《闇墮ち聖の語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第六十八話『 明けの明星』
この世界には様々な創作が語られ紡がれてきた。そして誰しもが必ずは一度は想像した事があるのではないだろか。自分がその世界の住人だったらどんなに楽しく幸せになれたのだろうかと。
人は誰しもが創作に描かれた語に憧れる。例え葉わないと分かっていたとしても心の奧底にはその願がめられているはずだ。登場人になれなくともこの世界、現実にいてくれたらもしかしたら自分の人生は違ったものになっていたかもしれない。もちろん現実にいたからと言って仲良くなれる保証はないのだが。
自分がこよなくす作品、創作ならば語に関わりたいと思うのは自然な事だと思う。歴史と共にアニメ、漫畫、小説、ドラマ、伝承、伝説、噂、言い伝え、神話などの様々な【創作】は生み出されて來た。其れらは現実では葉えられないものを人が思い描き形にして來たものである。創作には人間が持ち合わせる願や妄想が詰められている。
______この語はそんな創作達に魅せられた青年の語である。
「はぁ________」
ため息を吐きつつ大學の合格発表を見終えた青年は帰路へとつく。
(この世界はなぜ、こんなにも退屈でつまらないのだろう。)
結果は合格していた。けれど青年の心には喜びと言うものを一切じられなかった。つまらない學業や仕事と言ったサイクルを繰り返す毎日。平和ではあるが、自分は特別な語の主人公にはなれないと思い知らされる。これから送るであろう人生もまた同じなのだろう。
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「________違う世界に連れて行ってくれよ。」
心の底からそう願う。例を出すのなら學舎にテロリストが出現したり、ゾンビパニックにならないかと何時だって夢想する。もちろんトラックに轢かれたり過労で死んでまで行きたいとは思わないが。
(はぁ、嘆いていてもしょうがないよな。)
要約するに刺激がしいのだ。普通では味わえないであろう未知を。小説を読む際に常々じるあの覚を現実で験したいのである。しかし、どんなに妄想を膨らませたとしても現実に起こる筈もなくただ日常が過ぎて行く。
(帰って本でも読もう。)
想像を膨らませ、現実から目を背けるように語に沒頭出來る様に。
ルシファー (Lucifer)、又はルキフェル、ルシフェルは明けの明星を指すラテン語である事はご存知だろうか。をもたらす者、そう言う意味合いを持つ悪魔・墮天使の名が神へと叛逆をした者の名である。キリスト教、カトリック教會、プロテスタントにおいて墮天使の長であるサタンとは別名であり、神の敵対者(Satan)の墮落前の天使としての呼稱である。
「神への反逆、そして敵対者へ」
青年は本を片手にソファーへと橫になる。古本屋で適當に何冊か購したの一冊が神へと反旗を翻した天使についての語だった。とは言え真面目な聖書ではなく、ライトノベルのように何処かの著者がファンタジーものとして書き下ろしたものだが。
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「ん、意外におもしろい。」
文章へと目を向ければひたすらと語の世界へと引きずりも込まれていく覚に陥る。
「明けの明星なんて大層な名だな。」
僅かに頬を上げ苦笑を見せる。青年は凝った設定だと心の中でじた。
『黎明の子、明けの明星よ______________原初の子、アダムに仕えるのだ』
そして語はこの神の言葉から始まる。全ての絶対的な存在である神が明けの明星、全天使の長へと命令を下すのだ。
「主の意向のままに」
そして神の遣いであるルキフェルもまた神から與えられた命へと頭を下げ承諾するのだった。神の指令は絶対かつ失敗は許されない。天使とは神の従順な下僕である。故に反旗的な志は思考するだけでも大罪である。
”天使は人間に屈するべきではない”
しかしながら熾天使でもある明けの明星はかつて天界から地へ落とされた同胞であった天使の言葉を思い出していた。その者の名を【アザゼル】と言う。「見張りの者たち《エグレーゴロイ》」、地上の人間を監視する役割を最初に與えられた天使。
「..............」
結果的に屈するべきにあらずと神へと異議を唱えたアザゼルは神の怒りを買い、地へと落とされたのだが。そしてそれに立ち會っていたルキフェルはなからずアザゼルの気持ちを今となって理解する事が出來ていた。
(何故、私にこの様な無意味で無価値なお役目をお命じなられたのか.....)
