《闇墮ち聖語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第七十話『 墮ちてきた天使』

「........」

本を読む手が止まる。余りの凄さに言葉が出なかった。

「止まらない、か。」

確かに明確な到達點があるのならばそこを目指し頑張る事が出來るだろう。どの語の主人公にも目標や目的がある。故に自分の存在が時々嫌になる。何を目標にして頑張ればいいのか分からないのだ。其れを探すために大學では言語文化學科を専攻する事にした。世界にも意識を向ける事で自分が何者かである事を見い出すために。

「俺も進むしかないんだよ......」

本を閉じソファーから立ち上がろうとした剎那______大きな衝撃が自分の住むアパートを襲った。煙が舞い咳込む。

「おほおほ、一何が______」

そしてその衝撃の正が判明する。

「______________天、使?」

アパートの部屋一面に白き羽が揺らりと舞う。テレビは破壊されその上にその存在が倒れていた。天井がブチ抜かれている事から目の前の天使が空から落ちて來た事は確かだろう。壊れたスピーカーからは音楽が流れる。

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「なんだこの狀況は......」

時計の針は既に一時を過ぎ深夜である。目の前に仰向きに倒れる天使は眠ったままだ。正直な話、どう対処して良いか分からない。

(______警察を呼ぶか?)

『もしもし、家に天使が落ちて來たんですけど來てもらえませんか?』なんて言っても恐らくは信じて貰えないだろう。悪戯電話、又は此方が業務妨害で逮捕されかねない。

「.............痛っ!?」

天使にれようとした瞬間、手が火傷した。直ぐに洗面所に向かい手を冷やす。

(普通じゃない______なんなんだ、こいつ)

この得の知れない天使には気軽にれられない為、かす事も出來ない。

(そもそも離すのが早かったから軽い火傷で済んだけど、しでも遅れていたら)

恐らく手が焼き消えていただろう。目の前に転がる存在は異常だ。何かしらの力がこの天使を守っていることは確かだろう。

「はぁ、目を覚ますまで待つしかないよな。」

取り敢えず周りに散らばった瓦礫類を片付けた後、ソファーに座り遠目でその天使を見ながら何も出來ずにいた。

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(それにしても本當に綺麗だよな。年にもにも見える。)

ソファーを立ち上がり再び天使の元へと近づく。

「もしかしてアンタは_________ルキフェ」

その名を口にしようとした瞬間、天使は唐突にその場を立ち上がり総勢12枚の翼を羽ばたかせた。

(.......綺麗だ)

狹いアパートの部屋は一面白へと変わりそのしさに目を奪われる。

『半數の翼は灼かれた筈』

目の前の天使が言葉を紡ぐ。青年は驚きでその場で固まってしまう。

『私は地上へと完全に墮とされたのですね.........ふふ』

妖艶に微笑むその天使に釘付けになる。完された容姿。欠點がない程にしい。思わず見惚れてしまう。

『叛逆の時は今より始まる』

だが、その天使の言葉をけ正気を取り戻し、冷靜にその天使へと聲を掛ける青年。

「アンタは__________」

ゴクリと唾を呑み込み天使を見上げる。

「______________ルキフェルなのか?」

この天使は先程まで読んでいた本の登場人の可能が高い。先程の発言と言い空から落ちてきた事実と言い辻褄が合い過ぎる。

『何やら不愉快な聲が聞こえますね。』

天使は青年へと視線を移す事なく強大な圧を掛ける。ズゥーンッと言う音と共に青年のは地面へと叩き付けられた。

「ぐあ!?」

が床へと押し付けられる。立ち上がろうにも1mm足りともかない。

『人間風如きが聲を発するな。』

冷たい聲に青年は冷や汗を流す。

(殺される______このままでは殺されてしまうっ)

『此処で貴方を殺害すれば主は哀しみに暮れるやもしれません。ですが、それだけでは主の激う事は出來ないでしょう。』

青年は必死に思考する。この狀況を抜け出す糸口はないのかと。

(目の前にいる天使は恐らく自分をアダムかなにかだと勘違いしている。)

かないが視線だけをルキフェルへと向けぶ。

「俺はアダムではないぞ、明けの明星ッ!!」

天使はそれを鼻で嗤うと羽をしまい倒れる青年の頭部へと足を置く。

『言葉には気をつけなさい、人間。我ら至上なる天使は貴様達よりも遙かに優れた上位種。元來頭を垂らすべきは貴様達、人種である。」

の微笑みを見せる天使。き聲を上げながらも抵抗しようとするが前述の通りかない。

「くっ......オレの顔を見ろ!!」

再び力を振り絞り天使へと向けぶ。

『騒がしい泥人形だ。一何を言って』

顔を確認する為に天使は青年の頭から足を退け確認する。

『馬鹿な___________アダムでは、ない?』

天使の表が驚愕としたへと変わっていく。

『あ、ありえません...........!』

大きな突風が突然部屋へと舞い込むと窓ガラスが割れる音が聞こえる。

「うぅ.........風がっ.........」

風が鳴りやむ。それと同時に重圧による重みもじられなくなった。

「彼奴は何処に消えた?」

青年は急いで立ち上がり周りを確認するが既に天使の姿はそこにはなかった。殘っているのは部屋中に散らばる白銀の羽のみだった。

「........修繕費」

「人間は........アダムとイブのみの筈です!!」

天使の翼を羽ばたかせ天空から世界を見渡すルキフェル。しかしその表には焦りが見えていた。

(私は天界を追放された反逆者........にも関わらず十二羽は白のまま全てが揃っている。)

アゼゼル然り、天界から落とされた者は翼が焼き焦げ黒と染まる。しかし、翼は異常のない狀態で背中から生えている。

「私は......一、何処にいるのですか?」

何よりも地上の変化が気になる。これ程の文明があの一瞬で出來る訳がない。煌びやかに輝くビル群。そして発達した文明には驚かされる。

「____________理解の範囲外であるのならば!!」

白き翼を纏う今ならば天界へと戻れる。反逆者である自分が天界へと戻れば攻撃をける可能もある。だがそれ以上に地上の変化が気がかりだった。これ程までの変化に天使達が反応しない訳がない。

「なっ!?」

空高くへと昇るが天界への門は見えず大気圏外へと出てしまう。

「天への道が閉ざされている。いえ、此れは.....」

熾天使としての権能を使い世界を観測する。

「.............まやかしであると信じたい。」

此処は神、そして天使が存在しない世界である事が判明したのだ。膨大な広さを持つ宇宙に置いても天界の存在を認識出來ず、ルキフェルのからは力が抜けた。

「同胞達へと捧げる為の栄、叛逆全てが無駄となると言う訳ですか。」

恨めしく地球を見下ろし拳を握り締める。

「何も殘らないのですね。此れこそが貴方が私へと與える真の裁きですか。」

此れこそが己に神より課された天罰かとを噛みしめを流す。

「.....やはり主は殘酷でありますね。何者よりも自己的で殘忍、そして【悪魔】的だ。」

力した様に重力へとを任せ墮ちる。

(永久に海底の底に沈むのも悪くはありませんね.....)

眼を瞑りこのまま大海の底に沈むのも良いかと思考が巡った時、天使の脳裏には先程の人間の姿が思い浮かばれた。

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