《闇墮ち聖語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第百五十八話『尾行』

「なぁ、どうするんだ?」

ラクナウ市にあるレストランにて晝食を済ませると青年はそう口を開いた。

「どうするとは?」

ルキフェルがクスリと笑いながら返事を返す。

「いやいや、気づいてるだろ?」

訓練をけてからと言うもの殺意や気配の知に鋭くなっているのだ。流石に此方を何者かが監視していることには気づく。

「放置でいいんじゃあないんでしょうかぁ♩」

ディアーナは食後のコーヒーを呑気に楽しんでいた。

「どう考えてもユーノでしょーが!」

興味や好奇心といった視線ではない。明確な敵意が含まれている。気配は消せても殺意は消せていない。あれはワザとやっているのだろう。俺はここにいるぞ、と。

「ジョンよ、仮に危険が曬される事になったとしても、それはディアーナの責任なのだ。案ずることはない。」

「きっちりと己の力で解決するのです、ディアーナ。その間、ジョンは『私』が守り通しましょう。」

しっしとあっちへ行けと手を軽く振る天使に苦笑を浮かべるディアーナ。

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「お二人方は厳しいですねぇ、もぅ。」

この二人は協力する気はないのだ。三人で袋叩きにすれば簡単に勝てる筈なのに、だ。ユーノの境遇は同に値するが奴は俺たちにとっての敵だ。ディアーナ単を戦いに行かせる訳には行かない。

「みんなで戦った方が勝率が高くなる。ディアーナ、オレは手伝うぞ。」

ルキフェルとブランチェは怪訝な表を見せる。

「ならぬ。ジョン。其方には力が宿っていよう。しかし、それを十全に扱える実力には到達してはいない。」

「勇気ある者を『勇者』とします。しかし、それは同時に愚か者でもある。己の力を把握してこそ初めて、人は英雄となるのです。ジョン...............貴方はまだ、その時ではない。」

その二人の発言を聞いたディアーナは高笑いを始めた。

「アハハハハ!!お二人とも正気ですかぁ?勇者とは無理難題に立ち向かってこその勇者!!蠻勇無くしてどう長すると言うのですか!」

周りの客らは何事かと目を此方へと向ける。

「目立ち過ぎだ、ディアーナ。」

耳打ちをするとクスリと更に深い笑みを浮かべ席を立ちあがる。

の勇者とお話をしてきます。」

その臺詞と同時に店の全てのガラスが弾き飛ぶ。客や従業員らは悲鳴を上げ、その場へとうずくまる。中には破片が刺さり怪我をする者もいた。

「おいおいおいおい!何してんだ!!」

ディアーナを止めようとするするが、片手で制される。

「出て來なさぁい、ユーノ♩」

即座に裝を戦闘服である修道服へと変えユーノがいるであろう方向を見つめる。

「大膽な事をするね、聖ディアーナ。此処は市街地だよ?」

ユーノは人ごみの中から姿を現し、剣を鞘から抜く。

(どうする、どうする!!此処でやり合うってのか!!)

「ま、待ってくれ!此処にはまだ沢山の人間がいるんだぞ!!」

青年は冷や汗を流しつつ狀況を理解していないであろう周りの人間たちへと目を向ける。

「ジョンよ、下がれ。」

ブランチェが冷たくそう言葉にだす。

「既に戦いの火蓋は切られたのです。」

ルキフェルまでもがそう言葉にした。彼らと自分との倫理観が完全に違う事は理解をしていたが、このままでは何百、何千人という人間が死んでしまう。

「ふふ、そぉれぇ♩」

ディアーナは瘴気の波を店から店外へと放出し數多の人間を巻き込みながらユーノへと襲いかかった。

「_____外道なところは変わらないねッ!」

ユーノは迫り來る膨大な瘴気を聖剣のもと一刀両斷する。しかし二つに割った瘴気の余波が周りの人間を襲い、瞬く間に命を奪っていく。

「ふふ、外道と言いながらぁ貴方は何十人もの人間を空港で殺したではありませんかぁ♩それに今だって助けずに見殺しにした♪」

杖を歪な鎌の形へと変え、ユーノへと襲いかかるディアーナ。

「これはっ____ディアーナ、お前ッ!!!」

ユーノは初撃を綺麗にけ流し、剣をへと持っていく。

(この鎌は闇に墮ちた、聖剣ラディアンスか!)

しかしディアーナはそれを瘴気の盾を用いる事で防ぐ。

「ご明察。貴方が振るう力は_______私も扱えるのですよぉ、ふふ♪」

(くっ、今ので何人死んだんだっ!!)

青年は瞬間的に短剣を出現させ、近くにいた人間を救った。

「い、いったい何が.......」

「貴方.....」

救われた老夫婦は狀況が分かる筈もなく怯えた表でその場へとへたりこんでいた。

(ルキフェル、ブランチェは何をしてるんだよっ!!)

二人の姿が見當たらない。店から消えていた。急ぎ店を出ると悲慘な景が広がる。

「くそ、ディアーナの奴、好きかってに暴れやがって!」

數え切れないほどの死の數、そして倒壊した建、地面は至る箇所が砕け、正に戦場と化していた。

「ジョンよ、しかと刻め。あれが______真の創作の戦いだ。」

ブランチェの聲が空から聞こえて來る。青年は顔を上げると其処にはルキフェルとブランチェが遠くを傍観する様に建の最上階にて立っていた。

「ディアーナは今何処にいる!!」

青年はぶ。

「行くおつもりですか?死にますよ。」

天使はそう言うが、答えはもう出ている。

「あぁ、行くに決まってんだろ。アンタらも靜観ばかりしてないで行くぞ!」

「あれはディアーナの戦いだ。我輩らが手を出すのは無粋と言うもの。」

「えぇ、事の顛末を見守る事も私たちの使命。」

この二人はとことんと倫理観に欠けている。いや、ズレている。

「人が、これだけ死んだんだ。流石にこれ以上は見過ごせない。」

犠牲はなるべく抑えた方がいい。だがそれ以上に。

「あの勇者は無限に強くなれるんだよ!!ディアーナが何であの勇者を真っ先に殺したか分かるか?アイツが誰よりもRADIANCEシリーズで危険な人だからだ。アンタ達が一緒に戦ってくれれば.......」

ディアーナが殺される可能が低くなる。ルキフェル達は強いから大丈夫だろうと甘い考えで日本を出た。だが、カミーユと芙蓉を失ってしまった。

「ディアーナは先程、貴方の助力に推奨的でした。ですが、貴方は彼とディアーナの関係をご存知でしょう。」

(ユーノとディアーナの関係を理解出來ない訳ではない。)

「これがディアーナに縁無き者ならば、我輩らとて助力を惜しまぬ。」

二人が助太刀しないのはディアーナとユーノの因縁を思ってのことだ。

(それでもオレは.......)

以前は見守ることしか出來なかった。しかし、今回ばかりは違う。明確に力を振るえる加護は得ている。

「........目の前にいる仲間が死ぬかも知れない戦いを黙って見守れる程、オレは冷めた格はしてねぇ!」

オドの力を開放し大気に流れるオドへと足をばす。

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