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天使長であり最も神の近くで守護の役目を務めてきた自に何故このような役目を與えるのかと疑問にじてしまった。その思考そのものがあってはならないものである事は重々承知である。
「..............」ギリ
だがじざるを得ない。この不快に満ちた。至高の熾天使である私が擔う様な命ではないと。
(.....................愚かな煩悩は捨てるべきですね)
しかし神の次席、そして天使長である明けの明星にそのような邪念は在るべきではないと心に止める。
「浮かぬ顔をしているではないか、明けの」
ルキフェルに次いで創造されたであろう天使【ベリアル】が尋ねる。名の意味合いは「邪悪な者」もしくは「無価値なもの」である。天上時代にあってはルキフェルの兄弟であるミカエラよりも尊き位階にあったと自ら語るという。余談ではあるのだが、天使に別はない。
「ベリアルですか。」
両者は現在、地上よりも遙かに高い上空から地上を見下ろす様に神が創造したであろう人間を観察していた。
「泥人形の面倒を主様から命じられたと聞いたが真か?」
他の天使が発言すれば不敬の罪で斷罪される程の発言にルキフェルは顔を顰める。しかしベリアルにはそれらを発言する権利が有る為に意に返さず言葉にするのだ。破壊のために神は敵意の天使ベリアルを想像した。彼の支配地は闇の中にあり、彼の目的は邪悪と罪を振りまくことであるがために。
「言葉を慎みなさい。『人』は神の手で創造され、寵をける者達。泥人形など、彼らをその様な言葉で比喩などしてはなりません。」
真っ直ぐに下界を捉えながらベリアルへと注意を促す。
「くく、汝はいつにも増して真面目であるな。」
ベリアルはクスクスと笑うと、肩に手を置き告げる。
「困り事があればいつ如何なる時と言えど助力する。遠慮せずに我を頼れ。」
そう言い殘すと燃え上がる戦車に乗り天界へと戻って行った。
「______謝します、ベリアル。」
其れを見屆けると原初の人間である【イブ】と【アダム】がいるであろうエデンの園へと十二の翼を羽ばたかせ下降する。
「うふふ、アダムったら!もう!」
「別に可笑しくないだろ、はは!」
木のを食べながら無邪気に笑うアダムとイブ。ルキフェルはその姿を目に毒を吐く。
(つくづくと呑気なものだ。)
大木の枝へと座り二人の行を監視する事にした。
「おいしいわ!」
「そうだね!」
水を飲み、木の実を食べる毎日。その繰り返しが淡々と繰り返される。既に監視をし始めてから暫くと立つがこれ程時間の無駄であるとじた事はないだろう。
「______主よ」
力とした様子で空を見上げる。天界の統括はルキフェルに変わりメタトロン(Metathron)へと任せている。通説では大天使ミカエラよりも強大とされ、神と同一視する場合もある。その名の意味は「玉座に侍る者」。神の代理人であり天界の書記でもある。
(私は_____主のお側に在る事こそが真の使命であると考えます。)
本來であらば天界からでも地上の監視は出來る。だが、アザゼル発言がどうにも引っ掛かり下界へと降り監視する事を選んだのだ。
”天使は人間に屈するべきではない”
同胞であった彼の言葉に正義はあったのか。それを確信するべく下界へとを降臨させたのだ。
「____________下等生が。」
無意識にそう言葉がれる。其れに気づいたルキフェルは口元を手で覆い靜かに目を瞑った。
(............私は何を言っているのだ。主の言葉は絶対。そこに過ちや穢れは無い。私はただ命じられた使命を全うす
るだけでいいのです。)
が沈み眠りにつくアダム達を見屆けるとルキフェルは翼を羽ばたかせ、天へと向かい飛翔した。これ以上人間を監視すれば己の神が歪んでしまうという危機から逃れたかったのだ。
「戻ったのですね、我が同士________明けの明星よ。」
天界へと帰還したルキフェルをお出迎えする下級の天使達。
「機嫌よう。」
立ち止まらず直ぐに神の元へと向かう。今直ぐにでも自の存在意義で在る神のお姿を目にしたかった。
「明けの明星、此処に帰還致しました。」
主が座るであろう神の間へと翼を羽ばたかせる。そして雲の一つへと著地し、膝をついた。
”我が子らは斷の木の実に手を出しておらなんだな”
第一聲に神はルキフェルに対してそう尋ねた。
「問題はありません。」
原初の人間らに問題がない事を報告する。
”我が子らが約束を守り長をして行く、まさに祝福よ。そして人はいずれ自らの力で長を繰り返し自立して行くのだろう。続き、子らを見守るのだ”
