《闇墮ち聖の語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第百七十七話『新たな仲間』
「はあ.........はあ.......」
息を荒げ、貧民街の最奧で腰を下す蚩尤。腹には風が開けられ肩は大きく切り裂かれている。神である蚩尤であろうと、この重癥では持って數分だろう。
「剣よ、私の代わりと在れ。」
五兵のうちの『戟』を依り代に傷の代替わりをさせる。しかし、その代償としてその武は完全にこの世界から消滅するだろう。
(二本の寶剣を失った..........つくづく私は付いてないな。)
鎧を解除し、ポケットから一本のタバコを取り出す。貧民街故の汚い道の脇、雨が募りタバコに火がつきづらい。
(余りにも強すぎる......あの銀狼、奴は全力ではなかった。)
対峙した敵の強大さに目眩がする。そして仲間達の主戦力であったガルーダが落ち、プシューケーを失った。
(これでは勝ち目がない。どうする......このまま時間が過ぎるまでを隠すか。)
いや、北歐神が其れを許さないだろう。今の狀態の自分では意見をすれば殺されるのこちらだ。逃げ道はない。
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(いや、五人という人數制限が設けられている以上、奴らには仲間が必要の筈だ。)
攜帯を取り出し、部下による回収を要求する。
「私がこの世に顕現して半年と僅か、幾重にも広げた組織による報網は伊達ではない。」
事実、あの三人以外の外見と出自は調査済みだ。ガルーダを葬った者は確実にエルフの片割れ『エレンミア』に勝るやも知れぬ強者、超越者と呼んだ方が良いか。
「しかし、不思議だ。何故この世界の人間が異能の力を使える。この世界に神などは存在せぬ筈。あの男に何かを仕込んだと言うのか。」
『勇者ユーノ』との戦闘にてこの世界の人間が異能の力を振るったのだ。
(これは何かの予兆か。それとも..........)
つくづく異端だとじていると応援に頼んだヘリが上空に現れる。
「私は暫し奴らを観察するとするよ。」
ヘリへと乗り込みほくそ笑む。しかし、ヘリが突如として大発を起こした。
「_______ぐっ、やってくれたな!」
ヘリの発の中から鎧にを包んだ蚩尤が風を搔き消し貧民街の屋へと著地する。
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「は〜い、こんばんわぁ♩」
甲高い聲が耳をつく。蚩尤は冷や汗を流し聲のする方向へとを向けると『未知數』の奴らがそこにいた。
(..............最悪だ)
自分は撤退が出來た訳ではなかったのだ。雨にあたりながらも空を見上げる。紅き月が三人の悪魔を照らし出す。
「何用かね、私に戦いの意思はない。」
苦笑いを浮かべるしかない。最早勝ち目はない。慘殺される。
「つれないではありませんかぁ♩もうし楽しみましょう♩」
「ディアーナ..........フライングはするなとあれほど注意したではありませんか。」
「お主のせいで作戦は失敗だ。仲間の元へと戻った際に襲撃をする手筈の筈だっただろう。」
玩を見るような視線に唾をゴクリと呑み込む。
(確実に殺される.......私は......)
蚩尤は殘りの五兵を大地へと差し込み、考える。
「_________私を君達の仲間にれてはくれまいかね?」
ダメ元で聞くしかない。念な計畫の後に仲間に加えて貰う筈だったが、そんな余裕など最早ない。
(一か八かに賭けるしかない。今の私の全力の一撃を放ったとてあの者達の命を刈り取るのに力が足りなさ過ぎる。)
それが駄目なら無様に殺されるか、自害の二択しか選択肢がないだろう。
「どうしますか?」
「殺しましょうよぉ♩」
「ブランチェはどう思いますか?この創作と戦ったのは貴方だ。使えるか使えないかはブランチェが決めてください。」
「申し分はないだろうが、奴には野心と言ったが渦巻いている。裏切る可能もあるぞ?」
やはり戦った者には己の本質が見抜かれる。
「私達の中にも一人いるではありませんか。」
「あら、酷い言われようですねぇ♩それに裏切りそうと言う點では私だけでなく、貴方も含まれるのではないでしょうか、ルキフェルさん♩」
「私は決して裏切りませんよ、ジョン”は”」
『ジョン』と言う名だけを主張する天使はあの異能を使う人間のみを主軸にいているのだろう。
(何とも複雑な関係な事だ。)
「それで私を殺すのか、殺さないのか...........どちらなのかな?」
ルキフェルとディアーナ、ブランチェが互いに一度視線を合わせ、答えを告げる。
