か?】

戦場で剣を握り敵と対峙する時いつもじる事がある。あぁ、俺は今からこいつと戦うのかと。まるで當事者ではない様な覚。【王冠】を手にれ、■■、■■■■、そしてこの手で殺した■■■を生き返らせる。今在る自分の掲げる願。その過程で先ずはこの■■を攻略しディアーナを連れ戻さなければならない。そしてこの目的が果たせるのならば自分の命など惜しくはない。そう考えていた。けれど、いざ戦場に立てば自分はどうにも他人事の様にじてしまう時がある。まれで創作みたいで現実味がない。だからか恐怖心と言うものが以前よりも薄くじる。

「うぐっ!」

中が傷だらけで軋む。しかし恐怖はない。戦わなければ先に進めないと分かっているから。

(何か攻略法はないのか____)

ドラゴンによる最初の一撃は自が瘴気の加護に守られている事もあり無傷に済んだ。だが、理攻撃などの攻撃は完全に防げない。

【先程までの威勢の良さはどうした、矮小なる人間よ。】

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ドラゴンは軀に似合わずかなり敏速なきをする。鎧は破損が激しくにも傷が出來ている。再生が間に合っていない。

(_____どうする。速力は此方が上、だが相手も其れに対応するように瘴気を織りぜた魔法を打ち込んでくる。)

そしてその隙を狙った強力な近接攻撃を浴びせてくる。瘴気でを強化して尚もその攻撃は弾く事が難しい。

(ディアーナ......俺にもっと力をくれ。)

剣を握り締め立ち上がる。

【終焉だ】

ドラゴンを見上げると、鉤爪が目の前へと迫っていた。

(避けきれっ)

回避に間に合わない。黒騎士は剣を突き立て自分の持てる最大の防で対応しようとするが。

「__________副団長殿!!」

疾風が如き速度で現れたヴェヌスにより突き飛ばされる。そしてその鉤爪はヴェヌスを貫いた。

「ヴェヌス!!!」

即座にを取り、瘴気をへと限界以上に流す。

「ふざけるな!!!!!!!」

黒騎士は腳力へと集中し、その場からドラゴンの元へと跳躍する。長剣を筋が張り裂ける程の腕力で振るいヴェヌスを貫いたであろうドラゴンの右腕を切り飛ばす。

【グアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!】

ドラゴンは悲鳴を上げるが其れを無視してヴェヌスの回収に當たる。

「おい!返事をしろ!!!ヴェヌス!!!!!」

「うぅ........副団長殿、........無事か?」

がとめどなく貫かれた腹から流れ出ている。黒騎士は急ぎヴェヌスを抱えると塔の頂上から離する。

「あぁ、俺は無事だ!」

螺旋階段を下りながら話を掛け続ける。

(そうだ、俺のポーションを飲ませれば!)

最後のポーションをポーチから取り出し背に乗るヴェヌスへと無理矢理飲ませる。

「くそ!なんで塞がれないんだ!!」

傷口は塞がらない。このままではヴェヌスは死んでしまう。

(なんで俺は何時もっ!!)

ヴェヌスを利用しようと計畫していた。其れは今も変わってはいないと思う。だが、やはりは出る。自分を助ける為に飛び出した仲間を思わない奴が何処にいるだろうか。

「必ず助けてやる、安心しろ。」

意識を失わないように話を掛け続けるしかない。

「もう.......いい.......置いていけ.....」

此奴もマールスも何故そうまでして死に急ぐんだ。

「置いていくくらいならお前と一緒に死んでやる。だから死ぬな!」

ヴェヌスはその言葉を聞き優しい笑みを浮かべる。今は急ぎ帝國に戻り、ヴェヌスの治療をしなければならない。

間に合わせる。俺の足が限界を迎えてもこいつは送り屆ける。西塔の門を破壊し、外へと出る黒騎士。すると目の前には魔の上に立つ見慣れた顔の集団が存在した。

「___________________________________ジョン、か?」

マールス。そしてその隣には聖ディアーナがいた。

「ディアーナ!!!」

ディアーナの元へと駆け出す。

「どうしたのですか、ジョン副団___」

ディアーナは異変に気付いたのか、直ぐに杖を出し背に乗るヴェヌスへと視線を向けた。

「聖......様......」

腹部に大を開けたヴェヌス。本來ならば即死級の怪我だが、ヴェヌス本人が魔力をコントロールする事で延命を続けていたのだ。

「直ぐに治療を開始します。皆さんは周囲の警戒を。」

天の奇跡による詠唱を開始するディアーナ。マールスは自分の元に寄り経緯を聞いてきた。

「あぁ。この塔の最上階には強力な魔、龍が存在する。そいつにやられた。」

マールスは目を大きく開け驚愕とした表を見せる。

「お前でも勝つのは厳しいか?」

「...........命を賭せば道連れには出來る。」

瘴気の限界を出しつづければ恐らくは勝てるだろう。しかし、それと同時には限界を迎え崩壊するか、完全に瘴気に呑み込まれる。

「それ程の相手と言う訳か。」

張り裂けた右腕の筋の痛みが徐々にではあるが安らいできてはいる。瘴気による自己再生が働いてくれたのだろう。

「私の妹をこんな姿にして......許さないっ!!」

ディアーナと共に治療のサポートをするシアリーズが此方を睨みつけてくる。

「彼奴は聖の付き人で、ヴェヌスの実姉だ。」

マールスが耳打ちでそう伝える。

(そうか、彼が.....)

黒騎士はシアリーズへと視線を向け謝罪をする。

「すまなかった。俺の未さが彼を危険に曬してしまった。」

「貴方が怪我を負えば「「姉上!!」」

ヴェヌスがシアリーズに対しぶ。

「あぁヴェヌス、良かった.........」

シアリーズは思わずヴェヌスを抱き締める。

「.............大丈夫なのか?」

ディアーナへと視線を向けると彼は小さく顔を縦に振り微小を浮かべてくれた。聖の回復は神の力に等しい奇跡である。故に瀕死の重傷であっても即座に治療する事が出來るのだ。

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