《闇墮ち聖の語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第百七十話『聖鳥の願い』
世界とはとても広大で人の尺度では到底測れぬ程に偉大だ。この地に召喚され、我らが存在が信仰の対象とされている事には歓喜した。しかし、同時にこの世界には數多の神々が存在したとされる伝承があった。その一部が我が原點となるヒンドゥー教。
人間とは愚かな存在だ。超越した存在に対し頭を垂れる事は致しかない。しかし余りにも信徒が多過ぎる。我は不確かな存在なのかも知れぬ。だが、我が此処に在ると言う事は我が世こそが真に在った事に他ならない。この地に呼ばれた時にそうじた。しかし、毎夜の如く頭に鳴り響く啓示により、それが杞憂であることを理解した。
「____ふざけた遊戯だ。」
無慈悲な殺しを推奨とする催し、下劣極まりない。當初は無視を、ただ己の帰還の時を待った。人里にれぬ様に山林の奧底にて瞑想をし続けた。
「やぁ、君がガルーダ君だね?」
そんなある日、二人の神気を纏いし雙子が我が元を訪れる。
「何用だ、神の気を纏いし者よ。」
二人の雙子は聖獣達から降り、我が眼前へと立つ。仮にヴァジュヌ神がこの世に召喚されているのであれば我はあの聖獣らのように神の足となっていただろう。
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「ふふ、私たちと協力しましょう♩」
赤み掛かった髪をしたが我の手を取り笑う。突然な事に一度驚いてしまった。
「ごめんね、ガルーダ君。フレイアはこう言った格なんだ。」
金髪の髪を靡かせ苦笑をする神。
「貴方の神話は読んだわ!インドラ神を圧倒するなんて凄いじゃない♪私たちの世界で言うトールちゃんを倒した様なものなのよぉ♪」
嬉しそうに手をブンブンと振るうフレイア。ガルーダは困とした表を見せる。
「せっかくのいだが.......我は斷らせて頂く。」
ガルーダは一度二人の顔を見て考えると、申し訳なさそうな表を浮かべいを斷った。だが二人は口元を吊り上げ言葉を紡ぐ。
「ふふぅん♩そう言うと思ったからぁ策を考えてきているんだぁ♩」
フレイアはガルーダの背中に飛び乗り背後から抱き締めるような勢になる。ガルーダは嫌な顔せずフレイアを見た。
「策?」
「策と言っても、僕達みたいな存在がどの様な願いを葉えたいのかって事を口にするだけだけどね。」
啓示は確かに勝利者には全てを與えると言った。
「貴殿達は勝利者は願が葉うものだと思っているのか?」
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二人は頷く。
「君は靜観をして時を待っていれば元の世界に帰れると思っている様だけど.........帰れないよ。」
フレイが真剣な眼差しを向けながらそう言葉にした。
「確証はない。それでも啓示が指し示す呪いと言うのは怖いものだ。一年という短かき時間の中で五人にまで絞らなければならないのは君も知っているね。」
「戯言だな。従う必要はない。」
「其れもそうは言ってられないよ。僕達みたいな存在を何百人とこの世界に召喚したんだ。者がその気になれば僕達を容易く殺す事だって可能な筈だ。」
「其れこそ阿呆らしいな。仮に”者”と言う者が存在するとして何の目的があってこれほど無価値な爭い事をさせようとする。」
フレイアは抱きつく力を強め、ガルーダの耳元で呟いた。
「ガルーダちゃんが一番知っている筈だよ。神ってのは気まぐれで事を起こすんだ。」
ガルーダは心當たりがあるのか表を曇らせる。
「まぁでも協力関係って言っても互いに爭わず最後まで生き殘ろうって約束だよ。」
ガルーダはフレイアを下ろし、木を背に大地へと座る。
「他の者達の願いは何だ。知っているのだろう?」
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小鳥達がガルーダの肩や手のひらに乗る。
