《闇墮ち聖の語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第五十一話『希』
『神は人を救いはしない。』
『神は人を導いたりはしない。』
『神は人に慈悲を與えたりはしない。』
『されど人は神を崇拝し救いを求める。』
『神は人に試練と稱し無理難題を押し付ける。』
『人は怠惰であり傲慢だと悪魔は嗤った。』
神と言う偶像は必要ない。信仰は人を停滯させる。希だけを與えるだけ與え絶へと叩き落とす。そして哀れと勝手に決めつけ時折一筋の希を齎すのだ。これを愉悅としている神を人の定義する【善】と言えるのだろうか?
「否、神は害悪に他なりません。私が天界を討ち滅ぼし、神を粛清しましょう。」
世界を『救済』する為には神と呼稱する偽善者を駆逐する。そして戦爭を繰り返す人間を一斉除去し、新たな人類を繁栄させなければならない。
「あぁ.....」
楽しみで愉しみで仕方がない。人も神も絶に染まる。闇と同一化した私は既に人の理を逸している。この世に私を浄化できるものは存在しない。
「私が上に立ち、真の世を創り上げましょう。」
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此れは新たなる創生神話である。
「___________変えてみせますよ♪」
手に握る神聖剣の輝きが黒へと染まり、鎌の形へと為していく。そして一振りをすると大地は割れ、數多の魔達が地を這い出る。
「んふふ、ふははははあははははははははははははああああんんんん!!」
勇者の力、【ラディアンス(輝きの神聖剣)】は聖の手に落ちた。
(ユーノさん........愚かにも世界により選ばれた勇者)
勇者は長限界が訪れないと言う反則じみた特がある。故に戦えば戦うほど強くなっていくのだが闇の化と化したディアーナによりユーノは捕食されたのである。それ即ち勇者ユーノの技能と特を継承した事を意味する。
「私に敵うものはもうこの世にはいません!!ジョン、見ていますか!!私の勇姿、希を!!!この世を滅ぼし貴方と私だけの理想郷を.........救済とした世を..........」
ディアーナは力とした様にその場へと崩れ座る。
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「............ジョン............」
朱い雫が頬を伝い、想い人の名を口にする。
「私は...........」
全てを賭して私と言う存在に邂逅する為にだけにひた走り続けたしい者が眼の前で灰となった。
「なんで.............なぜッ!!!」
床を叩きつける。どうしようもない程の悲しみと怒りがを締め付ける。
「苦しい.......苦しんですよ.......ジョン副団長」
深淵に侵されるよりも苦痛をじる。止まらない悸の高鳴り。頭が破れそうな程に激に駆られる。ジョンに會いたい。
「そばに..............いてしい.....」
なのに大切な貴方はもうこの世には存在しない。何故?
「ジョン......貴方が......隣にいてくれるだけで........本當は............それだけで...........」
堪えられない。世界を救済したいと言う目的は確かにある。けれどもそれは貴方が隣に居てくれるからこそ、達されるもの。
「天界を滅ぼし、人を粛清して始めて世界は掌握される。けれどそこに殘るのは孤獨しか............ない」
虛無。何もない。私にとって何もない未來。されど世界を変える。変えなければ。人類の救済となる未來を創れと強迫観念にも似た意志が私を突きかす。
「どうしてっ!!どうしてなんですかぁ!!!........私を...........」
涙は止まらない。悲しみが哀しみが収まらない。どうすればこの痛みを抑えられよう。天界を今すぐにでも落とし、鬱憤を晴らせばこの痛みは取れるのだろうか?
「.........置いて...........逝ったのですか」
思考が止まらない。考え続けなければ本當の意味で壊れてしまいそうで__________。
「貴が最後の天界人。確かに地上にいた誰よりも此処の住人は強かった。あの【骸の魔】でさえ、天界人が二人いれば事足りるでしょう。」
怯えた様子でこまる最後の天界人。その震えた様子を歪な笑みを浮かべながら観察する。
「これ程の力を持ちながら___________何故、地上の生命を救わなかったのですか?」
髪を摑み上げ、最後の天界人へと問う。
「人は己の力で突き進まなければ長しない。墮落は人を貶める。故に困難に立ち向かう勇気と意志を獲得しなければならない。」
「行き詰まった困難でも手を差しべようとは思わないのですか?」
「肯定。不浄な道を進むと言うのならば助言し導こう。だが、我らが直に手を加える事は決してない。」
天界人の瞳に曇りはなく真っ直ぐとディアーナへとそう伝えた。ディアーナは苛立ちを覚えると同時にその天界人を瘴気で跡形もなく消し去る。
「殘すは忌々しい神のみ.........己の眷屬である天界の住人が殺戮されようが座、するのみですか。本當に私を苛つかせる。」
天界の中央に尊大に存在する巨城。そちらへとをかし前進する。
(天界に侵攻して既に一刻は経ちます_____瘴気による包囲網も完し、最早この聖域に存在するのは『神』のみであると斷定も出來ている。なのに、何故逃げないのでしょう?)