神の表が普段よりも優しい表である事にだづき、に靄をじる。
「っ.................意に」
しかし、それを悟られまいと表には出さず平然を裝った。神の座から退出する。そして地上へと戻ろうとした折、兄弟であるミカエラと鉢合わせする事になる。
「やぁ、ルキフェル。」
微笑を浮かべる話を掛けてくるミカエル。
「_________君は何故、僕を後任にしなかったんだい。」
そして徐々にミカエルの表に闇が指し、睨みつける。
「私は私の後任に相応しい者を選定しただけです。他意はありません。失禮します。」
ルキフェルはもう何も話す事はないと背を向けミカエラとは反対の方向へと歩き出す。ミカエラはその後ろ姿を視界から消えるまで見つめ続けるのであった。
「「 アケノメイセイ」」
36対の翼と36萬5000の目を持ち世界と同値の広大さ、強大な力を持つ「炎の柱」、メタトロン。天界の中心に存在し、神の代理人とまでも呼ばれる存在が自を迎える。
「「ウカヌカオヲシテイルナ。」」
無數の目がギョロリく。
「私は迷っているのかも知れません。」
「「テンシトテマヨイハショウジル。ダガ、ナニモオソレルヒツヨウハナイ。ワレラハツネニシュガオラレルノダカラ」」
ルキフェルの眉間に皺が寄る。
「助言、謝致します。私は続き、【人】を監視しなければなりません。続き代理は宜しくお願いします。」
の靄が更に濃くなるのをじ、天界にある統括室へと戻る事にした。何故だかは分からないがが張り裂けそうな気分にいる。
(この気持ちは........)
神の人間に対する表を目にしてからか気持ちがざわついている。どうしようにもない嫉妬心、怒りがをふつふつと掻き毟る様に自分を蝕んでいくのがじられる。
「何故ッ!!」
(あの様な泥人形に主は天使以上の寵を向ける!)
我ら天使は常に主の命を聞きその意向に従って來た。數萬年、數億年という無限にも等しい時を創造されたその時から。
(なのにっ)
頭を抑え膝を付ける。的になる自分が可笑しい事は理解はしている。けれどもを抑制出來ない。瞳から涙が流れ落ちるのをじる。
(ダメだ、邪念を捨てなければ...)
アザゼルの思想を完全に理解してしまった。神の向けるあの表は天使達へ向ける視線よりも_____
(_________それでも私は)
「下界へと戻らなければ..........主の命...........を....」
天使は本來睡眠は取らなくても良いのだが、時折、唐突に眠りへとつくことがある。その際、予知夢、過去の景などを世界の意思なのか神の気まぐれなのか天使達へと見せる事がある。そしてルシファーは睡魔に爭う事が出來ず意識を手放していく。
”天使は人間に屈するべきではない”
同胞であったアザゼルが神へと意見を進言する景が眼前に映っていた。
「言葉を慎みなさい、アザゼル。主の前ですよ。」
そしてかつての自分はアザゼルを諭そうとしている。
(私は過去の景を見ているのですか。)
過去の自分は神に対して一切の疑問もじなかった。故に人間に仕える事も何かしらの意味合いがあるのだろうと考えていた。
「天使達は主の寵をする為にを捧げている。ですが主は人形へと仕えろと申す。私にはそれが無でならない!」
神に疑問を持つ事は大罪である。
「主に対しその無禮、萬死に値する!」
故に過去の私は槍を手にアザゼルを自ら斷罪しようとした。
『________控えよ、明けの明星』
しかし神である主に止められる。
『アザゼルよ、其方には罰をけて貰う。』
神を否定するに等しい行為。それを意味するのは天界からの永久追放。
「ッ!」
アザゼルは主へと敵意を向ける。
「我ら天使の気持ちなど貴方からすればどうでも良いのでしょう。明けの明星、貴様もいずれ綻びに気づく筈だ。」
その言葉を最後に重力に引っ張られる様に地上へと墮ちるアザゼル。彼の翼は焼き焦げ、黒く染まって行くのを最後に確認出來た。
「_________はっ!?」
意識が覚醒する。そして自が今まで眠っていた事に気づく。周りには複數名もの天使達が自分を中心に心配する様に看病をしてくれていた。
「目が覚めたのですね、明けの明星。」
「え、えぇ______ご迷をお掛けしました。」
謝罪をしつつ起き上がる。天使は本來、が薄い筈なのだがルシファーの心は複雑に絡み合いながらも蠢いていた。
「_______私は」
そして蠢いていたが一つとなり決意へと変わる。
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