「一部、だけどね。」
ガルーダは聞かせろと目で語る。
「そうだね、今は日本と言う國に飛び立った魔師の願いでも話そうか。」
「えぇ、つまんないよ♩妻と娘ちゃんを生き返らせたいって願いじゃん!」
ガルーダは興味深く耳を傾けていた。
「妻子の蘇生。」
分からなくもない願いだ。仮に母があの蛇により殺められていたのならば奇跡を頼りにいていたかも知れない。
「フレイア........じゃあ君が話すかい?」
フレイは溜息をつき、木へと寄りかかる。
「それじゃあエルリュングちゃんのお話をしよう♩」
くるくるとその場を踴る様に話を始めようとするフレイア。
「モンゴル神話でねぇ、彼、原初の悪魔って呼ばれてるんだよぉ♩
もの凄い力を持っててねぇ、普通の戦士じゃあアレは倒せないかなぁ。君の世界で言うシヴァ神は......言い過ぎかな。ナーガラージャの方がピンと來るね。ほら、彼も地底界の最深部で世界を支えていたって言われているし♩」
自分の持つ世界の知識を知っている。その點に置いて、危機を心にだが積もらせる。
(だがそれよりも............エルリュング)
忌まわしき蛇どもの王、蛇神。警戒せざるを得ない。我が世界の蛇どもが稽な生きであったように。
「能力を教えてあげるよ。僕達では彼”ら”を倒せないからね。」
「彼”ら”.........その様な者が徒黨を組んでいるのか。」
「そうそう♩あの山羊ちゃん、どんな攻撃も効かないんだよね!それに傍に更に強力な戦士がいるんだよぉ!魔神殺しの大英雄。チートだよ、チート!誰かがあの子達をヤってくれなきゃ私達死んじゃうよぉ〜!」
英雄に悪魔、何とも奇妙な組み合わせだ。本來ならば敵対の関係にある筈だろう繋がりだ。
「何も通じぬ、か。」
笑止、と我は己の中でじた。我が拳を持ってすれば如何なものとて突き破る自信はある。シヴァ神程の破壊力は無くとも上位に食い込むであろう程の力は有していると自負している。
「面白い。」
口元を一瞬だが緩ませてしまった。その笑みを見逃す二人ではない。
「ねぇ、エルリュングちゃんのみって言うのがね_________」
悪による統治。絶、破壊と負の要素を突き詰めた願い。その言葉を聞き、ガルーダは立ち上がる。
「我がこの世にいる限りはその願いは永劫に葉う事はない。」
拳を握りしめ、紅蓮の炎を纏いながら翼を大きくと開いた。
「それじゃあ聞くけど________________君の願いは何だい?」
フレイアが問う。
「__________解放と帰還だ。」
全てを元ある形へと戻す為に。
エルリュング。原初の悪魔と呼ばれるモンゴル神話発祥の人外。悪の源。彼の能力は全てを零へと戻す。如何な理攻撃をもを傷つけず、剣や槍といった類では殺す事は不可能だろう。それに付け加え、次元の狹間へと存在を隠す事が可能である。この二つの能力を持ってして數多の神々や天族を欺き殺してきた。ただし、弱點がある。人間程度の神作では通用しないが、それ以上の種族による神干渉などの技は通じる。例を出すのならば不要の用いる魔眼と併用した香、丑の刻參りなどの。そしてバロールの様な見たものを殺すと言われる魔眼の類は例外なく通じる。要は理的なものでなければ通じるのだ。ただし、炎や風、水などを用いた攻撃は別である。
「______貴様らがこの地を地獄へと変えんとする魔王たちか。」
モンゴルの地を拠點とするエルリュングらの元へと腳を運んだガルーダ。これはカミーユらがモンゴルを來訪する丁度、二週間程前の話だ。
「客人か、はたまた敵襲か。」
宮殿の大門が開き、モンゴル大英雄が神殺しの槍を攜え姿を現わす。
「貴様達が描く野はここで散る。」
紅蓮の炎がガルーダから溢れ出し風が起きる。そして瞬きをする間も無く鉤爪がゲシル・ボクドーの鎧の隙間、目元を狙い襲いかかる。
「ふん!!」
しかしゲシル・ボクドーはその攻撃を紙一重に避け槍を橫払いした。
(この聖獣、いや、神鳥か、出來るッ!)