城の門兵である2の機神兵裝を容易く破壊し『神』が居るであろう居間以外の城を瘴気により薙ぎ払う。
「あぁ、やぁっと出合いましたね♡」
翠のしい髪、容貌、神々しくもある裝飾を著飾り此方へと鋭い眼を向ける神。その尊大なお姿に一禮をする。
「星の意思のみならず、冥府の闇とも結合した醜悪なる聖。悲しい。ただ悲しい。貴方は人の希、架け橋となるであったというのに。」
「巫山戯たことを抜かす。希と絶を互に與え、導きもしない上位者はこの世界には必要ありません。は私が與えましょう。希も私が與えましょう。その存在意義を証明して見せましょう。そしてその過程で______________『お前』は邪魔だ。」
瘴気で神を包み込む。だが直ぐに瘴気の網は四散した。
「『人』が『神』に挑戦するなど言語道斷。その闇ごと聖で振り払ってくれる。」
玉座を立ち、杖を顕現させる神。そしてその矛先がディアーナへと向くと同時にディアーナは腹に大を開けた。
「ぐふ......ですが、この程度直ぐに修ふ」
全が全て片となり弾け散る。しかし、直ぐに瘴気により再生し鎌(聖剣)を現化させる聖。
「それはっ!?........勇者をも取り込んだのか!!」
神は鎌を見ると驚愕の表を浮かべ、高速で聖へと駆ける。
「最早、手加減の余地は無しっ!!來なさい、聖剣クラウ・ソラス!!!」
天から雷が降り注ぐと同時に神の手には一振りの聖剣が握られていた。そしてその剣を振り上げ、ディアーナへと振り下ろす。この世界には三つの聖剣が存在する。二代目剣聖が使っていた【村正】、ユーノの心象にある【神聖剣】、そして最後の一振りである【クラウ・ソラス】である。
「神ッ!!」
互いの聖剣が衝突する。周囲一の建造は吹き飛び、天界一帯に衝撃が広がる。
「ぐっ!!」
しかし、神は聖の膂力に押し負け一歩後退する。
「一どれほどのものを取り込んだッ!!貴様の行いは世界の理を崩す忌であるぞ、聖!!」
「それ程まで人類を追い込んだ貴が何を言いますかぁああ!!」
互いの剣戟が差する。神聖剣共に勇者を取り込んでいるディアーナにとって既に『』は弱點にあらず。故に聖剣クラウ・ソラスの力はディアーナを害してはいなかった。
「_____________此れにて神の時代は終幕です。」
鎌による一撃はクラウ・ソラスを砕き、神の首へと突き刺さる。神はその場へと膝を付き、クラウ・ソラスを地面へと落とす。
「貴様の思い描く未來に希はない、墮ちたる聖。」
「希とは自分で摑むものです。々その愚かな過ちを悔いながら死ぬがいい。」
ディアーナは背を向け歩き出す。神は時期に死ぬ。故に世界の粛清へと移行し、新世界を創り上げるのだ。
「_______貴様の想い人である黒騎士は生きている。」
神はそう言い殘すと、その場へと倒れる。ディアーナは即座に神のを摑み上げ、問う。
「何処ですか?」
既に死にの神へと瘴気の力で延命させながら言葉を割らせようとする。
「ぐっ.....ぁ、この世界ではない何処か、遠い世界の果に....」
「そうですか。」
神の首をへし折り、投げ捨てる。
「へ、へへ.......あはははは!!!」
ヤッタヤッタっと小さい聲でらしながら自分のを抱き締め、悅とした表を見せるディアーナ。
「む、迎えに行きます.........今すぐに....あぁ.......ジョン♡」
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