《闇墮ち聖の語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第百四十三話『決別』
吾輩の存在がおとぎ話である事にはなからず驚きを隠せずにいた。仮に語の視點がではなく銀狼へと向いていたのであればけっして萬人にける様な優しい語とはなっていなかっただろう。
そしての冒険章がギリシア神話が如く事細かく語らていたのであれば話になどならなかった。
一重に都合の悪い場面を切り抜くことで、話は立しているのだ。しかし、反面、自の出自が話である事は好ましいとも思う。健気な、思慮深い賢狼。とても良い響きだ。いろいろな子供に語は伝わりけ継がれて來たのだろう。
家族がいかに大切な存在であり尊いものであるのか。それを分かりやすく語にされた語こそが『銀狼と』の本懐。原點にして、我らが生涯。語は簡潔なれど、心に響くものがあった。當人らにしか分かりえないこのをどう説明すればいいのか分からない。それでもただ一つ言える事があるのだとすれば、親しき者は救うべきであると言う事だ。
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命を掛けてでも大切な者は救わなければならない。
孤獨に生きた銀狼に親しき者達が出來た。一人は同じ世界の、異界の神に遣えていた天使、深淵の化生、呪の子、そしてこの星にて生まれた青年。この者達を救えるのならば銀狼は喜んで命を捨てるだろう。例え世界に被害が及ぼうとも。
(......繋がりが、消えた?)
ブランチェは困していた。先ほどまでじていたカミーユとの繋がりが突如として消失したのである。
(グエン・サガンの孫が死んだと言うのか........)
樹木の檻にて拘束されるエルリュングは驚きの表を見せ、遙か先の景を千里眼を使い覗き見ていた。
(それに、孫の他に三の.......)
「一何が起きたと言うのだ.......」
エルリュングは狀況を理解出來ずにいた。ゲシル・ボグドーの神気が消えるのをじとり千里眼を使ったのだが、戦場にいる全ての者が死んでいたのだ。
「.............ッ」
ブランチェは大地の権能を使い現狀の把握を務めると、目を見開き即座にその場を駆け出す。
(冗談だと言ってくれッ!!)
「お、おい!私を出せ!!」
エルリュングは置き去りにされた事でび聲を上げる。
「くっ、厄介な柵だ。ビクともせんとはな。」
トライデントをぶつけ樹木を破壊しようとするが、強固な為に破壊が出來ない。
(私の権能は運力にのみ効力を発する......)
実に不便な権能だと毒をらしながら、王座を構築し腰掛ける。
「くく、だが都合は良い。この柵にさえ居れば私は襲われる心配はないのだからな。」
大樹は強力な神力により構されており、相當な力で無ければ破壊をする事は不可能だった。其れは即ち中にさえいれば外敵からの危険は低くなるという事だ。
「_____________襲われないと思っていたのか?」
しかしエルリュングの思とは裏腹に、宮殿に引きこもっている筈の人が大樹の外にいた。両目は閉じられており、此方へと顔を向けている。
「な、なぜ貴殿が此処にッ!」
王座を立ち上がり揺の表を見せるエルリュング。
「貴様を”殺し”に來たからだ。」
大樹の隙間からエルリュングを捉えると閉じている左目へと手を當てる。
「ま、待ってくれ、強大な打ち手、や、やめるのだ、我らは仲間の筈ッ!!」
そして左目に當てている手を下ろすとその眼がわとなった。
「私は此処で終わるわけに......................」
その眼がエルリュングへと向かれた瞬間、エルリュングは立ったまま、絶命をした。
「_________彼との約束なんだ。」
(_______________君との約束は果たしたよ。安心して逝くと良い。)
遙か遠い水源へと向かい呟く強大な打ち手。そして左目を閉じ歩き出すと隣にメイド服らしき服を著たが現れる。
「宮殿、壊れちゃった。帰る場所、ない、よ?」
「新しい場所を作れば良い。」
「そう、だね、バロール、頭、いい。」
「...............芙蓉............カミーユ」
戦場であった場所に辿り著くと四もの死が転がっていた。勝者はなく敗者もなき無慈悲な結末。復讐の矛先すらも存在しない。いや、するとなればこの世界へと自分たちを召喚した者だろう。
「何故だ.............何故、吾輩を殘し.......」
カミーユのを抱き締め涙を流す銀狼。
「.........吾輩は......何一つ.......」
芙蓉へと目を移すと敵に斬られたであろう首が橫へと転がっていた。しかし何故だかその表は何処か満足したものであった。
(守ると誓った手前、吾輩は何も守れてはいないではないか.........)
「巫山戯るなッ!!!」
ブランチェは怒りの矛先を大地へとぶつけた。巨大な鉤爪により周囲の大地が抉り取られる。
「..................全てを與えると言ったな。」
王冠戦爭の勝利者に與えられる権利。ブランチェの眼は冷たく殺意に満ちたものになる。
(ならば吾輩がそれを摑み、らの命を蘇生させる。)
「.............吾輩は手段は選ばぬぞ。貴様達召喚者は皆殺しだ。ひとり殘らずして殺戮してくれる。」
かつて人間が襲って來た時の様にこの白き皮を赤に染めてやろう。
- 連載中131 章
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