「殺害しましょう。」
「「仲間にしよう。」」
しかし答えはディアーナ以外、賛だった。
「すでに刻々と期限は迫っている。ある程度実力がある者を仲間にした方が良かろう。」
「カミーユより多強いくらいですかぁ?」
「ああ、それくらいだろう。しかし、モンゴルで戦ったであろう真の『英雄』とでは天と地の差だ。」
銀狼はゲシル・ボグドーを指して言っているのだろう。あれは別格の存在。私では到底葉わない高みにいる英雄だ。天と地と言われても致し方はないだろう。しかし、カミーユと言う名がどうも引っかかる。
「どれ、次の戦いで役に立たないと立証されたなら切り捨てれば良いのではないか?」
蚩尤は何とも言えない笑いを顔面に浮かべる。
(試練を下すと言うのか?くく、笑い者だな。黃帝に殺され神へと昇華された私につくづくと世界は無理難題を與える。)
己の願いは”古代中國の帝であった黃帝から王座を奪う”ことだ。この一つの願いを葉える為にこの世に顕現してからいてきた。神へと昇華されたとてその願いは変わらない。何故ならば、私が示さんとする王道がそこにあるからである。
「試す、か。結構。我が願いをさせるには君達の力が必需品である事に変わらない。存分に評価するがいいさ。君達の目で、ね。」
五兵を消し、私服であるスーツ姿へと戻る蚩尤。二十代後半から三十代前半くらいの若さ。そして威厳のある顔立ち。程よくびた蒼の髪。蚩尤という男を一言で表すなら、男である。
「容姿が良いのは創作共通なのですね。」
ディアーナが冗談まじりに言う。
「私は君達の仲間となろう。君達の期待に応えられないのならば私を切り捨ててくれても構わない............だから、そろそろとその殺気を消してはくれないか。」
殺気が収まり、蚩尤はルキフェルを見據え問いかける。
「一つだけ、質問が良いだろうか...........君達程の力を持ち合わせた超越者が何故、 人間に拘る。」
余りに理解が出來ない。どうして人間一人に肩れしているか。王冠戦爭に參加している以上、邪魔にしかなり得な
い。
「かつての私ならば人間になど興味を示さないでしょう。しかし、時を得て私の考えは変わった。一人間、されど私にとっての全てだ。私は彼をおしいとじてしまった。それは今も昔も、そして未來も覆らない。私とジョンは二人で一人。決して離れはしない。離しはしない。この恒久的な生活を続ける為にも私は王冠戦爭など言う無駄な殺し合いを鎮め日常へと戻る義務がある。その邪魔をすると言うのであれば貴様をあの聖鳥が如く即座に殺し、首を刎ねてくれる。」
蚩尤は強き覇気を天使からじ、一歩後ろへと足を下げる。
(そこまでのカリスマがあの人間にはあるのか。)
いや、清廉な者に真なるが芽生えたと言うだけだ。を知らぬ神々や異端の者に多く現れる。見せかけや信仰の為の慈悲なるではない。故にの制が出來ないのだ。
「邪魔はしないさ。ただ、私にも願いがあると言う事は覚えておいてしいだけだ。」
そう、邪魔はしない。今は.......まだ。
「あららぁ♩いゃあな事をお考えですかぁ?」
ディアーナは蚩尤を橫から覗き込み小馬鹿にする様に笑う。
(このは苦手だ。全てを見かす様な眼差し。そして、頭が回る。)
もちろん、ルキフェルに対しても同じ気持ちをじるがこちらの方が異質にじるのだ。
「いや、どうやって君達の信頼を得られるかと頭の中で思考していたのさ。」
「ふふ、口が隨分とお上手な様でぇ♩」
蚩尤はこほんと咳を吐き、銀狼、ブランチェの元へと歩み寄る。
「君の願いはなんだい。」
仲間を二人はやられ平然とはしているが、心穏やかではない。殺されかけた相手と対面しているのだ。普通ならば刃を向け怒りの聲を上げるのだろうが、そこまで愚かではないと自覚しいる。
「其方ならば分かるだろう。吾輩らの結束力は他の創造とは質が違う。その中心としているのがジョン、貴様が先程から見下した心で見ている人間の存在だ。」
「見下してはいない、と言って置こう。そして君のみも永き時をあの人間と生きる事と言う事は理解した。ただ、何故、そんなに大切な”もの”を戦場に持ち込んだ?」
ブランチェは牙を見せ月を見上げる。
「大切な”隣人”故に持ち込んだ。だが、吾輩達は愚かだった。」
「なるほど。確か、連れ去られたんだったな。」
『ジョン』と言う人間を中心に『未知數』という存在が構されている事を理解する。
(果たしてこの人間が死に扮した時、この者達がどの様なきを見せるのか..........見ものだな。)
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