《闇墮ち聖語~病んだ聖はどんな手を使ってでも黒騎士を己のモノにすると決めました~》第百八十四話『からかい上手』

中國、湖南省の街外れにある宮殿。玉座には星の寶玉が一人エレンミアが腰を下ろしていた。

「バロール、なんで、あの、玉座に座ってる?」

ウォフ・マナフは嫌悪とした表で玉座に座るエレンミアを睨みつける。バロールは苦笑をしてウォフの頭へと手を置いた。

「僕には使わない椅子だ。座りたいなら座らせればいいさ。」

子を諭す様に頭をでる。ウォフは耳を紅くし、バロールの意見に首を縦に振った。

「ゾロアスター教の善神も惚れた雄には弱いと言うわけか、くく。」

エレンミアはウォフとバロールとの掛け合いを一部始終見ていた為にそうからかう。

「そ、そん、なんじゃあ、ない!」

頰を赤く染め否定をするウォフ。

「それでは、ウォフさんはバロールさんの事がお嫌いで?」

乙姫が橫から口を挾む。純粋な気持ちから生じた疑問の為、乙姫に悪気はない。其れを察してかウォフはしっかりと返答した。

「す..........嫌い、じゃない」

髪で目を隠し表を見られない様に頭を下げるウォフ。

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「星の寶玉、そして神龍の娘よ、あまりウォフをからかってくれるな。」

優しい表を見せ二人へと注意をするバロール。エレンミアはくすりと笑い言葉を返す。

「何、善神ともあろう者が生娘の様な反応をしたでな、ついからかいたくなったわ。」

ぐぐぐと拳を握り締め恨めしそうにエレンミアを敵視するウォフ・マナフ。

「あいつ、嫌い」

善を良しとする神が他者を嫌いとなるなど本來は有り得るはずもない事実だが、この世へと顕現した影響からかなからず心に変化と言うものが生まれる。

「妾は其方の事を好ましく思っておるぞ。」

「お、お姉さま!?」

エレンミアの隣に控えるエルミアは嫉妬とした表でウォフを見た。

「お姉様は私のものですわ。」

ぷんぷんと頰を膨らませるエルミア。

「馬鹿馬鹿しい、バロール、行こう。」

ウォフは呆れた表を取り、バロールを引っ張る様に間を出て行く。その際、バロールはちらりとエレンミアへと視線を一瞬向け間を後にするのだった。

「ふふ、隨分と印象が変わりましたね。」

乙姫は優しい表を見せる。

「そうですわね。もっとギラギラとしたお方々だと認識しておりましたわ。」

エルミアも砕けた表で笑う。しかしエレンミアのは違った。

(魔眼保持者め..........妾を一度、その“眼”で視たか。)

即死の魔眼を用いるバロールは間を去る一瞬、開眼してエレンミアを見たのである。もちろん一度殺されたとてエレンミアは簡単に死ぬ様な存在ではない。

「妾で試したか、面白い。」

「ですから言っているでしょう!仮に異世界に転生するならば私の世界に來た方が良いと!」

「何を言っていますか、私の世界は魔王勇者ものですよぉ?ファンタジーに転生できた方がいいですよねぇ?」

中華人民共和國・湖南省長沙市長沙県黃花鎮に位置する長沙黃花國際空港へと無事著陸し、空港を歩いているのだが、ルキフェルとディアーナがある議題で騒がしく意見を言い合いしていた。

「お主らは分かっておらぬな。ジョンが仮に転生や転移をしたとして幸せに暮らせるのだとしたら我輩のいた世界だ。」

ブランチェまでもが話に參加する始末。

「そうだな、君達の話に乗るのだとしたら、人間の彼は私のいた世界には來ない方がいい。」

「何故ですか?」

「戦爭の時代に現代の人間を放ってもみてくれ。直ぐに死ぬ。そもそも言語も理解出來ず、直ぐに孤立もするだろう。だからこそ、我らのような存在とこの世界の人間はあまり関わるべきではないんだ。」

”そうそう孤獨はやだよね〜♩”

蚩尤の肩に掛かる手。しかし冷んやりとした。まるで生気が無いような死人。されど綺麗な顔をした人

「.........君は」

周りへと視線を移すと蚩尤を除く三人が武を掲げその者の急所へと軽く當てていた。周囲にいた空港利用者らは何事かと此方へと視線をやる。中には攜帯などを使って撮影を始める者までいた。

「離れなさい、下郎。」

ルキフェルは肩へと手を置く人へと槍を突き付け脅す。

「ここでミンチにはなりたくは無いでしょう♪」

ディアーナも同様に黒鎌を突き付けていた。

「退け、不死人よ。」

心臓部へと古の剣を當てるブランチェ。

「不死人は嫌だなぁ..............ヴァン・ヘルシングと呼んでくれる嬉しかな♪」

「ヴァン・ヘルシング、だと?」

鬼が出した名は吸鬼ハンターの代名詞的存在として広く認識されている名なのだ。

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