槍の棒部分へと屈強な腕を使い毆りつけ橫払いを阻止すると、もう片方の腕を使い毆りつけようとする。
「何という力技よッ!!」
ゲシルは鎧の側でにっと笑い、しゃがみ攻撃を回避する。ガルーダが放った拳は風と共に宮殿の一部を破壊した。
「技では無く、力を極めしものか。実に見事なりッ!」
ゲシルは後部へとバク転で距離を取り、間合いを作る。
「敵とは言え、貴様のきも稱賛に値する。」
ガルーダもゲシルへと対し、稱賛の言葉を送った。
「しかし解せぬな。貴様の様な者が悪に加擔するとはな。」
一手ニ手の攻防で相手がどの様な人なのかは一流の戦士ならば測る事が出來る。そしてガルーダはゲシルが真に悪ではない事を見抜いた。しかし、悪魔と手を結んでいる事も事実。その事が不可解でならなかった。
「________貴殿は何を言ってい「やあやあ、これはこれは遠路遙々ようこそ我らの宮殿へ、くく。」
ゲシルが槍を地へとつけ、疑問を口にしようとすると空間が抉れ、その狹間から山羊の頭をした悪魔が姿を現わした。
「原初の悪魔よ、何用だ。」
ゲシルが鋭く睨みつける。エルリュングは嘲笑うかの様に笑いながら、ゆらりゆらりとガルーダの元へと近づいていく。そしてガルーダを通り過ぎ、門の丁度真下、オルホン渓谷を背に振り返るエルリュング。
「ガルーダ、くく、神の乗り。実に下らない、あぁ、下らない。そうは思わないかね、ゲシル殿。」
ガルーダがをエルリュングへと向けるとコンコンとガルーダの分厚い板を叩き、見上げる。
「インドラ神を殺せるだけの実力を持っていながら何故、殺さなかった?怖かったのだろう。他の神々からの制裁が。いやはや稽だよ、君は。ヴァシュヌ、シヴァ、ブラフマー以外ならば大抵の相手を手玉に取れるだけの力があるはずだ。単にが無いのかはたまたバカなのか_________それとも鳥頭なのか、くく。」
ガルーダは悪魔が挑発をしたと同時に本気の一撃を心臓部へと向け放つ。その衝撃で大地は揺れ、宮殿前に広がる大地全てが焦土と化し、遙か先に聳え立つ渓谷らは砕け平原と変わっていた。
「くく、終わりかな。」
しかし今の一撃をけて尚、無傷でいるエルリュング。如何なる理攻撃はエルリュングには通じない。
「どうやら、雙対の神々が言っていた事は確かな様だ。」
拳を収め天高く羽ばたくガルーダ。
“君ではエルリュングは倒せない。”
“だから、他の人に任せちゃいましょう♩“
二人の言葉が脳裏を過る。
「確かにその通りだ。」
相の問題だという事を理解する。弾戦を得意とするガルーダにとってエルリュングの特と言うのは相容れぬものだ。
「逃げる、か。良いだろう。だけども、この始末はつけてはくれんかね。」
燃え盛るオルホン渓谷を指差すエルリュング。
「貴公へと忠告させて貰う。次にこの地を襲う者がいたのならば、我以上の強者と知れ。」
しかし、ガルーダはエルリュングを無視し、敬意を持ってゲシルへと警告した。
(遠巻きだが、我らの闘いを見ていた者がいる。仮に我らの闘いを見て戦を掛けるとならばそれは我ら以上に腕に自信があるか、阿呆の二択だ。)
なからず、この地が再び戦場と化す事は時間の問題だろうと推測するガルーダ。
「それは貴公の仲間か!」
ゲシルがぶ。
「______知らぬな。備えよ。」
その言葉を最後に飛び去るガルーダ。
「消えたか..........原初の悪魔よ、ウォフ、マナフを呼びつけろ。」
オルホン渓谷の修復をゾロアスター教に置いての天使であるウォフ=マナフへと任せるために呼ぶ。
「私を小間使い扱いか、くく。」
次元の狹間へと潛り姿を消すエルリュング。
「あの者以上の、敵。」
ゲシルは槍を強く握り月に照らされる。
(純粋な武人として振る舞うだけでは敗走をする。)
待ちけるだけでは危険が多すぎる事を今回の戦いにおいて學んだ。下手をしたら、ガルーダはあの一撃を襲撃の為に用いていた可能もあったのだ。
「..........敵対者がこの地へと腳を踏みれた時點で容赦はしてはならぬと言うことか。」
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